みなさま、こんばんは!
機械式時計について技術者視点で語る本コラム。第20回となる今回は、
『文字盤の仕上げ、装飾について』
こちらをテーマにお話ししていきます。
様々な種類が存在する高級腕時計の文字盤。近年は天然素材を使用した、唯一無二の個性を持つ文字盤に人気が集まっていますが、"ノーマル文字盤"と呼ばれる通常仕様の文字盤にも複数の仕上げ方法が存在し、それぞれ人気を博しています。
ということで今回は、"文字盤の仕上げ、装飾の違い"にフォーカスを当て、解説していきたいと思います。ぜひ最後までご覧ください!
サンレイ仕上げ
サンレイ(Sunray)仕上げとは、"太陽光"を名前の由来に持ち、文字盤の中心から放射線状に筋目が伸びた装飾を指します。
ダイアルに施された細かな彫り加工が、見る角度によって光の反射で変化し、中心軸(太陽)から外周(宇宙)へ向けて、あたかも太陽光が放たれているかのような、美しい放射線を描きます。
美しいサンレイ仕上げは、ドレスウォッチからスポーツウォッチまで、幅広いモデル、文字盤色に渡って採用されています。
ラッカー仕上げ
ラッカー仕上げとは、文字盤の地金に無色・有色の塗料を薄く、均一に吹き付けては乾燥を何度も繰り返して仕上げられた装飾のことを指します。
塗料の溶剤を揮発させることで硬さを得て、耐久性が高められます。また、磨き上げることでエナメルに似た光沢感を出すことができるのも特徴です。吹き付ける回数は時計によって異なりますが、一般的には素地、塗装、耐久性の向上などの用途に応じて、無色・有色を使い分けながら5〜6回で仕上げられています。
カラフルで複雑な色みを楽しめることから、ラッカーダイヤルが使用されているモデルは、どれも高い人気を誇っています。
その代表とも言えるのが、【ロレックス】『オイスターパーペチュアル』のターコイズ文字盤を筆頭としたカラーダイヤルシリーズです。発色が良く、バリエーションも豊富なため、選ぶのに迷ってしまう方も多くいらっしゃることかと思います。
他にも、カラーダイヤルの"元祖"とも言える ”ステラダイヤル” もラッカー仕上げとなっています。
マット仕上げ
"マット仕上げ"(もしくはサンドブラスト仕上げ)とは、光が反射しないように表面に凹凸を持たせた、ザラザラとした質感の文字盤を指します。
これらの文字盤は、光の反射を抑えることにより視認性を高める効果があるため、パイロットウォッチやスポーツウォッチなど、瞬間的な視認性が非常に重要となるモデルに採用されることが多くあります。
艶消しの落ち着いた質感がモノトーンのコーディネートによく合いますので、街中で使用しても都会的でシックな印象を与えることに違いありません。
ギョーシェ彫り
ギョーシェ彫りとは、時計の文字盤や他の装飾に使用される技法の一つで、18世紀にアブラハム=ルイ・ブレゲによって発明されました。この技法は、特殊なエンジン・ターニング機械を使用して、文字盤の表面に均等なライン、波模様、放射状の模様など、幾何学的で精密なパターンを作り出します。
このギョーシェ彫りには、マット仕上げと同じく光の反射を抑え視認性を高めるという技術的に優れた点があり、見た目の美しさだけでなく実用的な点が多くの文字盤に採用されている理由になっています。
一口にギョーシェ彫りといっても様々な種類が存在しますので、こちらは次回詳しく紹介させていただきたいと思います。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
時計の印象を決定づけるのに、大きな影響を与える文字盤の仕上げ。
すべてに美しく繊細な仕上げが施されており、それぞれに魅力があります。その中から一人一人の好みに合った文字盤を選ぶことも、醍醐味の一つではないでしょうか。
本記事が皆さまにとって有益な情報となり、高級腕時計に対する興味が少しでも沸いたようであれば幸いでございます!また、ご不明点は直接ご質問いただければしっかりとお答えさせていただきますので、みなさま是非ご来店、お問い合わせをお待ちしております。
次回もお楽しみに!ではまた!