機械式時計を選ぶ際、皆さんはどこに注目されるでしょうか。
多くの方は"デザイン性"や"機能性"、"資産性"とお答えになると思います。もちろん見た目やリセールというのは非常に重要なポイントになりますが、ここにブランドやモデルの歴史的背景、年代毎のマイナーチェンジなど、知識や理解が増えることで、さらに時計が好きになり、選ぶ楽しみを味わえるのではないでしょうか。 本コラムでは、初心者、上級者を問わず、機械式時計に関する知識を一つでも多くお伝えし、皆さまの時計選びの参考となるよう徹底解剖、徹底解説してまいります。
今回は【ロレックス】『サブマリーナー』「Ref.16610」にフォーカスを当ててお話ししていきますので、ぜひ最後までご覧ください。
第三世代サブマリーナーデイト Ref.16610
ロレックスのダイバーズウォッチとして圧倒的な人気を誇るサブマリーナーデイト。
その中でも第4世代にあたるRef.16610は、長い製造期間を誇り、現代のサブマリーナーの基礎を築いたモデルと言えます。
「Ref.16610」は、1989年(R番)から2010年頃(ランダム番)まで生産された第三世代のサブマリーナーデイトです。前モデルの「Ref.168000」から引き継ぐ形で登場し、サブマリーナーとして初めて「Cal.3135」を搭載しています。
現代的な機能を備えつつ、5桁リファレンスならではのヴィンテージ感が残るモデルとして、現在も高い人気を誇っています。
https://commit-watch.co.jp/blogs/kaneko/509?srsltid=AfmBOopiE9-4S6hFmmZYP0l5SCZGEW32laRXk1n9QnMykN5oCixTJAWu
基本スペック
・製造年: 1989年(R番)〜2010年頃(ランダム番)
・ケース: 40mm(904Lステンレススチール)
・ベゼル: 逆回転防止式(アルミ製インサート)
・風防: サファイアクリスタル
・防水: 300m防水
・ブレスレット: ハードブレス:93150/501B(1988-2012年)・93250(1999-2012年)
・ムーブメント: Cal.3135
・振動数: 28,800振動
①ダイヤル
「Ref.16610」のダイヤルは、製造時期によって表記や夜光塗料の違いがあり、大きく3種類に分類されます。
① SWISS-T<25 表記(1989年〜1997年頃)
1989年から1997年頃までの個体には“SWISS-T<25”の表記がダイヤル6時位置にあります。これはトリチウム夜光が使用されていることを示しています。時間の経過とともにインデックスの夜光が焼ける「パティーナ」として、経年変化が楽しめる個体が見られます。
https://commit-watch.co.jp/en/blogs/kaneko/1844
◯トリチウム夜光の特徴
トリチウムは自発光性を持つ夜光塗料で、塗布された直後は強く発光しますが、約12年の半減期を持ち、現在ではほとんどの個体が発光しなくなっています。トリチウムダイヤルの個体は、夜光部分の色味が経年変化によって起こり、均一に焼けたパティーナを持つものは特に高値で取引されています。
また、1997年頃(T〜U番)には、ダイヤル表記はそのままに、夜光のみルミノバに変更された通称”トリチノバ”が存在することも知られています。
◯先端ドット
1990年代前後の個体で稀に見かける特殊個体が“先端ドット”です。これは秒針に付いている夜光の位置が針の先端に寄っているのが特徴で、12時位置のトライアングル夜光や6・9時位置のバーインデックス夜光を通る際に夜光にドット型の夜光部分が重なります。また、通常の針は先端に行くにつれ細くなりますが、先端ドットの針は先端まで均一の太さとなっています。
https://commit-watch.co.jp/blogs/kaneko/509?srsltid=AfmBOopiE9-4S6hFmmZYP0l5SCZGEW32laRXk1n9QnMykN5oCixTJAWu
② SWISS 表記(1998年〜1999年頃)
1998年(U番)から1999年(A番)の間に製造された個体には“SWISS”の表記が入り、夜光塗料がルミノバに変更されました。この通称”オンリースイス”表記は1年ほどの短期間しか使用されなかったため、生産数が少なく、今後の動向に注目です。
◯ルミノバ夜光の特徴
ルミノバは、日本の「根本特殊化学株式会社」が開発した蓄光タイプの夜光塗料で、光を蓄えて暗所で発光します。トリチウムとは異なり、半永久的に光るため、実用性が高いことが特徴です。
③ SWISS MADE 表記(1999年〜2010年)
1999年以降(A番〜ランダム番)の個体には、現在のロレックスと同様の“SWISS MADE”の表記が採用されました。これはルミノバ夜光を引き続き使用していることを示し、以降のサブマリーナーデイトにも踏襲されています。表記の違いのみで、デザインや夜光の性能は変わりません。
https://commit-watch.co.jp/blogs/kaneko/258?srsltid=AfmBOor9bL8xiFDs_UsNmIyhi28aFE5pMWaCui8klAcHtXYyO6cJHife
〇王冠透かし
2003年頃からサファイアクリスタル風防の6時位置に王冠マークの透かしが採用されるようになりました。特殊なレーザー加工によるもので、偽造防止のためサブマリーナー以外のモデルでも採用されており、サブマリーナーデイトにおいてはケースサイドの横穴がなくなった頃と同時期から採用されました。
〇横穴
ミドルケースにある、ケースとブレスレットを繋ぐ、バネ棒を通すための穴(ミドルケースのラフ部分を貫通)が生産開始から2003年(Y番後半まで)頃まで採用されていました。2003年の後半頃からは横穴がなくなり、現行モデルと同様の仕様へと変更されています。
https://commit-watch.co.jp/blogs/kaneko/258?srsltid=AfmBOor9bL8xiFDs_UsNmIyhi28aFE5pMWaCui8klAcHtXYyO6cJHife
〇ルーレット刻印
2007年頃からケース内側側面にルーレット刻印が採用されるようになりました。これは偽造品の防止や真正性を保証するために入るようになり、“クラウンマーク”や“ROLEX”、6時位置にはシリアルナンバーが刻印されています。2004年から採用が始まっていますが、「Ref.16610」では2007年頃からの採用となっています。
https://commit-watch.co.jp/products/c9ljyupc
②ベゼル
「Ref.16610」では、前モデル「Ref.168000」と同じく逆回転防止ベゼルを採用。ベゼルの素材はアルミ製インサートが使用され、長年使用することで傷や経年変化による褪色(通称「ベゼル焼け」)が見られる個体もあります。特に、ブルーグレーに焼けたベゼルは市場で高く評価される傾向があります。
③ムーブメント
「Ref.16610」に搭載されているのは、ロレックスの名機「Cal.3135」。これは1988年に発表されたロングセラームーブメントです。精度・耐久性・メンテナンス性に優れたムーブメントとなっています。
〇「Cal.3135」の特徴
・28,800振動/時で高い精度を維持
・ツインブリッジのテンプ受けにより耐衝撃性が向上
・テフロン加工の脱進機で耐久性アップ
・ブルーパラクロム製ヒゲゼンマイ(2000年代後半から)を採用し、耐磁性が向上
④ブレスレット
「Ref.16610」に採用されたブレスレットは93150(初期:〜2000年頃)から93250(後期:2000年頃〜)へと変更されました。どちらも堅牢なハードブレスですが、93250ではフラッシュフィットが一体化され、耐久性と装着感が向上しています。また、ブレスレットのバックルには、ダイバーズエクステンションが標準装備されており、ダイビングスーツの上からでも着用できるようになっています。こちらも93150(初期)から93250(後期)で仕様変更が見られます。
まとめ
「Ref.16610」は、クラシックな5桁リファレンスの魅力と、現代の実用性を兼ね備えた名機として、現在も非常に人気の高いモデルです。特に、トリチウム夜光の個体はコレクターズアイテムとして価値が上昇しており、価格も上昇傾向にあります。(2025年2月現在、〜100万円半ば)
実用性を求めるならルミノバ夜光の後期モデル、ヴィンテージ感を楽しみたいならトリチウム夜光の個体がおすすめです。
5桁リファレンスのサブマリーナーは、現在のロレックスにはない魅力が詰まった一本。
気になる個体を見つけたら、コンディションをしっかり確認し、自分に合った「Ref.16610」を選んでみてはいかがでしょうか?