みなさま、こんばんは!

 

機械式時計について技術者視点で語る本コラム。第18回となる今回は、

 

『腕時計に使用される素材について』

 

こちらをテーマにお話ししていきます。

 

 

 

腕時計に用いられる素材には、軽いモノや重いモノ、傷がつきやすいモノもあれば、つきにくいモノなど種類が様々ございますが、それに大きく関わっているのが、ケースの"素材"。素材毎の特徴や、どのような用途に適しているか等、しっかり理解しておくと腕時計を末永くご愛用いただけること違いありません。

ということで今回は、"素材"にフォーカスを当て、解説していきたいと思います。

ぜひ最後までご覧ください!

 

 

高級腕時計に使用される一般的な素材

①ステンレススティール 

 

機械式時計の世界では最もポピュラーで、数多くのモデルで採用されている素材が、この"ステンレススティール"。

ステンレススティールは鉄やクロム、ニッケルといった金属や元素で構成されており、「ステン(stain)=錆び」と「レス(less)=ない」という言葉で構成されています。その名の通り、錆びにくく、しかも高硬度で安定した耐久性を有していることが最大の特徴です。

ただ、ステンレススティールと言っても、1種類しか存在しないのではなく、用途やコスト、デザインによって無数存在しており、最も多く腕時計に使用されてきたのは「SUS316L」と呼ばれる素材でしょう。

またステンレススティールは、その含有成分や特性によってさまざまなメーカーが特許や登録商標を持っている素材でもあり、【ロレックス】も医療用に用いられていた「SUS904L」を「ロレックススティール」として使用していますね。

 

 

コストと性能のバランスが良く、取り扱いも容易なため、誰にでもお勧めできる素材と言えるのが、この「ステンレススティール」になります。

 

②ゴールド・プラチナ

 

多くの人々が憧れ、支持を得ている"ゴールド"素材。気品漂う美しい輝きと、市場的にも認められた価値によって、ラグジュアリーな雰囲気を放っています。

腕時計に使用されているゴールド素材は、18Kを使用することが一般的となっていますが、24Kの場合、金属として軟らかすぎるため、他の金属を配合して硬度を高めつつ美しさを保った18Kが最適とされています。

※金の純度を示すカラット(karat=K)は、金の含有率を24分割で表したもの

また、ゴールドには主にイエローゴールド、ピンクゴールド、ホワイトゴールドと3種類存在していますが、これは銀や銅、パラジウムなどを混ぜることで、色を付けているのです。

 

 

注意点もいくつかあり、ゴールド・プラチナは錆びづらく、長期間使用できる素材ではありますが、特別傷が付きにくい素材というわけではありません。毎日時計を身に着けていると、どうしても細かな傷はついてしまいますので、その点は理解しておきましょう。

またゴールド・プラチナは比重が大きいため、どうしても重くなります。その重量感が魅力の一つではありますが、軽い時計をお好みの方には向いていません。

 

 

高級腕時計に使用される特殊素材

①セラミック

 

 

セラミックは腕時計に使われるケース素材としては圧倒的に傷が付きづらい素材です。金属よりも軽量ながらサファイヤクリスタルと同等の「2300」というビッカース硬度を持ち、ステンレススティールと比較するとセラミックは10倍以上も硬いのです。加えてセラミックは変色しないうえに錆びることもありません。非常にメリットの大きい素材だと言えます。

ただし、加工するには高い技術が必要で、燃成過程などを経て製造するため、製造コストが高くなる傾向にあります。

 

②チタン

 

チタンの魅力はなんといっても軽さ。比重がステンレススティールの約6割という軽量素材です。軽快に装着できるため、時計のケース素材に用いられることが増えてきています。

他にも、表面に酸化被膜を張っているため海水などに触れても錆びにくく、強度もあり、更には金属アレルギーを起こしにくいという点も見逃せないポイントです。

一方で加工しにくいという製造上の難点もありますが、近年、技術力が向上したことで、美しい仕上げを施したチタンケースが増えてきました。"RLXチタン"を使用した『ヨットマスター』が2023年の新作としてデビューしたことも記憶に新しいですね。

 

③ブロンズ

 

お持ちの時計を綺麗な状態で保ちたい。これは誰もが思うことですが、最近は経年変化による独特な味わいを持つ時計の需要も増えてきています。一般的にエイジングが楽しめるケース素材としては"真鍮"素材が有名ですが、高級腕時計に使用する素材としては安物感が出てしまうことは否めません。

そこで注目されているのが"ブロンズ"素材。ブロンズはその名の通り"銅"をケースに採用しています。一般的にブロンズは耐アレルギー性能が弱く錆びやすい為、高級腕時計に用いられることは殆どありません。しかし、チューダーやパネライ、ブルガリといったブランドでは敢えてブロンズをケース素材に採用し、「経年変化によるエイジングが楽しめること」をウリとするモデルを作り上げました。

独特の美しさがあるため、普通の時計では物足りないという方にピッタリな素材と言えます。

 

 

まとめ

いかがでしたでしょうか。 

時計選びの基準は人それぞれで、ブランド、ムーブメントの性能、あるいはダイヤルカラーなど、大切にする要素は異なるかと思います。これからの時計選びのポイントとして、ケース素材にもぜひ注目していただければと思います。

本記事が皆さまにとって有益な情報となり、高級腕時計に対する興味が少しでも沸いたようであれば幸いでございます!また、ご不明点は直接ご質問いただければしっかりとお答えさせていただきますので、みなさま是非ご来店、お問い合わせをお待ちしております。

次回もお楽しみに!ではまた!

機械式時計徹底解剖