みなさま、こんばんは!

 

機械式時計について技術者視点で語る本コラム。第13回となる今回は、

 

『セミヴィンテージロレックスの仕様の違いと価格差について』

 

こちらをテーマにお話ししていきます。

 

 

【ロレックス】はリファレンスナンバー(型番)が同一のモデルであっても、年式、仕様等の違いによって価値が大きく変わります。 

今回は、特に"セミヴィンテージ"と呼ばれる5桁品番のスポーツロレックスに焦点を当て、バックル・夜光塗料・刻印など、その個体の価値に大きな影響を与えるポイントについてお話していきたいと思います。ぜひ最後までご覧ください。

  

 

①バックルの仕様(シングルロック、ダブルロック)

 

1995年頃まで採用されていたシンプルな設計のバックル仕様である"シングルロック"。

堅牢性ではダブルバックルに劣りますが、シンプルなデザイン性から近年は再評価されており、現在ではダブルバックルよりもシングルバックルの方が価値が高いという逆転現象が起こっています。

 

 

ブレスレット留め金の構造がシングルロックよりも強固になっており、不意にバックルが開いてしまうことのない、安心感のある構造の"ダブルロック"。

スポーツモデルにのみ見受けられるバックルになりますね。製造コストや性能で考えると明らかにシングルバックルよりもダブルバックルの方が高いですが、"稀少価値"という点で見ると、シングルバックルに軍配が上がります。

デザインや機能性で考えても"ダブルロック"の方が好みという方ももちろん多数いらっしゃると思いますので、そのような方にとっては狙い目なのかもしれませんね。

 

 

②夜光塗料の違い(トリチウム、ルミノバ)

 

1998年頃まで、夜光塗料として採用されていたトリチウム。

"放射性物質"であることから時計への使用が全面的に禁止され、現行モデルには存在しない夜光塗料になります。トリチウムは経年変色するという特徴があり、綺麗に焼けたトリチウムはルミノバを凌駕する程の高い評価を得ています。

 

 

また、メーカーにメンテナンスを依頼する場合、劣化の見られるトリチウム夜光の部品は交換が必須となり、年々オリジナルパーツが維持されている個体が減少しています。そのため、良いコンディションを保ちつつ、雰囲気抜群の経年変化がみられるトリチウム夜光は希少になりつつあるのです。

 

 

一方で、ルミノバは経年劣化がほぼなく、トリチウムなどの自発光塗料と異なり、半永久的に使用可能で、更には従来の発光塗料より明るく、従来の蛍光塗料より発光時間も長くなっているため、実用性を求めるユーザーにとってはルミノバが最適でしょう。

このルミノバ、実は「根本特殊化学株式会社」という日本企業が開発したということをご存じでしょうか。根本の「N」を取った「N夜光」という文言も商標登録されていますので、同じ日本人として誇らしい限りですね。

2000年には時計産業によるシェア率100%を占め、時計の夜光塗料=ルミノバという価値観が、いまなお定着しています。

 

 

③ラグの横穴あり、なし

 

以前の【ロレックス】では、バネ棒を通す穴がラグを貫通していましたが(ケースとブレスレットを繋ぐモノ)、1990年代後半からこの穴が見えないような仕様へと徐々に変更されていきます。4桁品番の【ヴィンテージロレックス】を彷彿とさせる、レトロな魅力あふれるディテールですね。

 

 

画像の『エクスプローラー』「Ref.14270」に関して言えば、シングルバックル・トリチウム夜光・横穴ありケースの3点を備えた"初期仕様"の個体の人気が特に高く、相場が高騰しています。

ただ何でも"初期仕様"が高いという訳ではなく、『GMTマスターⅡ』「Ref.16710」で見てみると、後期型のダブルバックル・ルミノバ夜光・横穴なしケースの相場が初期個体と同等、もしくはそれを上回ることもあり、一概に初期仕様の相場が高いわけではないのが面白いところです。

仕様変更のタイミング、モデルチェンジのタイミングによる流通量の差、単純に見た目がカッコいいかどうか等のポイントを総合的に鑑みて評価が決まっていくのです。もちろん、最終的には個体のコンディションが価格に大きな影響を与えるということは間違いありません。

 

 

④ルーレット刻印の有無

 

【ロレックス】にはケース内側一周に”ROLEX”と刻まれたルーレット刻印がある個体とない個体が存在します。

 

 

これは2004年頃から登場したモノで、現在ではどのモデルにおいても採用されている定番の仕様となりました。ちなみに、同じコンディションのモデルで刻印があるものと無いものでは、"刻印あり"の方が価値が高い傾向にあります。

 

 

まとめ

いかがでしたでしょうか。 

【ロレックス】の同じモデルでも個体によって価格差が生まれるその理由には、製造された年代特有の仕様が大きく関わっているのです。

現在は、ヴィンテージ感漂う"初期仕様"、現行モデルに近くラグジュアリー感が強い”後期仕様"の2つに人気が分かれている印象ですが、もちろん最後は、皆様個々人の好み、ご予算、そして直感でお選びいただければと思います!

本記事が皆さまにとって有益な情報となり、高級腕時計に対する興味が少しでも沸いたようであれば幸いでございます!また、ご不明点は直接ご質問いただければしっかりとお答えさせていただきますので、みなさま是非ご来店、お問い合わせをお待ちしております。

次回もお楽しみに!ではまた!

機械式時計徹底解剖