
機械式時計を選ぶ際、皆さんはどこに注目されるでしょうか。
多くの方は"デザイン性"や"機能性"、"資産性"とお答えになると思います。もちろん見た目やリセールというのは非常に重要なポイントになりますが、ここにブランドやモデルの歴史的背景、年代毎のマイナーチェンジなど、知識や理解が増えることで、さらに時計が好きになり、選ぶ楽しみを味わえるのではないでしょうか。 本コラムでは、初心者、上級者を問わず、機械式時計に関する知識を一つでも多くお伝えし、皆さまの時計選びの参考となるよう徹底解剖、徹底解説してまいります。
今回は【ロレックス】『GMTマスター』「Ref.16750・Ref.16700」にフォーカスを当ててお話ししていきますので、ぜひ最後までご覧ください。
ロレックス GMTマスター Ref.16750・Ref.16700
『GMTマスター』の進化の過程において、「Ref.16750」と「Ref.16700」はヴィンテージとモダンの中間に位置する存在です。「Ref.16750」は前世代「Ref.1675」からの技術的進化を担い、「Ref.16700」は『GMTマスター』としての最終形を示しました。本稿では、両リファレンスの背景・仕様・ダイヤルのバリエーション・夜光・ベゼルを解説していきたいと思います。
Ref.16750 基本情報
・製造期間:1980年~1988年
・ケース径:40mm
・ベゼル:両方向回転ベゼル(ペプシ / ブラック)
・風防:プラスチック
・ムーブメント:Cal.3075
・防水性能:100m
概要:
「Ref.16750」は、「Ref.1675」のデザインを踏襲しながらも、防水性能や実用機能の大幅な向上を実現したモデルです。「Cal.3075」を搭載することで、日付のクイックチェンジと秒針停止(ハック)機能が加わり、より実用的なGMTウォッチとして進化を遂げました。
Ref.16750 ダイヤルバリエーション
①マットダイヤル(フチなし)【1980年〜1983年頃】
◯Mk.1(1980-82年頃)

・バランスの取れたクラウンマークとセリフ付きのレターが特徴
・ROLEXの“R”の上部が大きく見える
◯Mk.2(1982-83年頃)

・クラウンマークがシャープになっていて、レターにはセリフなし
トリチウム夜光が直塗りされた、クラシカルな雰囲気のマットブラックダイヤル。インデックスはホワイトで縁取りがなく、Ref.1675後期を踏襲した雰囲気が特徴です。初期型ならではのヴィンテージ感があり、トリチウム夜光の焼けが個体差を生み出します。
②ラッカーダイヤル(フチあり)【1983年頃〜1988年】
◯Mk.3(1983-84年頃)

・マットダイヤル同様“DATE”表記の見られないダイヤルが特徴
・レターにセリフは無し
◯Mk.4(1984-88年頃)

・OYSTER PERPETUALの後に“DATE”表記が入るようになる
・レターは全てセリフ付き
後期モデルからは、艶のあるラッカーダイヤルが採用され、インデックスにはホワイトゴールドの縁取りが加わります。視認性と高級感のバランスが取れた仕様で、後継の「Ref.16700」へとつながっていくデザインとなっています。
Ref.16700 基本情報
・製造期間:1988年~2000年
・ケース径:40mm
・ベゼル:両方向回転ベゼル(ペプシ / ブラック)
・風防:サファイアクリスタル
・ムーブメント:Cal.3175
・防水性能:100m
概要:
『GMTマスター』最後のモデルとして1988年に登場した「Ref.16700」。「Cal.3175」を搭載、風防がサファイアクリスタルに変更されたことで、堅牢性と耐久性が向上しました。『GMTマスターⅡ』「Ref.16710」と同時期に併売されていたため、“シングルタイムゾーン表示”のGMTとしてコレクターに人気です。
Ref.16700 ダイヤルバリエーション
①トリチウム夜光(1988年〜1998年頃)

「SWISS - T25」表記のフチありダイヤル。前期モデルに見られ、トリチウム夜光ならではの焼けや風合いがセミヴィンテージモデルとして人気です。
②ルミノバ夜光(1998年以降)

夜光素材がトリチウムからルミノバへ移行した後期モデル。「SWISS」または「SWISS MADE」の表記となります。夜間視認性が高く、より実用性を重視した仕様です。

ベゼル
・レッド×ブルー(通称ペプシ)
昼夜の区別を色分けするGMTマスターの伝統的な2トーン。ヴィンテージ個体では赤や青の色褪せ(褪色)に個性が出るため、唯一無二の魅力を楽しむことができます。
・ブラックベゼル
落ち着いた印象で、スーツやビジネスシーンにも合わせやすいカラー。特に「Ref.16700」ではシンプルな印象を好む方に人気です。
「Ref.1675」のMk.3、Mk.4ベゼルはサービスベゼルでしたが、「Ref.16750」のオリジナルインサートでもあり、下記ベゼルがそれに当たります。
(Mk.3)Ref.16750のオリジナルインサート※画像はRef.1675

・Mk.1ベゼルに似ているが、三角形は正三角形ではなく二等辺三角形
・数字の“8”の上部が大きいのも特徴
(Mk.4)Ref.16750のオリジナルインサート※画像はRef.1675

・三角形のサイズが最も大きい
・数字の“8”の上下の円が正円に近い形状が特徴
まとめ
いかがでしたでしょうか。
「Ref.16750」は、クラシックな佇まいと実用性を兼ね備えたセミヴィンテージ『GMTマスター』。一方、「Ref.16700」は、『GMTマスター』の完成形としてモダンな装いと堅牢性を両立させています。両機とも、時代の“橋渡し”としての立ち位置を持ちながら、今なお高い人気を誇る存在です。ダイヤルの仕様や夜光の違いによる個体差も多く、コレクション性の高さと実用性のバランスが魅力となっています。
それではまた次のモデル解説でお会いしましょう!
ではまた!!





