みなさま、こんばんは!

 

機械式時計について技術者視点で語る本コラム。第14回となる今回は、

 

『ロレックスの保証書について』

 

こちらをテーマにお話ししていきます。

 

 

【ロレックス】の保証書は発行された時期によって仕様が異なることを皆さまご存知でしょうか。

大別すると"紙タイプ"、"カードタイプ"の二つに分類されており、紙タイプは年代や国毎に多数のデザインが確認され、カードタイプは年代によって三種類のデザインが存在します。それぞれ項目の読み方や記載されている内容が異なるため、今回はそれぞれの保証書の特徴について、また保証書の種類や状態が相場に与える影響等について解説していきたいと思います。

 

 

ロレックス保証書の種類

①紙タイプ(~2006年頃)

 

最初にご紹介するのは、古い年代(2006年頃まで)の【ロレックス】に使用されていた紙タイプのギャランティー。

右上にシリアルナンバーと型番の記載があり、中央上部に国番号、紙の中央付近には購入者・購入日・購入店が書き込まれています。紙タイプの保証書は、年代、販売国によっても違いがございますので見比べてみるのも楽しいです。

 

 

こちらは紙タイプとしては最終となる2000年代に流通していたギャランティーになります。

右上に記載されている「888」という3桁の数字は保証書発行国を示しています。ちなみに「888」は香港に出荷されたことを示しており、これは中華圏で縁起が良いとされている数字の「8」にあやかって、香港【ロレックス】がリクエストしたと言われています。

ちなみに日本の出荷国コードは「410」です。

 

 

紙に記載されている文章はフランス語と英語の2種類が存在しています。基本的にはフランス語が使用されていますが、アメリカで販売されたものに関しては英語が使われており、販売時に取り付けられていた文字盤の種類が記載されているなどといった違いが見られます。 

 

 

日本で発行されていたものは独自の日本語バージョンでしたね。

 

②第一世代カードタイプ(2007~2013年頃)

 

次は、紙からカードに切り替わった際の最初のデザイン、通称"旧々ギャラ"をご紹介。

二世代前となるこちらの保証書は、コーポレートカラーであるグリーンとゴールドを交えた高級感のあるデザインです。現行の保証書とは異なり、表面に様々な情報が記載されていますね。

どれも購入した時計に関する基礎的な情報が記されており、上から順に以下の内容が記載されています。

①国番号
②型番・リファレンス番号
③シリアル番号
④モデル名

 

 

裏面には、購入店・購入者・購入日が書かれる仕様となっています。

 

③第二世代カードタイプ(2014~2020年6月頃)

 

こちらは【ロレックス】の1世代前の保証書、通称"旧ギャラ"です。

ホワイトを基調とした上品なデザインに仕上げられていますね。表面中央には個体を表すシリアルナンバーが記載されており、その下には型番が記載されています。

 

 

裏面には、購入店舗の情報と購入者名、購入した日付が記載されています。

第一世代、第二世代のカードタイプにおいては、アメリカ、イタリアなど一部の国で発行されたカードには文字盤の情報が記載されているなど、細かい違いこそございますが、カードタイプの保証書は国際的に見ても基準が同じであるため、どの国で発行されたカードであっても評価は変わりません。

 

④現行カードタイプ(2020年7月頃~)

 

こちらは2020年から採用されている第三世代のカードタイプの通称「新ギャラ」。

"ROLEX"ロゴが金字となったことで、洗練された印象を与えるこちらは、従来の保証書よりもシンプルなデザインに仕上げられており、深みのある緑色が印象的です。また、裏面には「型番」「シリアル番号」「購入日」が記載されますが、印字する部分が「購入日」だけになっているのも特徴的ですね。

先ほどご覧いただいた旧タイプの保証書には「購入者の名前」「国番号」「販売店名(住所)」の記載がございますが、新型の保証書にはそれがありません。これは、時代が変わり、個人情報保護に配慮するよう変更されたのかもしれません。

見ていただいて分かる通り、二次流通市場に出回っている個体に関してはどこの国で販売されたものなのか特定することが難しくなっており、購入日がプリントされているか、手書きで記入されているか等で見当をつけることになります。

 

 

保証書が中古相場に与える影響 

①保証書の有無

 

"純正の箱"や"保証書"といった付属品は本体の価値を高めるものであり、査定に影響を与えます。特に替えの利かない保証書の有無は買取額に大きな影響を与えます。もちろんモデルによって金額の変動には差がありますが、最低でも10万円ほどの差がつく印象です。

再発行されない【ロレックス】の保証書は信頼性が高く、保証期間が過ぎていても"本物である"という証明になるため、それだけで価値があります。『デイトナ』「Ref.16520」であれば、保証書の有無で50万円以上の金額差が付くことも珍しくありません。

これを踏まえると、いかに保証書の資産価値が大きいかお分かりいただけるのではないでしょうか。

 

②保証書の状態、種類

 

中古で【ロレックス】を購入した場合、名前が消されている場合がありますが、これは個人情報保護の観点から、前所有者もしくは販売店が名前を読めないようにするためのモノになります。名前の部分が塗りつぶされていたとしても、保証書としての効力は変わりませんが、海外のバイヤーや一部の業者はこの塗りつぶされた保証書を嫌う傾向にあります。

また、他国から仕入れた【ロレックス】には、記入欄が"空白の状態"のモノが多く、日本の保証書のように名前を消した跡がある保証書は稀です。空白の保証書と名前を消した保証書では売れ行きが異なるため、名前が消された保証書は買取価格や販売価格が抑えられることが多くなっています。

他にも、2010年~2020年9月頃まで販売されていた『サブマリーナー』「Ref.116610LV」を見てみると、カードタイプの保証書が三世代にまたがって存在しています。こちらに関しては、新ギャラ>旧ギャラ>旧々ギャラの順に評価が高くなっていますので、豆知識として頭の片隅に入れておきましょう。

これらのように、保証書への手書きの有無やカードのデザインによっても中古相場で大きな金額差が付くこともあるので要注意です。

 

 

まとめ

いかがでしたでしょうか。 

【ロレックス】の保証書は、そのどれもが偽造防止策が施された特殊なモノとなっており、たとえ保証期間が過ぎていたとしても、時計を売却する際の信頼度が異なるため査定額が大きく変わります。

ちなみに、如何なる理由があっても保証書は再発行されませんので、くれぐれも絶対に保証書を無くさないようにしてください。

本記事が皆さまにとって有益な情報となり、高級腕時計に対する興味が少しでも沸いたようであれば幸いでございます!また、ご不明点は直接ご質問いただければしっかりとお答えさせていただきますので、みなさま是非ご来店、お問い合わせをお待ちしております。

次回もお楽しみに!ではまた!

機械式時計徹底解剖