機械式時計を選ぶ際、皆さんはどこに注目されるでしょうか。

多くの方は"デザイン性"や"機能性"、"資産性"とお答えになると思います。もちろん見た目やリセールというのは非常に重要なポイントになりますが、ここにブランドやモデルの歴史的背景、年代毎のマイナーチェンジ

など、知識や理解が増えることで、さらに時計が好きになり、選ぶ楽しみを味わえるのではないでしょうか。 本コラムでは、初心者、上級者を問わず、機械式時計に関する知識を一つでも多くお伝えし、皆さまの時計選びの参考となるよう徹底解剖、徹底解説してまいります。

今回は【ロレックス】『サブマリーナー』「Ref.16610LV」にフォーカスを当ててお話ししていきますので、ぜひ最後までご覧ください。 

第三世代サブマリーナーデイト Ref.16610LV

ロレックスのダイバーズウォッチとして圧倒的な人気を誇るサブマリーナーデイト。その中でも、2003年(Y番)に誕生し2010年頃(ランダム番)まで生産された「Ref.16610LV」は、サブマリーナー生誕50周年を記念して登場した特別なモデルです。通称「グリーンサブ」と呼ばれ、歴代サブマリーナーの中でも異彩を放つ存在となっています。従来の「Ref.16610」をベースにしながらも、グリーンのベゼルとマキシダイヤルという特別なデザインが採用され、コレクターズアイテムとしても非常に高い人気を誇ります。現代的な機能を備えつつ、5桁リファレンスならではのレトロな雰囲気が感じられるモデルとして、現在も根強い支持を集めています。

基本スペック
・製造年: 2003年(Y番)〜2010年頃(ランダム番)
・ケース: 40mm(904Lステンレススチール)
・ベゼル: 逆回転防止式(アルミ製グリーンインサート)
・風防: サファイアクリスタル
・防水: 300m防水
・ブレスレット: 93250(1999-2010年)
・ムーブメント: Cal.3135
・振動数: 28,800振動/時

①ダイヤル

「Ref.16610LV」のダイヤルは、「Ref.16610」とは異なり、マキシダイヤルが採用されています。

①マキシダイヤル

マキシダイヤルとは、通常のサブマリーナーと比べて、インデックスが大きく、視認性が向上したダイヤルデザインのことです。このデザインは、その後の6桁リファレンス(Ref.116610LN/116610LV)にも受け継がれました。

②SWISS MADE(2003年〜2010年)
「Ref.16610LV」のダイヤルには、最初から「SWISS MADE」の表記が採用されており、トリチウム夜光は存在せず、すべてルミノバ夜光が使用されています。

また、ダイヤルの表記の細分化が進んでいて、大きく6パターンに分かれると言われています。

◯ Mk.1(2003年~2004年頃)

・特徴:通称「ビッグスイス」と呼ばれる文字盤。
・識別ポイント:6時位置の「SWISS MADE」の表記間隔が広く、「SWISS」と「MADE」の間が28分~32分の目盛り間に収まらない。
・書体:「O」の幅が広く、PERPETUALの両側のスペースが広め。


◯ Mk.2(2003年~2005年頃)

・特徴:1型と似ているが、異なる細部がある。
・識別ポイント:5分ごとの目盛りが他と比べて極端に太く、ややセリフ付き。
・書体:「O」は幅広だがメリハリのあるデザイン。PERPETUALの両側スペースが狭く、ROLEXの「R」の位置関係で見分ける。


◯ Mk.3(2004年~2005年)

・特徴:28分~32分の目盛りが短い最終型の文字盤。
・識別ポイント:5分ごとの目盛りが極太なら2型、やや太い程度なら3型。
・書体:「SWISS」の「S」が逆転したような書体を使用(1~5型共通)。


◯ Mk.4(2005年~2007年頃)

・特徴:3型よりもシャープなデザインで、クラウンマークも変更。
・識別ポイント:28分~32分の目盛りが長く、その間に「SWISS MADE」のレターがしっかり収まる。
・書体:4型と5型は酷似しており、識別が難しい。


◯ Mk.5(2006年~2010年頃)

・特徴:4型とほぼ同じだが、特定の細かい違いがある。
・識別ポイント:クロノメーター表記の「OFFICIALLY CERTIFIED」の「Y」の位置が異なる。
・書体:「SWISS」の「S」が逆転した書体(4型と見分けるのは困難)。


◯ Mk.6(2009年~2010年頃)

・特徴:5型までと異なる書体を採用している唯一のモデル。
・識別ポイント:「E」の中央横線が短く、防水表記の「ft」が縦線と横線が交差しない。
・書体:「Z」の逆転ではなく、丸みを帯びた「S」を採用。

②ベゼル

「Ref.16610LV」最大の特徴であるグリーンのベゼル。この鮮やかなグリーンは、ロレックスのブランドカラーでもあり、サブマリーナー50周年を象徴する特別なカラーとなっています。ベゼルは、アルミ製のインサートが使用されており、経年変化によって色味が変化することもあるため、コレクターの間ではベゼルの色味も重要となっています。

「Ref.16610LV」のベゼルインサートには2種類のバリエーションが存在します。

①ファット4(2003年 Y番〜2004年 F番前半)
・「40」の数字の4の部分が太く、丸みを帯びたデザインになっている初期のベゼル。
・生産数が少なく、特にY番・F番の初期個体は希少価値が高い。

②スリム4(2004年 F番後半〜2010年)
・「40」の数字の4が細く、シャープなデザインになった後期のベゼル。
・一般的に市場に流通している16610LVのほとんどがこのタイプ。

③ムーブメント

搭載されているのは、ロレックスの名機「Cal.3135」。「Ref.16610」と同様のムーブメントであり、実用性の高さが魅力です。

「Cal.3135」の特徴
・28,800振動/時で高い精度を維持
・ツインブリッジのテンプ受けにより耐衝撃性が向上
・テフロン加工の脱進機で耐久性アップ
・ブルーパラクロム製ヒゲゼンマイ(2000年代後半〜)を採用し、耐磁性が向上

「Cal.3135」は、精度・耐久性・メンテナンス性に優れたムーブメントとして高く評価され、現在のロレックスにも改良版が搭載されています。

④ブレスレット

「Ref.16610LV」に採用されたのは、「Ref.16610」の後期仕様と同一の「93250」ブレスレットです。
・フラッシュフィット一体型の堅牢な仕様
・ダイバーズエクステンションを標準装備(ダイビングスーツの上からでも装着可能)

また、2007年以降の個体(Z番後半以降)では、インナーサークルに「ルーレット刻印」が入るようになりました。

まとめ

「Ref.16610LV」は、5桁リファレンスのサブマリーナーの中でも特別な存在であり、サブマリーナー50周年を記念する希少なモデルです。特に、初期のMk.1個体はプレミア価格で取引されており、今後も価格の高騰が予想されます。また、レトロ感と実用性を兼ね備えた最後の5桁リファレンスとして、ルミノバ夜光の視認性を重視するユーザーにもおすすめです。

「グリーンサブ」の名を冠する「Ref.16610LV」は、ロレックスの歴史においても重要な一本。興味がある方は、ぜひその魅力を手に取って確かめてみてはいかがでしょうか?

ご興味ある時計がございましたら、この機会に是非インタレスト(再入荷希望)にご登録ください!

監修者のプロフィール

下川裕の写真

下川 裕(しもかわ ゆう)

高級腕時計専門店 コミット銀座 シニアアドバイザー / 鑑定士歴:2014年~現在

33歳 群馬県出身

大学卒業後に某ブランド買取・販売店に就職。各種ブランド品を幅広く見ている中で、高級腕時計の虜に。
高い向上心から、専門性の高い知見を有していることでも著名な鑑定士 阿部・金子が在籍しているコミット銀座へ入社。10年以上の鑑定士キャリアを持ちながらも、時計に対する勤勉で真摯な姿勢は、多くのお客様の心を鷲掴みにし、指名して来店いただくことも多数。今後のコミット銀座を担うまさに中心人物。

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