みなさま、こんばんは!
機械式時計について技術者視点で語る本コラム。第35回となる今回は、
『ヨットマスターⅡの使用方法について』
こちらをテーマにお話ししていきます。
ヨットレースに対応したプロフェッショナルモデルとして開発された、非常に贅沢な機構を持つ「ヨットマスターⅡ」。
世界初のレガッタ・クロノグラフ(カウントダウンタイマー)を搭載しており、後にも先にも同様の機構を搭載した時計は現れないのでは?と思わせるほどの特殊な使用方法がその魅力の一つとなっています。
そんなヨットマスターIIの操作方法ですが、所有されていても「正式な使い方は知らない」という方もいらっしゃるようですので、今回詳しくご説明していきたいと思います。
ヨットマスターⅡに興味がある方はぜひ参考にしてください!
ヨットマスターⅡとは?
販売期間:2007年~2024年
ムーブメント:Cal.4160(前期)、Cal.4161(後期)
特徴:世界初の機械式プログラムが可能なカウントダウンタイマー搭載クロノグラフ
初期は18KYG(イエローゴールド)、18KWG(ホワイトゴールド)の無垢モデルのみ展開されていましたが、のちにSS(ステンレススチール)&18KERG(エバーローズゴールド)のコンビモデル、オールSSモデルが追加されました。
カウントダウンタイマーの使用方法
ヨットレースのスタートにおいて重要な「残り何分か」を計測するために、カウントダウンタイマーが備えられています。
一見操作が複雑に思えますが、慣れてしまえば簡単に使用することができます。

A スタート/ストップのプッシュボタン
B リセットプッシュボタン
C カウントダウンの秒針
D カウントダウンの分針
E 90度回転するリングベゼル
【手順1】
リングベゼル(E)を反時計回りに90度回転させ、4時位置のリセットボタン(B)を押します。ベゼルを回転させたことにより、プッシュボタンは押された状態のまま保持されます。
【手順2】
リューズのロックを開放し、上方向に回してカウントダウン時間(分)を設定します。リューズを回すとカウントダウンの三角針(D)が動き、1分刻みで最大10分まで設定が可能です。
ヨットレースでは、5分・10分など事前に決められたカウントダウンがあり、正確に対応できるよう設計されています。この機能によって、参加、観戦するヨットレースに応じて、カウントダウンのスタート時間を変更することができるわけです。
なお、リューズはロックの開放だけで引く必要はありません。通常時に手巻きを行うポジションと同じです。
【手順3】
リューズをねじ込んで元の状態に戻し、ベゼルを時計回りに90度回転させて元の状態に戻します。 この際、押し込まれていたリセットボタンは自動的に戻ります。これでカウントダウンタイマーの設定は完了です。
【手順4】
スタート/ストップボタン(A)を押してクロノグラフ針を使って計測をスタートさせます。スタート/ストップボタンをもう一度押すとクロノグラフ針の計測ストップ。ストップした状態から計測を再開したい場合、もう一度同じボタンを押すことで再開されます。
リセットする際は、計測をストップしている状態でリセットボタン(B)を押すことで針がリセットされます。カウントダウン分針は、あらかじめ設定した時間に戻るという高度な機能を備えています。
シンクロナイゼーション機能の使用方法
シンクロナイゼーション機能はカウントダウン計測中にプッシュボタンを押すことで、クロノグラフ秒針を12時に戻し、放すとカウントダウンを再開させる機能のことです。
スタート準備の号砲に合わせてクロノグラフをスタートさせても、わずかなズレが発生してしまうことがありますよね。そんな時に2回目、3回目の号砲に合わせてこのシンクロナイゼーション機能を活用してズレを修正することができます。
カウントタイマーとも連動しており、クロノグラフ秒針が30秒を超えている場合はカウントダウン針が1分先に進み、超えていなければ1分前に戻る設計となっています。
まとめ
ヨットマスターIIは回転ベゼルとムーブメントを連動させることにより、レガッタクロノグラフ(カウントダウンタイマー)の機構を実現しています。この仕組みはスカイドゥエラーにも用いられており、特殊機能と視認性の両立に大きく役立っています。
このロレックスらしい特許技術あってこそのヨットマスターⅡの存在。ディスコンとなってしまいましたが、将来的に特別な価値を持つモデルとして評価される可能性も高いのではないかな?と個人的に思ってます。
本記事が皆さまにとって有益な情報となり、高級腕時計に対する興味が少しでも湧いたようであれば幸いでございます!また、ご不明点は直接ご質問いただければしっかりとお答えさせていただきますので、みなさま是非ご来店、お問い合わせをお待ちしております。
次回もお楽しみに!ではまた!