みなさま、こんばんは!
機械式時計について技術者視点で語る本コラム。第31回となる今回は、
『梅雨時、ヴィンテージウォッチを使っても平気?』
こちらをテーマにお話ししていきます。
機械式時計のムーブメントにとって、大敵と言えるのが「湿気」や「水分」。内部部品の不具合に直結してしまう、絶対に避けなければならない相手です。
元々は高い防水性を有している【ロレックス】の"オイスターケース"仕様モデルも、年代が経過したヴィンテージモデルの場合はその高い防水性能が失われている場合があります。
そんなヴィンテージウォッチを梅雨時に使用する際の注意点、ポイントを今回はお伝えしていきたいと思います。
ヴィンテージウォッチを雨の日に使用するリスク
①防水性能が低下している可能性
ヴィンテージウォッチは、製造から何十年も経っているため、もともとの防水性能が高くても、パッキンが劣化していることが多くございます。
パッキンがこのような状態だと、防水性は無いに等しくなってしまいます。
画像は海水に浸ってしまった時計の内部ですが、雨の日の使用による浸水のリスクもありますので、何年もメンテナンスを行なっていないヴィンテージウォッチを雨の日に使用することは避けてください。
また、パッキンは交換すれば機能が回復しますが、SS(ステンレススチール)モデルの場合はケース素材自体が腐食してしまい、パッキンを新品に交換しても防水性能が元に戻らないことがあります。このような状態の場合、ケース交換しないと防水性能を完全に回復させることは難しいです。
②湿気がムーブメントに悪影響
湿気が入り込むと、ムーブメント内部にサビや腐食が起きやすくなります。特に古いムーブメントは、錆びやすい鉄素材が現行モデルよりも多く使用されています。
そのため、湿気の影響による精度低下や止まりなど、致命的なダメージにつながることがあります。
③文字盤への悪影響
防水性能が担保されていない腕時計を雨の日に使用した場合、湿気がケース内に侵入し結露が発生してしまうことがあり、ヴィンテージウォッチ特有のオリジナルダイヤルや針が変色・シミになるリスクがあります。
※画像はサービスダイヤルになります
ヴィンテージウォッチの価値は外観のオリジナリティに大きく左右されるため、これは避けたいところです。
雨の日に使いたい場合の対策
①防水点検の実施
どうしても雨の日にヴィンテージウォッチを使いたい場合は、パッキン類の交換を行い、専門店にて防水検査を実施することをお勧めします。もちろん一番安心なのはメーカーにメンテナンスを依頼することですが、その場合は評価に影響する外装パーツも交換されてしまう可能性があることはご理解ください。
②プラスチック風防の交換
長年使用されたプラスチック風防は、表面からは見えないフチの部分(ベゼルとの境目)にヒビが入ってしまっていることがあります。こうなってしまうと防水性は無いに等しいので、雨の日にヴィンテージウォッチを使いたい方は安心のためにも風防交換を行なった方が良いです。
プラスチック風防に関しては比較的安価に交換可能で、また交換されていても個体の評価に大きな影響を与えません。そのためオリジナルパーツを維持することより、機能性を重視して新しいパーツに交換する方が好ましいと思います。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
梅雨のような湿気の多い時期は、防水性能が落ちているヴィンテージウォッチにとっては大変な時期です。
特に高価なヴィンテージモデルをお持ちであれば、雨の日は無理に使わず、大事に保管しておくのがベストです。ただ、しっかり消耗パーツが交換され、防水性能が維持されている個体の場合は心配無用ですので、安心してご使用ください!
本記事が皆さまにとって有益な情報となり、高級腕時計に対する興味が少しでも湧いたようであれば幸いでございます!また、ご不明点は直接ご質問いただければしっかりとお答えさせていただきますので、みなさま是非ご来店、お問い合わせをお待ちしております。
次回もお楽しみに!ではまた!