みなさま、こんばんは!

機械式時計について技術者視点で語る本コラム。第46回となる今回は、
『ヴィンテージウォッチにおける「パーツの整合性」とは』
こちらをテーマにお話ししていきます。

ヴィンテージウォッチの世界で、必ずと言っていいほど出てくる言葉。それが"パーツの整合性(オリジナリティ)"です。
コミット銀座のお客様にも「この針はオリジナル?」「ベゼルは交換されている?」といった質問を受けることがよくあります。正直、初心者の方で「話に付いていけない、、、難しい、、、」と思った方もいるのではないでしょうか。
ただ、この”整合性”を理解すると、なぜ同じモデルでも価格が大きく異なるかが一気に理解でき、ヴィンテージウォッチを見ることが、より楽しくなるかと思います。
そこで今回は、ヴィンテージウォッチにおける"パーツの整合性が意味すること"について、わかりやすく解説していきたいと思います。
整合性とは

"パーツの整合性"とは、"各パーツの製造年代が一致しているか否か"を意味しています。
具体的には、文字盤・針・ベゼル・リューズ・ケース・ムーブメントといったパーツが、"販売当時そのモデルに使われていた仕様かどうか"がチェックされます。
重要なのは、"古い=正しい"ではないという点。"年代に合っているか"が最大の判断基準となります。一度、後年のパーツに交換されたものでも、再度年代の合ったパーツに交換されていれば、それは"整合性が取れた"状態という判断になります。
なぜ整合性が重要なのか

この理由はシンプルで、ヴィンテージウォッチは"工業製品"でありながら、今や"文化財"として取り扱われているため。
例えばロレックスのヴィンテージスポーツモデル。
・文字盤、針は製造年代毎に夜光塗料の種類、配合が異なる
・ベゼルのフォントが年式で変わる
・ブレスレットのデザインが年代で異なる
これらのように、パーツ一つ一つが"同じ時代を歩んできた証拠"となります。
だからこそ、整合性が取れたパーツが揃っている個体は"歴史がそのまま残っている時計(文化財)"として評価されるのです。
パーツ交換=すべて×?

では、パーツ交換されている時計=ダメな時計なのでしょうか。もちろんそんなことはありません。
・後年のサービスダイヤル
・ルミノバ夜光の針
・伸びのないハードブレス
これらのパーツが取り付けられているヴィンテージウォッチは、個体としての評価は低くなってしまいます。しかし見方を変えると、"メーカーにて、実用に耐えられるようしっかりとメンテナンスされてきた個体"とも捉えることが出来ます。
また、パーツ交換されている場合、もちろん販売価格にも反映されますので、魅力的なプライスでヴィンテージウォッチを購入したいというお客様にもオススメです。

※文字盤、針、ブレスレットが交換されたRef.1016
大切なのは、完璧なオリジナルの個体かどうかではなく、時計としてバランスが取れているか、個々のお客様のニーズに合致した個体であるかが、重要になります。
また、安価で購入した時計を、自分好みにパーツ交換していくことも上級者にはオススメです。後年のパーツに交換されている箇所を、整合性が取れたパーツに交換してオリジナルの姿に近づけていくことも、ヴィンテージウォッチの楽しみ方の一つと言えますね。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
とっつきにくい印象を持たれることも多いヴィンテージウォッチですが、一度ハマると抜け出せないほど深い世界でもありますので、少しでも興味のある方、まずはコミット銀座スタッフに聞いてみてください。その素晴らしさ、面白さをしっかりお伝えさせていただきます。
"どれが一番優れている"という話ではなく、"どの時代の時計をどのように楽しみたいか"で価値は変わります。皆様のこだわりに合わせて、選んでみていただければと思います。
本記事が皆さまにとって有益な情報となり、高級腕時計に対する興味が少しでも湧いたようであれば幸いでございます!また、ご不明点は直接ご質問いただければしっかりとお答えさせていただきますので、みなさま是非ご来店、お問い合わせをお待ちしております。
次回もお楽しみに!ではまた!



