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*画像引用元:Audemars Piguet 公式

この記事は、オーデマ ピゲ(AP)の魅力を分かりやすい言葉でまとめました。専門用語には 用語ヒント を付け加えています。

目次

まずは3行まとめ

  • APの価値=“希少性”:独立経営×ロイヤルオークのデザインと資産性×RD#の語れる技術
  • 販促手法DTCダイレクト・トゥ・コンシューマー×AP Houseで体験を高めつつ、供給をコントロールすることで価値とブランドを担保。
  • 相場の読み方:ロイヤルオーク ジャンボ エクストラシンは“不動の人気”、ロイヤルオークは“安定性抜群”。

ブランドの物語(歴史・独立・“聖三位一体”)

オーデマ・ピゲは1875年、スイスの山峡ヴァレ・ド・ジュール・ブラッシュで創業。創業者はジュール=ルイ・オーデマエドワール=オーギュスト・ピゲ。彼らは「量より質」を掲げ、複雑機構の開発と小規模生産を続けてきました。企業グループに属さない独立メゾンであり、意思決定を長期目線で行えるのが強みです。

高級時計の世界では、パテック・フィリップヴァシュロン・コンスタンタンと並ぶ“聖三位一体世界三大時計ブランド”の一角。これは「価格が高いから」ではなく、歴史・技術・仕上げ・顧客体験を総合的に積み上げてきた結果としての評価です。

関連トピック:APの“記録と証拠の積み上げ”
  • 1892年: 腕時計用ミニッツリピーターの先駆け制作に関与。
  • 1934年: スケルトンウォッチの発表。
  • 1972年: ロイヤルオークで「ラグジュアリー=金無垢」の常識を覆す。
  • 現代: RD#で音・薄さ・超複雑を前進。”2015年以降、オーデマ・ピゲの研究&開発(RD)シリーズは、技術革新とタイムレスなデザインを融合させた、時計製造における革新的な進歩を体現してきました。”

ロイヤルオークの“デザイン”(形・質感・物語)

① オクタゴンベゼルと“ビス”

ロイヤルオークの顔は、八角形のベゼル表側に見えるビス(ネジ)です。これは単なる装飾ではなく、機能とデザインが一体になった発想。ビスの向きがきれいに揃っているのは、設計と仕上げの精度を物語ります。

②一体型ブレスレット

ケースとブレスレットを別々のパーツと捉えるのではなく、最初から一体でデザイン。コマの面取り(角の磨き)やヘアラインの方向がそろっていると光の走り方が端正に見えます。仕上げの“線のキレ”がロイヤルオークの魅力。

③ “タペストリー”ダイヤル

ダイヤルの四角い凹凸は通称タペストリー(ギョーシェの一種)。微細な彫りが光を受けて表情を変えます。モデルによっては「プチ(小)」「グランド(大)」「メガ(さらに大)」とパターンのスケールが異なり、印象がガラッと変わります。

④ “Jumbo 16202”とは?

Jumbo39mmサイズで初代の意匠を受け継ぐ最もクラシックなモデル。16202は2022年の50周年で登場し、外観は継承しつつムーブメントを自社製キャリバーに世代交代。見た目は伝統、心臓は最新というバランスが支持されています。

用語ミニ解説:ヘアライン/面の立ち/鏡面
  • ヘアライン: 表面にまっすぐ入った細かい筋目。方向がそろうと上質に見える。
  • 面の立ち: エッジ(角)がシャープに立っている状態。磨き過ぎると“角が寝る”。
  • 鏡面: ピカッと映り込む磨き面。ヘアラインとの切り替えが美しいと高級感が出る。

APの技術をやさしく理解(音・薄さ・超複雑)

Supersonnerie(RD#1)— “鳴り”が違うミニッツリピーター

ミニッツリピーターは“音の芸術”。APはケース構造を工夫して、時計を装着していても大きく澄んだ音を実現。ケース自体を楽器のように響かせる発想です。

超薄型 永久カレンダー(RD#2)— “薄いのにタフ”への挑戦

永久カレンダーは複雑機構ゆえ部品点数が多く厚くなりがち。RD#2は機構の配置を工夫してムーブ自体を極薄に。薄型=壊れやすいイメージを超えて、日常使用に耐える剛性も両立しています。

Universelle(RD#4)— “使える超複雑”という答え

たくさんの機能を積めば良いわけではありません。APは操作性と視認性まで設計し、ユーザーが使いこなせる超複雑を目指しています。ハイエンドこそUI/UX(ユーザーインターフェース・ユーザーエクスペリエンスが重要、という考え方です。

AP Houseと“作り過ぎない”戦略(価値を守る仕組み)

APは直営拠点AP Houseを各都市に展開。ここは“売る場所”というより、ブランドを体験するサロン。丁寧な接客とアフターサービス、限定モデルの提案など、長いお付き合いを前提にした特別な場所です。

同時にAPは生産本数を増やしすぎない方針を堅持。需給が崩れにくいので、二次市場でも価値が守られやすい構造です。

代表6モデルの相場と直近3年のトレンド

数字を見るときは、中古推定=いまの中心値ディーラー掲載=交渉前の希望価格オークション=一点勝負の結果という“土俵の違い”を意識しましょう。売却中央値(日数)は回転の良さ、ボラティリティは変動の度合いを示します。

Ref. モデル 中古推定(USD) 1年騰落 ディーラー掲載 直近オークション例 売却中央値 ボラ
15550ST RO Selfwinding 37 $40,609 +3.5% $49k–$60k 93日 11.6%
16202ST RO Jumbo 39 $68,133 -5.8% $69k–$86k CHF 113,400(2022) 100日 9.4%
26240ST RO Chronograph 41 $49,918 -1.2% $60k–$76k 43日 10.7%
26331ST RO Chronograph 41(先代) $39,564 +1.1% $34k–$100k $33,990(2025) 34日 5.3%
26586IP RO QP Ultra-Thin $159,409 -15.5% $175k–$188k $239k(2022)〜CHF 138.6k(2024) 73.5日 15.3%
26591TI RO Minute Repeater $280k–$473k $330.2k(2025)

モデル別の“性格”をひとことで

  • 16202(Jumbo): 高位安定。勝敗は個体差(外装仕上げの有無、付属品)で決まる。
  • 26240(現行クロノ): 安定性〇。ダイヤルカラーで人気に差。
  • 26331(先代クロノ): ボラティリティ低めで扱いやすい。良個体は底堅い。
  • 15550(37mm): 実需層が厚い。ダイヤルカラーと年式で差。
  • 26586/26591(ハイコンプリケーション): チャネル次第で値が大きく動く。
数字の“落とし穴”と回避法
  • 掲載価格=成約価格ではない: 掲示は交渉前。成約(実勢相場)は数%〜十数%下がることも。
  • オークションは一点勝負: 写真・個体差・タイミングで大きく振れる。価格は平均化しない傾向。
  • 中古推定は“いまの中央値”: 外れ値は除外されがち。状態の良くない個体、付属欠品個体は低評価。

地域(日本/香港/米国/中東)で何が違う?

地域差は「為替」「旅行需要」「税制」「在庫の回り方」で生じます。同じ銘柄でも場所を変えれば温度感が違う—この発想が大事。

地域 いまの雰囲気 特徴 コツ
日本 やや強い 円安×インバウンド。説明力ある個体が強い ドル建て基準で入口/出口を固定
香港/中国 弱め〜中立 買い手優位。選別がシビア 良個体はスピード決裁で先取り
米国 振れ幅大 政策・イベント・関税で需給が動く 在庫サイクルを短く、イベント前は軽く
中東(UAE) 高額帯が強い CPO&委託の受け皿が厚い ハイコンプはチャネル最適化

どのチャネルで買う?(店/CPO/オークション)

媒体 価格の傾向 良いところ 注意点 相性の良いモデル
オークション 上下幅が広い 希少・由来強い個体は上抜け 一点勝負。手数料・時間・写真勝負 26591/限定/初出し
ディーラー掲載 やや高め(交渉前) 露出×回転 導線づくり(問い合わせ→商談→決裁)が鍵 15550/26240/26331
CPO(認定中古) 高め(安心料込み) 整備・保証の透明性 下取り差額・マージン管理が必要 16202の極上個体
CPO: メーカーや大手が“認定”した中古。価格は上がるが、安心が上乗せされています。

買う前チェック10箇条&売る前チェック7箇条(コピペOK)

買う前チェック(10)

  • 付属: 箱・保証書・コマ・冊子・タグ。
  • 出自: どこで買われたか(直営/正規/並行)。履歴の紙・メール・請求書。
  • 外装: ポリッシュの有無、キズの確認。
  • ブレス: 伸び・ガタつき・バックルの噛み合わせ。
  • 針・カレンダー: ずれ・引っかかりがないか。
  • 夜光: ムラや色焼け。
  • 日差: 実測(タイムグラファーで確認)。
  • 防水: 表示の確認。古い個体は過信しない。
  • サイズ感: 37/39/41の着け比べ。袖口や手首の骨格に合うか。
  • 売却想定: 手放すときの想定レンジ(店/CPO/オークション)を先に把握。

売る前チェック(7)

  • 現状写真: 概算査定をより正確にするために傷も含めて撮影。
  • 状態コメント: 研磨の有無など。
  • 履歴まとめ: いつ・どこで・いくら・整備歴。
  • チャネル選択: 店頭/委託/CPO/オークション。
  • タイミング: 為替・イベント前後で相見積もり。
  • 最低ライン: 税・手数料込みで手取りを確認。
  • セキュリティ: 発送・来店時の安全(配送保険)。

価格が動く理由(為替・金利・季節・写真)

時計の価格は、モノの良し悪しだけでなく、外部環境でも動きます。ざっくり以下を意識すると判断がブレにくいです。

  • 為替: 円安→海外需要が流入。円高→国内売りは慎重に。
  • 金利: 低金利→追い風/高金利→現金志向で沈静化。
  • 金相場: 無垢の一次価格に波及。SSへの回帰が起きることも。
  • 季節性: ボーナス/年末(ギフト・オークション等)で動意づく。
  • 写真: 写真が良ければ問い合わせ数=価格に反映されることも。事後トラブルを防ぐため、ありのままの状態を撮影することも重要。

日常ケアとオーバーホール(OH)の基礎

ロイヤルオークはベゼルとケース、ブレスの状態が命。汚れは柔らかいクロスでふき取り、汗・粉塵はシャワーで軽く流してから完全に乾かしましょう。

  • 非推奨: 研磨剤入りクロス・強い超音波・むやみな研磨依頼。
  • OH目安: 3〜5年(使用頻度・個体差あり)。純正OHは費用高めだが価値と安心に直結。
  • 防水: 古い個体は過信せず、雨や手洗いでの水濡れに注意。

ミニ用語集(サッと復習)

用語 意味(超ざっくり)
タペストリー ロイヤルオークの格子状ダイヤル仕上げ(ギョーシェの一種)
ヘアライン 金属表面の細い筋目。方向がそろうと上質
面の立ち エッジがシャープで角が寝ていない状態
ミニッツリピーター 内部のハンマーとゴングで時刻を“音”で知らせる機構
永久カレンダー(QP) うるう年まで自動調整する高級カレンダー
Jumbo ロイヤルオークの39mmクラシックサイズの愛称
ボラ ボラティリティ。値動きの振れ幅
売却中央値 売れるまでの期間の“真ん中”。小さいほど回転が良い
CPO 認定中古。整備・保証がセットで“安心料”が上乗せ

よくある質問

Q1. 初めてのAP、16202と15550どっち?

A. 16202は“原型に忠実”な39mmで資産性も高い分、個体選びがシビア。15550は37mmで使いやすく、実需の厚さが魅力。手首回りが細めなら15550、歴史の“ど真ん中”が欲しいなら16202。

Q2. 26240と26331の違いは?

A. 26240は現行で回転良好、デザイン微修正・ムーブ更新の恩恵。26331は先代でボラ低め・価格も抑えやすい。回転重視→26240安定とコスパ→26331が目安。

Q3. ハイコンプ(26586/26591)は怖い?

A. チャネル選びがすべて。直営/CPO/委託/オークションのうち、一番強い土俵を探すことが肝要。売却時も同様。

Q4. メンテの頻度は?

A. 目安は3〜5年。防水パッキンは劣化するので、古い個体は水に注意。純正OHは費用高めでも価値の保全に効く。

参考リンク&次のアクション

※本文の数値は記事作成時点の目安です。為替・在庫・個体状態で前後します。実売は“土俵(チャネル)”で大きく変わります。

監修者のプロフィール

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コミット銀座

2015年の会社設立以来、"高く買い、安く売る"をモットーに、顧客第一主義を徹底。価格面におけるメリットのみならず、お客様が安心して買い物出来る環境づくり、お客様に最適な時計の提案も実現。
徐々にお客様からの信頼も得て、多くの顧客様を抱えることに成功。高い知識を要するヴィンテージロレックスや、パテックフィリップを始めとするハイエンド商材の取り扱いを得意とする、新進気鋭の高級腕時計専門店。

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