機械式時計を選ぶ際、皆さんはどこに注目されるでしょうか。
多くの方は"デザイン性"や"機能性"、"資産性"とお答えになると思います。もちろん見た目やリセールというのは非常に重要なポイントになりますが、ここにブランドやモデルの歴史的背景、年代毎のマイナーチェンジなど、知識や理解が増えることで、さらに時計が好きになり、選ぶ楽しみを味わえるのではないでしょうか。 本コラムでは、初心者、上級者を問わず、機械式時計に関する知識を一つでも多くお伝えし、皆さまの時計選びの参考となるよう徹底解剖、徹底解説してまいります。
今回は【ロレックス】『GMTマスター』「Ref.1675」の”マットダイヤル”にフォーカスを当ててお話ししていきますので、ぜひ最後までご覧ください。
第二世代 GMTマスター Ref.1675
【ロレックス】『GMTマスター』は、1955年にパン・アメリカン航空のパイロット向けに開発された、2タイムゾーン表示機能を持つツールウォッチ。第二世代にあたる「Ref.1675」は1959年に登場し、約20年以上の長きにわたり製造されたロングセラーモデルです。
基本スペック
•製造期間:1959年〜1979年頃
•ケースサイズ:40mm
•ケース素材:ステンレススチール
•風防:プラスチック
•防水性能:50m
•ベゼル:双方向回転式
•ムーブメント:Cal.1560、Cal.1570
ダイヤル
◯ マットダイヤル:1967〜1979年頃
ミラーダイヤルから、視認性を重視したマットダイヤルに変更されたのが1967年頃。艶がなく、ホワイトレターとのコントラストが強調され、経年変化も比較的起こりにくいこから、よりツールウォッチとしての性格を強めていきます。
Mk1(1967〜72年頃)【ロングE】
・“ROLEX”の「E」の中央バーが長い(ロングE)上下の横棒と同じ長さ
・セリフのない均整の取れたゴシック体
・王冠マークは細身で、山が長い
Mk2(1972〜73年頃)
・“ROLEX”ロゴが太字かつ柔らかい印象
・“OYSTERとPERPETUAL”の文字間がやや広くセリフはつかない
・生産期間が短く市場流通は少ない
Mk2.5(1972〜75年頃)
・手書き調のクラウンマークが特徴
・太字の“ROLEX”ロゴが採用され、“L”と“E”のセリフが大きい
・クロノメーター表記の1行目のスタートの“S”と2行目スタートの“O”がやや大きい
Mk3(1976〜78年頃)
・夜光インデックスは小ぶりで内寄り
・王冠マークは縦長でオイスター表記にセリフがつく
・クロノメーター表記もSWISS-T<25表記にもセリフがつく
・通称“ラジアルダイヤル”と呼ばれている
Mk4(1975〜79年頃)
・クラウンマークはやや縦長でMk5と似ているが、口の形がMk3に近い
・オイスター表記はセリフなしに戻った
・“M”右側の縦線を下に伸ばすと、「C」を貫通する
Mk5(1977〜79年頃)
・クラウンマークはやや縦長でMk4との見比べは口の形が異なり、平べったい形が特徴
・“M”の縦線延長が「C」と「H」の間に来る(識別ポイント)
・Mk5の中でさらに細分化されている
ベゼルインサート
Mk1ベゼル(1959〜1968年頃)
・12時位置の三角形が正三角形
・全体的に小ぶりな数字がプリントされている
・初期ベゼルは太字で後年になるにつれてやや細くなる
Mk2ベゼル(1960年代後半〜1979年頃)
・12時位置の三角形は二等辺三角形
・全体的に数字が大ぶりになった
・数字の太さで3タイプに分かれ、メガファット、ファット、ノーマルの順番で太いほど年式が古い
※Mk2ベゼルからブラックベゼルが登場し始める
サービスインサート
(Mk3)Ref.16750のオリジナルインサート
・Mk1ベゼルに似ているが、三角形は正三角形ではなく二等辺三角形
・数字の“8”の上部が大きいのも特徴
(Mk4)Ref.16750のオリジナルインサート
・三角形のサイズが最も大きい
・数字の“8”の上下の円が正円に近い形状が特徴
ベゼルのSS部分にも年代による違いが見られ、初期個体の溝は縦に深い溝になっており、ミラーダイヤルの年代は深い溝が好ましいとされます。後年になるにつれて溝が浅くなりますが、ポリッシュの入り方によって見分けが難しい場合もあります。
また、経年変化によりベゼルカラーが褪色し、ピンク・パープル・スカイブルーなどの“フェード”が生まれるのことも、ヴィンテージ『GMTマスター』ならではの魅力となっています。
リューズガード
◯ポインテッド・クラウンガード(PCG)
前期型
・『GMTマスター』初のリューズガードでリューズに行くにつれ細くなるデザイン
後期型
・前期型と異なり先端が鋭角になっているのが特徴
PCGは前期型、後期型ともに初期個体だけに見られる希少ディティールとなっています。
◯ラウンド・クラウンガード(RCG)
初期型
・上部(時計正面側)がフラットなリューズガード
後期型
・厚みの違いが見られるが、現行モデルにも採用されている一般的なリューズガード。
まとめ
『GMTマスター「Ref.1675」マットダイヤルは、約12年の製造期間の中で様々なマイナーチェンジが行われました。その細かい仕様の違いをはじめ、実用性とクラシカルな雰囲気を持つことから、多くの愛好家の心を掴んで離さない人気モデルとなっています。また近年は特に、バースイヤーウォッチをお探しの方も少なくない印象です。
どの仕様も市場で高評価を得ており、オリジナルの状態を保っている個体は年々希少性が増していることも見逃せないポイントです。
「Ref.1675」は奥深い魅力に満ちたモデル。出回りが少なくなってきた今だからこそ、ピンと来る個体を見つけられたのなら、早めに押さえておくことをオススメします。
それでは次のコラムでお会いしましょう!
ではまた!!