みなさま、こんばんは!

機械式時計について技術者視点で語る本コラム。第6回となる今回は、

『【F.P.ジュルヌ】のどこがすごい?』

こちらをテーマにお話ししていきます。

※「サンティグラフ スヴラン」

近年、海外オークションにて超高額落札が相次いでいる最高級腕時計ブランド【F.P.ジュルヌ】。

天才時計技師フランソワ・ポール・ジュルヌによって創立された時計ブランドで、彼が持つ独創的な技術によって作り上げられる時計は、多くの著名人や時計愛好家たちに長年親しまれてきました。

ところで【F.P.ジュルヌ】のどこがそんなに評価されているのでしょうか?

これは彼の「時計技術者としてのクオリティに対する並々ならぬこだわり」にあると私は考えます。ということで今回は、【F.P.ジュルヌ】をあまり知らない、スルーしてしまっていたという方に向けて、評価されているポイントを分かりやすく紐解いてお伝えしていきたいと思います。これを見たうえで時計を見てみると、一味違って見えること間違いありませんので、ぜひ最後までご覧ください!

    【F.P.ジュルヌ】とは

    現代を代表する独立時計師の一人、フランソワ・ポール・ジュルヌ(1957年フランス生まれ)が1999年にスイスにて創業した新興ブランドで、その独創的なデザインにより近年高い注目を集めています。しかしながら、ケースやダイヤルは自社で製造しているということもあり、年間生産数は約900本程度とごく僅か。市場ではあまり見かけない希少価値の高いブランドとしても認知されています。

    また、独創的なデザイン以外にも型番(リファレンス)がない点は他の時計ブランドと一線を画しており、ブランドの哲学が織り込まれているのかもしれません。

    余談にはなりますが、表参道にある東京ブティックは世界で初めてのブティックであり、世界的な建築家、安藤忠雄氏デザインの建物に入っています。ジュルヌ氏自らがこの場所を気に入り、オープンさせたようです。

    ※表参道のコレッツィオーネビルにある「F.P.ジュルヌ」東京ブティック

    1.ムーブメントへのこだわり

    ※「サンティグラフ スヴラン」のムーブメント

    独創的なムーブメントを多数開発してきたことから、複雑機構で注目されることの多い【F.P.ジュルヌ】ですが、比較的シンプルなモノにおいても”美しさ”には強い拘りを持っており、その象徴が18Kゴールド素材を採用したムーブメント。2004年からはメインパーツ(地板や受けと呼ばれる大きな部品)にも18Kゴールドを採用しており、以降は全ての時計に18Kゴールドを使用しています。

    ※「クロノメーター ブルー」のムーブメント

    また美しさだけでなく、超高精度であることも知られている【F.P.ジュルヌ】のムーブメント。フランソワ・ポール・ジュルヌは独創性のある時計師として有名ですが、実は誰よりも時計の実用性に対する熱い想いを持っています。

    「高級な時計とは時を計る行為をどれだけ真摯に愛することができるか」

    彼は残したこの言葉から、精度、信頼性へのこだわりの強さを伺うことができ、技術者出身の私も、彼の姿勢には共感を覚えます。本来の”時を計る”機能の重要性が少々薄れつつある現代においても、そのポリシーを貫く精神には脱帽です。

    2.ケースへのこだわり

    ※「クロノメーター スヴラン」の薄型ケース

    “薄いケースこそエレガント”というケースに対する基本理念を持っており、最高のドレスウォッチであることを常に求めています。

    一般的に、腕時計のケースは薄くなればなるほど製造が難しくなり、その分コストが上がります。また、ケースを薄くするには当然ムーブメントも薄くしなければなりませんので、多くの時計メーカーはコストとの兼ね合いにより、ある程度の厚みをケースに持たせているのが実情です。

    しかしながら、【F.P.ジュルヌ】が追求しているのは何よりも”美しさ”。コストは度外視し、とにかくエレガントであることを求めているのです。

    ※「クロノメーター ブルー」

    ただ”美しい”だけでなく、耐久性や強度を重視していることも見逃せないポイントで、機構を極限までシンプルに設計することで、故障を減らしています。見た目だけ良くても、実用性が低い、故障が多いと、その時計の資産性は下がってしまう傾向があります。【F.P.ジュルヌ】は信頼性が高いので、その点も安心ですね。

    3.文字盤へのこだわり

    ※「ラインスポーツ オクタ スポーツ ARS 2」

    一番のこだわりポイントと言っても過言ではない文字盤バランス。通常薄型ケースのドレスウォッチはシンプルなデザインであることが多いですが、ジュルヌが追い求めるのは独創的な文字盤。シンプルなデザインは万人受けしますが、それではありきたりな時計になってしまいます。そこで緻密な研究を重ね、絶妙なバランス感で構築される文字盤デザインを確立し、視認性のみならず実用性も兼ね備えた時計製造に取り組んでいるのです。

    代表モデル

    1.クロノメーター スヴラン

    手巻き(Cal.1304)18KRG(ローズゴールド)ムーブメントを搭載した【F.P.ジュルヌ】の傑作とも称されている『クロノメーター スヴラン』。

    ツインバレルを採用し、高精度と約56時間のパワーリザーブを有しています。オフセンターに配置されたインデックスや細かいギョーシェ彫りを施した文字盤など【F.P.ジュルヌ】の魅力が凝縮されている逸品です。

    2.オクタ・ディヴィーヌ

    42mmサイズのために再考された『オクタ・ディヴィーヌ』。

    瞬間切り替え式の大型日付表示、ディスクでの秒表示とパワーリザーブ表示、ムーンフェイズ表示が配されたこちらは、【F.P.ジュルヌ】ならではのブルースチール針の美しさや、文字盤上にネジ留めされている研磨仕上げのスチール製の枠が魅力的な一本となっています。また、新たな表示方式を採用したスモールセコンド、独自のバランスで配置された数字も特徴的で魅力的なポイントですね。

    まとめ

    いかがでしたでしょうか。

    【F.P.ジュルヌ】は数々の画期的な機構を開発しており、ムーブメントの独創性に注目を集めることが多いブランドですが、実は”実用性”と”美しさ”という時計本来のあり方に強い想いを持っているブランドでもあります。また、世界中に多くの愛好家を持つブランドにしては生産数が少ないため、人とは違う高級腕時計をお探しの方にはピッタリではないでしょうか?

    本記事が皆さまにとって有益な情報となり、高級腕時計に対する興味が少しでも沸いたようであれば幸いでございます!またご不明点がございましたら、直接ご質問いただければお答えしますので、みなさま是非ご来店、お問い合わせをお待ちしております。

    次回もお楽しみに!ではまた!

    機械式時計徹底解剖