「腕時計の革新的な発明は?」と聞かれて、トゥールビヨン、パーペチュアルカレンダー、ペルペチュアル、パラシュート——それらがすぐに思い浮かぶ、そんな人はすでに立派な“時計マニア”。
これらは天才時計師と謳われたブレゲの発明であり、時計の歴史を200年早め、「時計界のレオナルド・ダ・ヴィンチ」とも形容されています。
この漫画では、時計技師の主人公、時計製造の礎を築いたアブラアン-ルイ・ブレゲを物語形式で紹介します。
登場人物:主人公(時計技師見習い)/アブラアン-ルイ・ブレゲ。

主人公「なんでうまく動かないんだ…俺には才能がないのか…」

主人公「ん? さっきまでは光ってなかったよな…?」

主人公「えっ、なにこれ…?」

主人公「まぶしっ…工房全体が…!?」

ブレゲ「夜更けまでご苦労だね、若者よ。」
主人公「だ、誰ですか!?」

ブレゲ「私はアブラアン=ルイ・ブレゲ。君の机の上の、その時計の元の持ち主だ。」

主人公「ブレゲ…!? “時計の王”って呼ばれる、あの!?」

ブレゲ「少し、時を遡ってみようか。」
主人公「え、壁が…変わっていく…!」

ブレゲ「これは、まだ私が若かったころのパリの工房だ。」
主人公「本当に…18世紀…?」

ブレゲ「当時の懐中時計は、こうして縦にぶら下がっていてね。重力が精度を狂わせてしまうのだ。」

ブレゲ「そこで私は、調速機そのものを回転させる仕組み──トゥールビヨンを考えたのだよ。」

ブレゲ「この小さな革命は、やがて王や皇帝たちの心を掴むことになる。」

貴婦人「世界で最も完璧な時計を作ってください。」
ブレゲ「お望みのままに、マダム。」

紳士A「これがブレゲの新作か。」
紳士B「まさに、知性と権力の象徴だな。」

主人公「すごい…時計で歴史を動かしてる…。」
ブレゲ「時計は、時だけでなく物語も刻むのだよ。」

ブレゲ「この細い針、いま君が“ブレゲ針”と呼んでいるものも私の発明だ。」

ブレゲ「そしてこの数字。“ブレゲ数字”もだ。美しく、読みやすくね。」

ブレゲ「自動でゼンマイを巻き上げる“ペルペチュエル”も試していた。」
主人公「自動巻きの原型…!」

ブレゲ「落下しても壊れにくいように、『パラシュート』と呼ぶ耐震装置も考案した。」

ブレゲ「君が知る多くの時計には、こうした発明が静かに受け継がれているのだ。」

ブレゲ「時代が変わっても、手仕事だけは変えてはならない。」
主人公「現代でも、こんなに手で彫ってるんだ…。」

ブレゲ「ケースの側面の溝も、ただの装飾ではない。光と影で、時計に表情を与えるのだ。」

主人公「…きれいだな。」
ブレゲ「静かに語りかけてくる時計ほど、長く愛される。」

主人公「実は…僕の時計、精度が全然安定しなくて。」
ブレゲ「見せてごらん。」

ブレゲ「ふむ…部品は多いが、必要以上のものが混じっている。」
主人公「え…?」

ブレゲ「時計作りは、何かを足すより、何を削るかだ。」
主人公「無駄を…取り除く…!」

主人公「ここをシンプルにして…この摩擦も減らして…。」
ブレゲ(小声)「いいぞ、その調子だ。」

主人公「動いた…!さっきよりずっと安定してる!」
ブレゲ「君自身の答えに辿り着いたようだね。」

ブレゲ「もう大丈夫だ。君は自分の目で時計を見られるようになった。」
主人公「ブレゲさん…」

主人公「ちょ、待ってください!まだ聞きたいことが…!」
ブレゲ「私は、時とともに去るだけさ。」

主人公「また会えますか!?」
ブレゲ「時計を愛するかぎり、いつでも君のそばにいる。」

主人公「“時計の王”ブレゲの教えは、これからもこの工房で時を刻み続ける…。」
ナレーション若き時計職人の物語は、ここから本当の始まりを迎える。





