みなさま、こんばんは!

 

機械式時計について技術者視点で語る本コラム。第21回となる今回は、前回に引き続き

 

『文字盤の仕上げ、装飾について』

 

こちらをテーマにお話ししていきます。

 

 

様々な種類が存在する高級腕時計の文字盤。前回は一般的な文字盤の仕上げ、装飾についてお話ししましたが、今回はその続編として、"ギョーシェ彫り"の種類について"深掘り"していきたいと思います。

ぜひ最後までご覧ください!

 

ギョーシェ彫りとは

ギョーシェ彫りとは、時計の文字盤などの装飾に使用される技法の一つで、18世紀にアブラハム=ルイ・ブレゲによって発明されました。この技法は、特殊なエンジン・ターニング機械を使用して、文字盤の表面に均等なライン、波模様、放射状の模様など、幾何学的で精密なパターンを作り出します。

このギョーシェ彫りには、マット仕上げと同じく光の反射を抑え、視認性を高めるという技術的に優れた点があり、見た目の美しさと実用性を兼ね備えた点が、多くの腕時計の文字盤に採用されている理由になっています。

 

ギョーシェ彫りの種類

①クル・ド・パリ

ピラミッドのような尖った鋲が規則的に並ぶ加工。フランス語で「パリの爪」という意味です。

ブレゲが考案して以来、非常に長い伝統を持ち、そして腕時計に品を添えることから、多くの由緒正しいブランドで採用される有名な技法です。

パテック・フィリップはこの "クル・ド・パリ" 装飾をカラトラバのベゼルに伝統的に採用していますね。

 

②ヴァーグ

「波」を意味する名前が示す通り、水の波紋をイメージした紋様になります。

 

海をモチーフにしたブレゲの名作 "マリーン" に、イメージにピッタリのヴァーグが採用されていますね。

ブレゲは、1つの文字盤に複数の異なったギョーシェパターンを用いて、文字盤に様々な彩りを与えることも得意としています。

 

③ソレイユ

太陽光のように放射状に広がるパターン。フランス語で太陽を意味します。 

前回紹介させていただいた "サンレイ仕上げ" をより力強くしたようなギョーシェですね。

 

ロレックスにも"サンビーム"と名付けられた文字盤が存在しますが、これもソレイユの一種と考えてよいでしょう。

 

④ダミエ

ルイヴィトンのバッグで有名なダミエ柄。日本でも「市松模様」として古くから親しまれていますね。

 

正方形のチェック柄が特徴で、日本人にとってなじみ深い、親しみが持てるデザインではないでしょうか。

 

 

2023年の新作として話題を呼んだIWC「インジュニア」の文字盤も美しいダミエ柄のギョーシェですね。

 

コート・ド・ジュネーブ

コート・ド・ジュネーブはストライプ模様になります。

 

主に文字盤ではなくムーブメントの装飾に使用されることが多いギョーシェになりますが、技術者出身で、時計の文字盤よりもムーブメントを見る時間の方が長かった私 "ドクター伊藤" にとってなじみ深い模様のため、最後にご紹介させていただきました。

 

この端正な美しさを持つコート・ド・ジュネーブ。ムーブメントだけではなく文字盤に採用するメーカーがもっと増えても良いのでは?と思っています。

 

 

まとめ

いかがでしたでしょうか。 

一口にギョーシェ彫りといっても本当に様々な種類があることがおわかりいただけたかと思います。光を美しく反射するサンレイ文字盤も魅力的ですが、光の反射をコントロールしつつデザインとして様々な雰囲気をもつギョーシェ彫りも本当に素敵です。また、単なる装飾ではなく元々は視認性を高める技術から発展しているという点もギョーシェ彫りの素晴らしいところです。 

本記事が皆さまにとって有益な情報となり、高級腕時計に対する興味が少しでも沸いたようであれば幸いでございます!また、ご不明点は直接ご質問いただければしっかりとお答えさせていただきますので、みなさま是非ご来店、お問い合わせをお待ちしております。

次回もお楽しみに!ではまた!

機械式時計徹底解剖