機械式時計を選ぶ際、皆さんはどこに注目されるでしょうか。

多くの方は"デザイン性"や"機能性"、"資産性"とお答えになると思います。もちろん見た目やリセールというのは非常に重要なポイントになりますが、ここにブランドやモデルの歴史的背景、年代毎のマイナーチェンジなど、知識や理解が増えることで、さらに時計が好きになり、選ぶ楽しみを味わえるのではないでしょうか。 本コラムでは、初心者、上級者を問わず、機械式時計に関する知識を一つでも多くお伝えし、皆さまの時計選びの参考となるよう徹底解剖、徹底解説してまいります。

今回は【ロレックス】『エクスプローラー』「Ref.1016(マットダイヤル)」にフォーカスを当ててお話ししていきますので、ぜひ最後までご覧ください。

【ロレックス】『エクスプローラー』「Ref.1016」

1953年に誕生し、シンプルな三針と高い堅牢性で“道具時計”の代表格として長く愛されてきました。中でも「Ref.1016」は約30年にわたって製造されたロングセラーモデルで、ダイヤルは前半のギルト(艶あり)から後半のマット(艶消し)へと移り変わります。
今回は、そのマットダイヤル期に焦点を当てて詳しく解説していきます!

 

基本スペック

製造年 : 1960年代前半〜1989年(本稿はマット期:1968年頃〜1990年前後を対象)
ケースサイズ : 36mm
ベゼル : スムースベゼル
風防 : プラスチック
防水性能 : 100m防水
ムーブメント : 「Cal.1560」→「Cal.1570(途中でハック機能付に移行)」

 

①ダイヤル

マットダイヤルは、年代ごとにフォントや王冠マーク、6時側表記の細部が変化します。

■1968〜1973年頃のダイヤル(通称:“フロッグフット”)

12時位置の特徴
・王冠マークが横に広がるフロッグフット。ROLEXロゴの“E”中央横棒はセリフが付かない。

覚えるポイント
・王冠マーク=フロッグフット。

補足(ファットフォント)


・通常より太いアラビア数字インデックスの文字盤が最初期に存在。
・最終ダイヤルにも稀に見られる“ファットルミナス”とも呼ばれる。

■ 1968〜1969年頃のダイヤル

12時位置の特徴
・バランスの取れたフォルムの王冠マーク/ROLEXロゴの“E”中央の横棒はセリフ付き。

6時位置の特徴
・“SWISS ‒ T < 25”表記は文字盤外周より少し内側の6時インデックス寄りにプリント。
・ミラーダイヤルの特徴を一部継承しており、王冠マークやレター、目盛りはすべて白プリント。

覚えるポイント
・移行期ならではの端正なレイアウト(王冠・“E”のセリフに注目)。

■1974〜1976年頃のダイヤル

12時位置の特徴
・ROLEXロゴがゴシック系からセンチュリー系の書体へ変わりモダンな印象。
・他の2行もセリフ付きフォントに。

6時位置の特徴
・クロノメーター表記は太字かつセリフ付きで、迫力のある印象。

覚えるポイント
・12時は全てセリフ付きフォント。
・最終と似ているが、この年代はトリチウム焼けが強く出やすい。
・※サービスダイヤルとしても使われていたとされる

■1976〜1979年頃のダイヤル(通称:“トールクラウン”)

12時位置の特徴
・ROLEXロゴはセンチュリー系フォント。
・最大の見分けは縦長の王冠マーク(トールクラウン)。

6時位置の特徴
・クロノメーター表記は王冠マーク同様に縦長フォントのニュアンス。

覚えるポイント
・縦長王冠マーク=トールクラウン。
・流通初期のわりに現存数が少ない希少ダイヤル。

■1981〜1985年頃のダイヤル

12時位置の特徴
・ROLEXロゴはやや太めのセンチュリー系フォント。
・王冠は手書き感のあるタッチ。

6時位置の特徴
・“SWISS”の文字間が詰まっている。

覚えるポイント
・ロゴ太め+手書き風の王冠が鍵。
・焼け(ヤケ)の入った個体が多く、サービスダイヤルに似ているため要注意。

■1986〜1990年頃のダイヤル

12時位置の特徴
・王冠マークと3行のレターはと酷似しており、見極めが難しい。

6時位置の特徴
・クロノメーター表記、SWISS表記ともに2型と同じ傾向。

覚えるポイント
・Ref.1016最終ダイヤルとして人気。
・夜光のヤケが少ない傾向があり、きれいめの個体が多いのがこの年代の特徴。

②ブレスレット

「Ref.1016」に装着されるブレスレットは、年代で以下のように推移します。ダイヤル期との整合を取ることで、当時仕様かサービス交換かの目安にもなります。


リベットブレス:〜1970年代初頭

巻きブレス:1970年代前半〜後半

ハードブレス:1970年代後半〜1980年代

※上記は目安です。実個体は出荷地域・サービス履歴で差異があり、ケースシリアル/クラスプコード/エンドリンクの組み合わせまで見て総合判断するのが安全です。

まとめ

『エクスプローラー』「Ref.1016」のマットダイヤル期は、フォント・王冠・6時表記が細かく変化し、見分けポイントがはっきりしているのが最大の魅力。
中でもフロッグフットやトールクラウンは個性が強く、コレクター心をくすぐっています。
一方で、サービスダイヤルの混在や、ブレスとの整合は評価を左右する重要要素。状態の良いオリジナル個体は年々希少になっているため、画像の細部比較と実機チェックを重ねて、納得の一本を早めに確保しておくのがオススメです。

これからも「Ref.1016」マット期の研究を続け、情報をアップデートしていきますので、ぜひ次回の記事もお楽しみに!

ではまた!

監修者のプロフィール

下川裕の写真

下川 裕(しもかわ ゆう)

高級腕時計専門店 コミット銀座 シニアアドバイザー / 鑑定士歴:2014年~現在

34歳 群馬県出身

大学卒業後に某ブランド買取・販売店に就職。各種ブランド品を幅広く見ている中で、高級腕時計の虜に。
高い向上心から、専門性の高い知見を有していることでも著名な鑑定士 阿部・金子が在籍しているコミット銀座へ入社。10年以上の鑑定士キャリアを持ちながらも、時計に対する勤勉で真摯な姿勢は、多くのお客様の心を鷲掴みにし、指名して来店いただくことも多数。今後のコミット銀座を担うまさに中心人物。

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