
機械式時計について技術者視点で語る本コラム。第55回となる今回は、
『ガソリン車=機械式時計? 自動車市場と時計市場の共通点』
こちらをテーマにお話ししていきます。

世界的なCo2排出規制の強化、自動車メーカーのEVシフトにより、新車としてのガソリン車は今後大幅に減少すると考えられていますが、そのまま消滅してしまうのでしょうか?
そんな今回は、「高級腕時計」との共通点が多い「自動車」の話を軸にお話ししていきたいと思います。
現在のガソリン車の立ち位置
① 新車市場では確実に縮小

各国の規制(欧州の内燃機関規制、中国のNEV政策など)やメーカーの電動化投資により、新車としてのガソリン車は今後10〜20年で大幅に減少すると見込まれています。
- 都市部 → EV中心へ
- 法規制 → CO₂排出規制の強化
- メーカー → 開発費をEVへ集中
つまり、「新車でガソリン車を選ぶ時代」は徐々に終わると考えられます。

機械式時計も、腕時計全体から見たシェアでは、90%近くを占めるクォーツ式に対して少数派です。
② “既存車”は長く残る

世界には数十億台規模の内燃機関車が存在しており、インフラ(ガソリンスタンド・整備網)が完成しています。充電環境等を考えると、新興国ではEV化が急速に進むことはないでしょう。
このため、中古市場・既存車としては20〜30年以上は普通に走り続けると見られます。

機械式時計に置き換えると、ボタン型電池が手に入りにくい地域ではシェアが高いのと同じですね。
③ 嗜好品としての価値はむしろ上がる

ここは、われわれ高級時計販売店において特に重要な視点になります。
- エンジン音・振動・操作感
- メカニカルな魅力(機械としての価値)
これらはEVでは再現しにくいため、
スポーツカーやクラシックカーは“高級嗜好品”として価値が上がる可能性があります。
実際、すでにMT車の希少価値上昇、NAエンジン車の再評価、クラシックカー市場の拡大といった流れは起きています。


手巻き時計のゼンマイを巻き上げる感触と、良くできたMT車のシフトチェンジの感触。これらには共通点があり、メカ好きの男性は惹かれるものがありますよね。
資産価値として残る車と時計の共通点
① 「最後の○○」であること(希少性)


EV化の流れにより、“絶版の瞬間”が価値の起点になります。
例:フェラーリNA、ポルシェ自然吸気GT系など
- 最後のNA(自然吸気)エンジン
- 最後のV12
- 最後のMT設定
これらは、時計で言う「最終品番」「最後のプラ風防モデル」等と同じです。
② ブランドとモデルの“文脈”が強い


「なぜこの車が存在するのか」を説明できるかが重要です。
- モータースポーツとの関係
- 歴史的な系譜(例:911、GT-Rなど)
- ブランドの象徴的モデル
機械式時計も、語れる背景があるモデルはやはり強いですよね。
③ オリジナルコンディション

- ノンモディファイ(改造なし)
- 純正パーツ維持
- 低走行 or 適切な使用履歴
- 記録簿・履歴の透明性
時計で言う、“ノンポリッシュ・フルオリジナル・付属完品”と同じ話です。
④デザインが普遍的


時間に耐えるデザインかどうか。
- 流行に依存しすぎない
- 一目で分かるシルエット
- ブランドらしさがある
これも時計と同じで「一瞬で分かる顔」は強いですね。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
移動手段としての車は、電動もしくはハイブリッドが主流となっていくことは間違いないでしょう。
しかしクォーツショックで絶滅しかけた機械式時計が復権したように、趣味性の高いガソリンエンジン車は、今後も価値を高めていく可能性があるのではないかと私は考えています。このように、高級時計と他のジャンルとの共通点を探りながら、未来を想像するのも楽しいですよ!
本記事が皆さまにとって有益な情報となり、高級腕時計に対する興味が少しでも湧いたようであれば幸いでございます!また、ご不明点は直接ご質問いただければしっかりとお答えさせていただきますので、みなさま是非ご来店、お問い合わせをお待ちしております。
次回もお楽しみに!ではまた!




