機械式時計を選ぶ際、皆さんはどこに注目されるでしょうか。
多くの方は"デザイン性"や"機能性"、"資産性"とお答えになると思います。もちろん見た目やリセールというのは非常に重要なポイントになりますが、ここにブランドやモデルの歴史的背景、年代毎のマイナーチェンジなど、知識や理解が増えることで、さらに時計が好きになり、選ぶ楽しみを味わえるのではないでしょうか。 本コラムでは、初心者、上級者を問わず、機械式時計に関する知識を一つでも多くお伝えし、皆さまの時計選びの参考となるよう徹底して解剖、解説してまいります。
今回は【ロレックス】『サブマリーナー』「Ref.1680」にフォーカスを当ててお話ししていきますので、ぜひ最後までご覧ください。
第一世代サブマリーナーデイトRef.1680
【ロレックス】の『サブマリーナー』は1953年に誕生し、ダイバーズウォッチのアイコン的存在として今なお絶大な人気を誇ります。その中でも「Ref.1680」は、『サブマリーナー』初のデイト付きモデルとして登場し、ヴィンテージロレックス市場で高い評価を受けているモデルのひとつです。
「Ref.1680」は1969年から1980年頃まで製造され、初期の「赤サブ」や後期の「白サブ」など、多くのマイナーチェンジが行われており、細かいバリエーションが存在する点も大きな魅力のひとつです。
基本スペック
製造年 : 1969年〜1980年頃
ケースサイズ : 40mm
ベゼル : 回転式(アルミ製インサート)
風防 : プラスチック(プレキシガラス)
防水性能 : 200M防水
ムーブメント : Cal.1570
①ダイヤル
「Ref.1680」のダイヤルは、大きく分けて”赤サブ”と”白サブ”の2種類が存在します。
◯ 赤サブ: 1969年〜1975年
赤サブは「SUBMARINER」表記が赤く印字された個体を指し、初期の「Ref.1680」にのみ採用されました。市場に出回る数が限られているため、現在では非常に希少なモデルとしてコレクターから人気を集めています。
赤サブはダイヤルのフォントや細部の違いにより、6つのタイプ(Mk1〜Mk6)に分類されます。Mk1からMk3までがメーターファースト、Mk4からMk6がフィートファーストとなっています。
・Mk1(1969年)
赤サブの中で最も希少性が高く、全6型のうち、王冠マークとロレックスロゴが最も小さく、ヴィンテージらしいクラシカルなデザインとなっています。
Mk1の最も簡単な見分け方は、防水表記の“ft”を見ると、“f”の書体が特徴的で上部が丸みを帯びていて“t”に少しかかっているため、“ロングf”と呼ばれています。
https://commit-watch.co.jp/blogs/kaneko/428
・Mk2(1969-70年頃)
ロレックスロゴはMk1と同様ですが、ややサイズが大きくなっています。サブマリーナーロゴも太く、防水表記の“f”の形も角ばった字体になっています。また、数字の“6”は“オープン6”になっていて、文字盤がブラウン(トロピカル)に変色しやすい点も特徴です。
https://commit-watch.co.jp/blogs/kaneko/1789
・Mk3(1969-70年頃)
Mk1の王冠マークとロレックスロゴを一回り大きくしたようなデザインで、オイスター表記は力強いやや太字の書体になっています。防水表記はMk2に酷似しているものの、“f”の上部がやや短く、レター全体が太くなっている印象です。
https://commit-watch.co.jp/blogs/kaneko/1689
・Mk4(1970-74年頃)
王冠マークはMk1-3に似ている印象で、ロレックスロゴがしっかりとヴィンテージらしい書体となっています。Mk4から防水表記がフィートファーストになります。防水表記の“ft”の“f”と“t”の横棒が一直線上にないのが特徴で、Mk5とMk6は一直線上なので、フィートファーストで横棒が一直線上にないことで、Mk4と見分けることができます。
https://commit-watch.co.jp/blogs/kaneko/1678
・Mk5(1972-74年頃)
クラウンマークはややシャープなデザインになっていて、ロレックスロゴも洗練されたフォントになっています。防水表記の“ft”の“f”と“t”は横棒が一直線上になっていて、数字の“6”が“オープン6”ならMk5になります。
https://www.commit-watch.co.jp/buyer/watches/mens/vintage_rolex/submariner-425900/
・Mk6(1974-75年頃)
ロレックスロゴに関しては、Mk5と同様の書体になっていますが、王冠マークは現代的なデザインに近くなっています。Mk6は防水表記の“6”が“クローズ6”になっているので、フィートファーストで“クローズ6”の時点でMk6と判断ができます。
https://www.udedokeitoushi.com/news/32916/
赤サブの魅力
赤サブはわずか6年ほどの生産期間の中で、6種類ものダイヤルが見つかっています。そのため、個体によって表情が異なり、コレクターの心を惹きつけるポイントとなっています。
◯ 白サブ: 1975年〜1979年
1975年以降、赤サブの生産が終了し、「SUBMARINER」表記が白に統一されたダイヤルが登場しました。このモデルが通称「白サブ」です。赤サブに比べると市場での流通量が多く、入手しやすいのが特徴ですが、こちらも年々価格が高騰しています。
白サブのダイヤルも複数のバリエーション(Mk1〜Mk3)が存在し、それぞれ細かい違いが見られます。また、年代によってどのダイヤルが装着されているのか特定はされていません。
・Mk1(レムリッチ社製)
赤サブのMk6同様、現行モデルに近い現代的なデザインの王冠マークになっていて、ロレックスロゴの“L”と王冠マークのセンターが揃っているのが見分けるポイントです。6時側のレターも赤サブ(Mk6)と酷似しているものの、サブマリーナーロゴが大きくなっていて、防水表記の横幅と同じ幅で印字されています。
https://www.udedokeitoushi.com/news/25704/
・Mk2(バイエラー社製)
王冠マークはややクラシカルなデザインになっていて、ロレックスロゴのシャープなデザインがMk2の特徴です。ロレックスロゴの“L”の縦棒は王冠マークのやや左に寄っています。赤サブのMk5と同じバイエラー社の文字盤で、防水表記の“6”がオリジナル白サブダイヤルの中で唯一“オープン6”になっています。また、Mk1と異なり、サブマリーナーロゴが防水表記よりやや大きくなっているのも特徴です。
https://commit-watch.co.jp/blogs/kaneko/1979
・Mk3(レムリッチ社製)
Mk3はMk1同様にレムリッチ社製になっているため、デザインは非常に酷似しています。12時側の王冠マークやロレックスロゴで判断するポイントは、ロレックスロゴの“L”がセンターよりやや左に寄っているところです。6時側のレターも酷似してるため、見分けるポイントが難しいものの、クロノメーターの“H”のほぼ真下に“C”が印字されていたらMk1、右にずれているならMk3になります。
https://commit-watch.co.jp/products/5hn6vwed
・サービスダイヤル(トリチウム)
トリチウム仕様のサービスダイヤルの特徴は、ロレックスロゴが特徴的で、“L”と“E”の横棒セリフ部分が斜めに向かって伸びているのが特徴です。6時側の特徴は下2行の文字間が狭くなっています。
・サービスダイヤル(ルミノバ)
ルミノバのサービスダイヤルは、ダイヤル6時位置の“SWISS”表示で判断が可能です。これはもちろん、夜光にトリチウムを使用していないため、この表記になっています。
白サブの魅力
赤サブほど派手さはないものの、シンプルで視認性の高いデザインが魅力。また、赤サブより手が届きやすい価格帯のため、ヴィンテージロレックス入門としても人気があります。
②ベゼル
「Ref.1680」のベゼルインサートにはいくつかのタイプが存在し、特に「ロング5」などの希少なインサートが付属する個体は価値が高くなります。
・ロング5インサート: 1969年頃
Mk3にごく稀に装着されているのがこの“ロング5インサート”。数字の“5”が特徴で、縦長フォントになっているため、ロング5と呼ばれています。全体的に太いフォントが特徴です。
https://commit-watch.co.jp/blogs/kaneko/1789
・Mk3インサート:1969-80年頃
赤サブ、白サブのほとんどのモデルにMk3インサートが装着されています。製造期間が長い分、年代(前期・中期・後期)による文字の太さの違い(後期になるにつれて細くなる)が見られます。前期仕様にはキッシング4と呼ばれる個体があり、“4”と“0”が接触しているものを指します。
https://commit-watch.co.jp/blogs/kaneko/771
③ブレスレット
「Ref.1680」に装着されるブレスレットは、年代によって以下のように変化しました。
・リベット(7206/80): 1954年〜1969年頃
・巻きブレス(9315/280(380)): 1969年〜1975年頃
・ハードブレス(93150/580): 1976年〜1980年頃
ブレスレットのオリジナル性が保たれているかどうかも、ヴィンテージ市場では重要なポイントとなります。
まとめ
【ロレックス】『サブマリーナー』「Ref.1680」は、サブマリーナー史において初めてのデイト付きモデルであり、特に”赤サブ”と”白サブ”の違いがコレクターの間で注目されています。年々市場での個体数が減少し、価格も上昇傾向にあるため、状態の良い個体は早めに手に入れておくことをオススメします。
これからも「Ref.1680」のさらなる研究を続け、情報をアップデートしていきますので、ぜひ次回の記事もお楽しみに!
ではまた!