機械式時計を選ぶ際、皆さんはどこに注目されるでしょうか。

多くの方は"デザイン性"や"機能性"、"資産性"とお答えになると思います。もちろん見た目やリセールというのは非常に重要なポイントになりますが、ここにブランドやモデルの歴史的背景、年代毎のマイナーチェンジなど、知識や理解が増えることで、さらに時計が好きになり、選ぶ楽しみを味わえるのではないでしょうか。 本コラムでは、初心者、上級者を問わず、機械式時計に関する知識を一つでも多くお伝えし、皆さまの時計選びの参考となるよう徹底解剖、徹底解説してまいります。

今回は【ロレックス】『GMTマスター』「Ref.16713・Ref.16718」にフォーカスを当ててお話ししていきますので、ぜひ最後までご覧ください。

GMTマスターⅡ Ref.16713・Ref.16718


1990年代から2000年代中盤にかけての『GMTマスターⅡ』を支えたロングセラーモデル、「Ref.16713」と「Ref.16718」。
プラスチック風防からサファイアクリスタルへ、そして完全な独立短針操作を可能にした「Cal.3185」の搭載など、実用性と高級感を現代的な水準へと押し上げた記念碑的なモデルです。
今回はこの2つを、素材違いによる外観の差、パーツ仕様、ダイヤルバリエーション、細部まで徹底的に解説していきます。


基本スペック
【Ref.16713(SS/YG)】
製造期間:1989年頃〜2006年頃
ケース径:40mm
風防:サファイアクリスタル
ベゼル:アルミ製24時間表示インサート
ブレスレット:78363/78793/62523H
ムーブメント:Cal.3185
防水性能:100m

【Ref.16718(18KYG)】
製造期間:1989年頃〜2005年頃
ケース径:40mm
風防:サファイアクリスタル
ベゼル:アルミ製インサート
ブレスレット:7206/8・78798・ジュビリーブレス
ムーブメント:Cal.3185
防水性能:100m


ダイヤル

■ Ref.16713 ― ブラック & ブラウンの2種展開
「Ref.16713」においても、ブラックとブラウンの2種類が主要ラインナップでした。前作「Ref.16753」からの流れを汲みつつも、インデックスの仕様変更により、より現代的で洗練された顔立ちへと進化しています。

● ブラックダイヤル

漆黒のグロスダイヤルにゴールドのレターが映える王道の組み合わせ。
インデックスは従来の「フジツボ(ニップル)」から、金枠付きのルミノバ(初期はトリチウム)インデックスへと変更され、視認性と高級感が向上しています。

● ブラウンダイヤル

サンレイ仕上げの美しいブラウンは、光の加減でゴールドに近い輝きを放ちます。昨今の相場上昇においても再評価が進んでいる、このモデルを象徴するカラーです。

 

■ Ref.16718 ― 金無垢の風格を決定づける2色
「Ref.16718」では、金無垢ケースの圧倒的な存在感に合わせ、ブラックとブラウンが用意されました。

● ブラックダイヤル

18KYGケースの輝きをブラックが引き締める、非常にメリハリの効いたデザイン。
スポーティさとドレッシーさが同居しており、スーツスタイルでも合わせやすい端正な表情が魅力です。

● ブラウンダイヤル

18KYGケースとの融合感が最も高い仕様。
ケース、ブレス、文字盤すべてがゴールドトーンで統一され、これぞ金無垢といった重厚なオーラを放ちます。

両リファレンスとも、針はイエローゴールド仕様です。
・時・分・秒針は金色
・GMT針は大きな三角付きのゴールド針
・夜光はトリチウム(〜1998年頃)/ルミノバ(1998年〜)/スーパールミノバ
前世代と比較して、サファイアクリスタルのクリアな視界により、ゴールド針のカットや仕上げの美しさがより際立つようになりました。

ベゼル

■ Ref.16713
ロレゾールモデルでは、主に以下の2パターンが存在します。
● ブラック
・SS×YGのコンビネーションをスタイリッシュに見せる配色
・ビジネスシーンでも使いやすい落ち着いた印象
● ブラウン×ゴールド(茶金ベゼル)
・「ルートビア」ダイヤルと対になる仕様
・ベゼルのゴールド部分とSSケースのコントラストが美しく、ヴィンテージ感とラグジュアリー感が共存する人気カラー

■ Ref.16718
金無垢モデルでも同様に、ダイヤルカラーに合わせたベゼルが装着されます。
特に ブラウン×ゴールド のベゼルは、16718において最も金無垢らしさを体現する装備です。
アルミインサート特有の退色(エイジング)が楽しめる最後の世代でもあり、個体ごとの微妙な色味の違いがコレクター心をくすぐります。

ケース

両モデルとも、実用性を高めた40mmのオイスターケースを採用。
・風防はサファイアクリスタルへ進化
・厚みが増し、堅牢性が向上
・ラグの横穴(ケースサイドの穴)は、2003年頃を境に塞がる仕様変更あり
1675系に比べると肉厚になり、現代のスポーツロレックスに通じる「ガッシリとした装着感」が得られるのが特徴です。

ブレスレット

■ Ref.16713
オイスターブレスとジュビリーブレスの両方が選べました。
・オイスター:78363(シングル)/78793(ダブルロック)
・ジュビリー:62523H
製造期間が長いため、バックルの仕様変更(シングルからダブルロックへ)や、フラッシュフィットの一体化(ソリッドエンドリンク)など、年式によるマイナーチェンジが顕著に見られます。

■ Ref.16718
金無垢オイスター、または金無垢ジュビリー。
特にオイスターブレスの「78798」などは、コマの中空感が徐々に解消され、重量感が増しています。
金無垢ジュビリー装着個体は、その繊細な輝きと装着感の良さから、近年再び注目を集めています。

バックル

初期個体はシングルロック、中期以降はダブルロック(フリップロック)へと進化しました。
特にスポーツモデルとしての実用性を重視するユーザーには、誤開放を防ぐダブルロックバックル搭載の後期型が支持されています。
クラスプ部分の素材や刻印も年代によって異なり、金無垢モデルではクラスプ内側まで贅沢な仕上げとなっています。

ムーブメント

Cal.3185
両モデルとも、名機「Cal.3185」を搭載。
・短針独立操作機能
・テンプのツインブリッジ化による安定性向上
・ハイビート(28,800振動)
GMTマスターI(日付早送り機能)とは異なり、短針を単独で動かせるため、第2時間帯の設定が容易に行える「真のGMTウォッチ」としての機能を持っています。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

ロレゾールの「Ref.16713」、金無垢の「Ref.16718」。
これらは「アルミベゼルのクラシックな風合い」と「サファイアクリスタル&Cal.3185の実用性」を兼ね備えた、セミヴィンテージの傑作です。
現行のセラミックベゼルにはない温かみのある光沢と、シャープなケースライン。
黒文字盤で精悍に決めるか、ルートビアで個性を主張するか。この時代のゴールドモデルでしか味わえない色気が、そこにあります。

ではまた!

監修者のプロフィール

下川裕の写真

下川 裕(しもかわ ゆう)

高級腕時計専門店 コミット銀座 シニアアドバイザー / 鑑定士歴:2014年~現在

34歳 群馬県出身

大学卒業後に某ブランド買取・販売店に就職。各種ブランド品を幅広く見ている中で、高級腕時計の虜に。
高い向上心から、専門性の高い知見を有していることでも著名な鑑定士 阿部・金子が在籍しているコミット銀座へ入社。10年以上の鑑定士キャリアを持ちながらも、時計に対する勤勉で真摯な姿勢は、多くのお客様の心を鷲掴みにし、指名して来店いただくことも多数。今後のコミット銀座を担うまさに中心人物。

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