みなさま、こんばんは!
機械式時計について技術者視点で語る本コラム。第29回となる今回は、
『A.ランゲ&ゾーネ「ランゲ1」を改めて深掘り!』
こちらをテーマにお話ししていきます。
1990年に復興したA.ランゲ&ゾーネの初作として披露され、今もブランドを象徴する『ランゲ1』。私、Dr.伊藤の愛機でもあり、機能・デザインで個性際立つこちらのモデルの変遷を、今回、改めて追っていきたいと思います。
歴史と背景
1845年にフェルディナンド・アドルフ・ランゲによってドイツ、グラスヒュッテで創業された【A.ランゲ&ゾーネ】。
一流のブランドということもあり、順風満帆かと思いきや、第二次世界大戦後の国有化によって一時消滅してしまいます。しかしながら、その後の1990年、東西ドイツ統一を機に、創業者一族のウォルター・ランゲがブランドを再興し、1994年に『ランゲ1』を含む4つのモデルを発表しました。
そして今回ご紹介の『ランゲ1』は、新生【A.ランゲ&ゾーネ】の復興の象徴と位置付けられ、現在まで高い人気を保ち続けています。
デザイン
『ランゲ1』最大の特徴は、やはり他の腕時計と全く異なるアシンメトリーな文字盤デザイン。時分表示、スモールセコンド、アウトサイズデイト、パワーリザーブ表示が重ならずに配置されており、視認性と美しさを兼ね備えています。
このレイアウトは黄金比に基づいて設計されており、見飽きることのない視覚的な調和を生み出しています。
中でもアウトサイズデイトは、ドレスデンの歌劇場にある「5分時計」から着想を得たもので、ブランドの歴史とドイツの文化が融合したデザイン要素となっています。
ムーブメントと技術
初代『ランゲ1』には、手巻きムーブメント「Cal.L901.0」が搭載されていましたが、その後の2015年には、新たに「Cal.L121.1」が導入され、精度や操作性が向上しています。(具体的には、フリースプラング式のテンプの採用、アウトサイズデイトのクイックチェンジ化が主な進化となっています。)
こちらが初代「L901」系ムーブメント。3/4プレートが3分割されており、テンプがリューズの反対側にあるのが特徴です。個人的には、この「L901」系ムーブメントの見た目が大好きです。
こちらは、2代目「L191」系ムーブメント。すっきりとした印象の一体型3/4プレートと、リューズ側にあるテンプが判別ポイントです。こちらも美しい仕上げですね。
モデルバリエーション
『ランゲ1』は、基本モデルの他にも多彩なバリエーションが展開されています。
ケース径を拡大した『グランド・ランゲ1』や小ぶりな『リトル・ランゲ1』、ムーンフェイズを追加したモデル、トゥールビヨンや永久カレンダーを搭載した複雑機構モデルもあります。2024年には30周年を祝う新作が登場しました。
今回は数ある『ランゲ1』の中から、厳選した3本をご紹介させていただきます。
『ランゲ1 ムーンフェイズ』「Ref.192.029」
黄金比を用いた完璧な文字盤デザインで、1994年の発表以来その姿をほとんど変えることなく製造されている、【A.ランゲ&ゾーネ】を代表するモデル『ランゲ1』にムーンフェイズを搭載した「Ref.192.029」。
『ランゲ1』のデザインバランスを一切崩すことなく、ムーンフェイズと天空ディスクが追加されており、天空ディスクは"デイ&ナイト"機構の役割を果たしています。
『ランゲ1 デイマティック Ref.320.032』
2010年に発表された『ランゲ1』初の自動巻きを搭載したシリーズで、『ランゲ1』の文字盤を鏡に映した(左右反転)かのようなデザインが特徴。
『ランゲ1』のデザインそのままでありながら、自動巻き時計には必要性が低いパワーリザーブ表示を、曜日表示に変更しているあたりが何とも面白いですよね。
手巻きの『ランゲ1』とは一味違った雰囲気のムーブメントも素敵ですよね。ランゲらしさは失われていないのが流石です。
『ランゲ1 プラチナ Ref.191.062』
『ランゲ1』誕生30周年を記念して、300本限定で発表されたブラックオニキスダイヤルを備えたプラチナ製モデル。
2024年に発表されたこちらのモデル、残念ながら未だコミット銀座ではお取り扱いをしたことがないのですが、ブラックオニキスダイヤルと通常のブラックダイヤルの違いを早く確認してみたいですね。
おそらく実物は吸い込まれるような美しさがあるのでしょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
『ランゲ1』は、ドイツの精密工学と美的感覚が融合した傑作であり、【A.ランゲ&ゾーネ】の哲学と技術力を象徴するモデルです。今後も新たなバリエーションや技術革新が期待される魅力的なこのタイムピース、皆様にもぜひ手にしていただきたいと思います。
本記事が皆さまにとって有益な情報となり、高級腕時計に対する興味が少しでも湧いたようであれば幸いでございます!また、ご不明点は直接ご質問いただければしっかりとお答えさせていただきますので、みなさま是非ご来店、お問い合わせをお待ちしております。
次回もお楽しみに!ではまた!