みなさま、こんばんは!
機械式時計について技術者視点で語る本コラム。第38回となる今回は、前回に引き続き
『高級時計市場とトレーディングカード市場の関連性について(後編)』
こちらをテーマにお話ししていきます。
前編では、双方の市場の共通点についてお話ししましたが、後編では相違点、コレクションを楽しむためのコツなどをお話ししていきたいと思います。
高級時計とトレーディングカード市場の相違点
1.時間軸
双方の市場は、資産価値の"時間軸"が異なります。
高級時計は長期的に価値を維持する傾向があり、数十年単位で安定資産として認識されやすいです。
一方、トレーディングカードは短期的な需要変動が大きく、価格の上下が激しいという特徴があります。
ただ、高級時計市場でも、一部のモデルや新作商品が短期的に大幅な価格上昇を起こし、その後急激に値を下げるような事例も過去に見られましたので、安定資産としての価値を重視する方は、高級時計の中でも価値が確立されているヴィンテージ、セミヴィンテージモデルを選ばれることをおすすめします。
2.ユーザー層
高級時計は基本的に富裕層や社会的地位を意識する方々が中心であるのに対し、トレーディングカードは若年層から幅広い一般層まで裾野が広いです。
文化的にも、時計はステータスや実用性を伴う一方で、カードは遊戯性・コミュニティ性に根ざしています。
この違いは、そのまま市場の"安定性"と"ボラティリティ"の差に現れていると言えるでしょう。
株式市場に例えると、高級時計は長期保有することがお勧めの"安定銘柄"、"数十年の歴史を持つ大企業"といったところでしょうか。それに対してトレーディングカードは、大幅な上昇の可能性があるが大暴落のリスクも伴う"上場したてのメガベンチャー"に当たると思います。
共通点として唯一言えるのは"男性ファンが圧倒的に多い"ということ。時計店やカードショップを覗いてみると、お客様は男性ばかり。
「スマホで事足りるのに、時計に数百万もかけるなんて・・・」「ゲーム用のカードに、何万円も払うなんてありえない・・・」こんな嘆きの声が女性から聞こえてくる、むしろ実際に言われたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
デイトナ=ピカチュウ?
時計やカードのコレクションを進めるにあたって、何かテーマを決めて収集すると、さらに楽しみが増すと思いませんか?例えば特定のモデルに絞って集めたり、ある年代のカードに絞って買い集めたり。
ここで一つ、具体例を見てみましょう。ロレックス『デイトナ』とポケモンカード『ピカチュウ』です。
どちらも市場で高い人気を誇る、ロレックスとポケモン。その中でも「ブランドの顔」と言っても過言ではない二者は、熱狂的なファンが多いことで知られており、それ専門に集めているコレクターがいるほどです。
デイトナであること、ピカチュウであることだけで、それほどレアではないモデルやカードでも高額で取引されるという共通点があり、さらに「手巻きデイトナ ポールニューマンダイヤル」「ピカチュウ イラストレーター」といったレアで高い人気を誇るモノに関しては、良好な状態であれば数千万~数億円の価格が付くことがあります。
価格の決め手となるのは、どちらも"希少性"、"状態"、そして"鑑定(オリジナル性)"です。つまり評価の軸は非常に似通っており、このレベルになると顧客も一部の富裕層に限られるという点も共通ですね。
異なるのは、その価格変動のスピード。デイトナはじわじわと数十年かけて価値を高めてきたのに対し、ピカチュウはSNSやオークションの影響で、ここ数年の短期間に急騰しました。ここに市場毎の違いが表れていますね。
こちらは、一部でニックネーム「ピカチュウ」と呼ばれるRef.116518LN
まとめー"コレクション投資"という新しい視点
高級時計とトレーディングカードは、全く異なる文化から生まれながらも、希少性・鑑定性・二次流通市場の存在という共通項によって"コレクション投資"という新しい括りの中で語られるようになっています。
高級時計は長期的な資産保全とステータスの象徴、トレーディングカードは短期的なリターンとコミュニティ性。どちらも人々の"所有欲"や"特別感"を満たす存在です。
これからの時代、投資や趣味の選択肢はますます多様化していくでしょう。株式や不動産と並んで『デイトナ』や『ピカチュウ』が同じ土俵で語られる。そんなユニークな光景は、もうすぐやってくるのかもしれません。
本記事が皆さまにとって有益な情報となり、高級腕時計に対する興味が少しでも湧いたようであれば幸いでございます!また、ご不明点は直接ご質問いただければしっかりとお答えさせていただきますので、みなさま是非ご来店、お問い合わせをお待ちしております。
次回もお楽しみに!ではまた!