第44回 高級腕時計トレンド2025｜ラ・ケットゥ・デュ・タン徹底解説

ヴァシュロンコンスタンタン創業270周年の集大成「La Quête du Temps（ラ・ケットゥ・デュ・タン）時の探求」は、時計と芸術と天文学が一体化した“現代の天文時計”。ルーヴル美術館で開催された晩餐会でお披露目、展覧会で公開されています。両者の関係は、2016年、ヴァシュロンコンスタンタンがルーヴル美術館に所蔵されていた置時計「天地創造」の修復を担ったことに由来します。この時計を蘇らせたことにより、2019年にルーブル美術館とヴァシュロンコンスタンタンは正式にパートナーシップを結ぶこととなりました。

*ヴァシュロンコンスタンタン引用画像

ヴァシュロンコンスタンタンとは｜最古の老舗と270周年

1755年創業。現存する最古の時計メゾンとして、複雑機構と工芸を連続的に磨いてきました。270周年の節目に、同社は“時間・宇宙・人の知恵”を可視化する天文時計プロジェクトを完成させ、歴史の延長線上に現代の回答を提示しました。

• 創業：1755年（ジュネーブ）
• 270周年記念作：La Quête du Temps（ラ・ケットゥ・デュ・タン）
• 位置づけ：時計製造・工芸・音・天文学の総合芸術

*ヴァシュロンコンスタンタン引用画像

ラ・ケットゥ・デュ・タンの仕様｜サイズ・部品数・複雑機構

本作は“腕時計”ではなく“天文時計”。機械部品は6,293個、複雑機構は23。うち24時間リング、恒星時、日の出/日の入りレトログラード、3Dムーンなどを統合し、現代の表示工学として再構成しています。

全高は約1,070mm、直径約503mm。重量は報道ベースで約250kg。美術館展示にふさわしい“存在感”があり、写真越しでは伝わり切らないスケールで迫ってきます。

*ヴァシュロンコンスタンタン引用画像

“時を指す”オートマトン「The Astronomer」｜計時コンプリケーション化

象徴は中央の人形オートマトン「The Astronomer」。従来の“飾り”ではなく、時・分を指し示す“計時コンプリケーション”としてムーブメントに統合。メゾンは“世界初の発想”と説明します。動きは機械メモリと多数のカムで制御され、所作は音楽と同期。

動作は158個のカムで制御され、最大144種の所作を行うと報じられます。機械仕掛けでここまで“生き物の所作”に近づけた技術力は類を見ません。

• 自動仕掛け＝人形が時間表示の“当事者”へ
• 機械メモリ＋カム制御で多彩なジェスチャー
• 音楽演出と同期し“体験価値”を増幅

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天文学×表示工学｜恒星時・日の出入レトログラード・3Dムーン

恒星時、日の出/日の入りレトログラード、3Dムーンなどを“読みやすさ”優先で配置。特に24時間リングはベアリング構造により、一年を通じて彫刻面が常に手前を向く工夫が盛り込まれています。“精密なのに自然に読める”設計は、表示工学の観点からも注目されます。

さらに、ドームには創業日のジュネーブの空（1755年9月17日10時）が描かれると紹介され、メゾンの歴史と宇宙の接続が視覚化されています。

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音と動きのシアター｜2つの楽器と作曲家の参加

本作は“目で見る”だけでなく“聴いて味わう”設計。報道ベースでメタロフォン（鉄琴）とワウワウ・チューブという2つの楽器が用いられ、作曲家Wood kid（ウッドキット）の音楽と同期する演出が紹介されています。この装置は、世界最高のオートマタ製作者と謳われるFrancois Junod（フランソワジュノー）の協力のもと完成しました。動きと音の連携は、展示空間での没入感を一段引き上げてくれます。

*ヴァシュロンコンスタンタン引用画像

派生する腕時計表現｜「Métiers d’Art Tribute to the Quest of Time」

同思想は腕時計にも落とし込まれ、両面ダイヤルと“腕を上げて時刻を示す”表示を備えた20本限定のメティエ・ダールの新作が発表されています。大型作品の思想を“身につけられる体験”へ落とし込んだ点が巧妙です。

ルーヴル展示の意義｜会期・会場・対話する古典機械

会期は2025年9月17日～11月12日。会場はルーヴル・Aile Sully（スリー翼）602室。「Mécaniques d’Art」展の中心作品として、古典の天文時計や自動機械と歴史的対話を織りなします。現地で体感すると“機械が物語になる瞬間”が腑に落ちます。

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初心者向けガイド｜“凄さ”が伝わる3つの視点

初学者は次の3点に注目すると理解が深まります。小難しさよりも“読みやすさ”を体験してみてください。

• 表示の重ね方：多機能でも読み取りが破綻しない配置設計。
• 所作の一貫性：オートマトンの身振りとスケールの同期が心地よい。
• 素材と仕上げ：ラピスラズリ台座、面取り、彫金の精度に注目。

“精密なのに美しい”という相反の両立にはいつも驚きます。これこそ高級時計の醍醐味ですね。

コレクター視点｜歴史的意義と機械式時計のロマン

本作は市場価格の物差しを超え、メゾンと美術館の物語に結びつく“記念碑”。評価軸は以下へ移行します。

• 歴史的コンテクスト：古代～近世の機械芸術と連続する位置づけ。
• 技術統合度：23複雑機構＋計時オートマトン統合の新規性。
• 文化的露出：世界的美術館での展示記録・アーカイブ性。

“展示由来のストーリー性”は派生モデルの再評価にも効きます。収蔵・記録が厚いほど、長期で語り継がれる傾向があります。

数値で読み解くハイライト｜開発・構成・展示

今後の展望｜メゾンと市場への波及

本作はアーカイブと美術館ネットワークに刻まれ、周年以降も“メゾンの核”として活用されるはずです。メティエ・ダール群や天体表示の研究開発、音と機械の協働表現にも波及が見込まれます。コレクター市場では「作品・展示由来のストーリー」を持つ関連モデルの再評価が進む可能性も高まるかもしれません。数字のみでは語れない、物語で惹きつける稀有な存在です。

*ヴァシュロンコンスタンタン引用画像

まとめ｜“時間”を物語に変える総合芸術

La Quête du Tempsは、天文学・機械・工芸・音を“読みやすい表示”へ統合した記念碑。初心者には表示設計の自然さ、コレクターには歴史的脈絡と技術統合という二つの入口を用意し、誰もが“時を見つめ直す”契機を与えてくれます。単なる時計を超えて、文化資産として語り継がれるでしょう。

参考・引用元

• Vacheron Constantin 公式：La Quête du Temps（概要）
• 同：Beyond watchmaking（23複雑機構・24hリング・特許）
• 同：The Astronomer（計時コンプリケーション化）
• HODINKEE（サイズ・重量・楽器など）
• SJX（高さ・直径・ディテール）
• ルーヴル公式（会期・会場）
• Revolution（展示背景・Woodkid）
• Fratello（144ジェスチャー・158カム）
• Watch Collecting Lifestyle（Cal.9270構成）

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