みなさま、こんばんは!
機械式時計について技術者視点で語る本コラム。第39回となる今回は、
『ブレスレット駒の構造~メーカー毎の特徴』
こちらをテーマにお話ししていきます。
高級時計を愛用するうえで重要になるのが、着け心地。せっかくのお気に入り時計も、「腕に着けてみるとなんだかしっくりこない」とテンションが下がってしまい、出番が減ってしまいますよね。
また、同じ時計でも季節や体調によって着け心地というのは変化します。そんな時、専門店に調整を依頼するより自分でやってみたい!と思ったことはありませんか?
自分で作業するには、お持ちの時計のコマの構造を知ることが不可欠です。そこで今回は、各高級時計メーカーのブレスレット駒の構造について、詳しくお話していこうと思います。
各メーカーのブレスレット構造
1.パテックフィリップ(ピン式)
高級腕時計を代表するパテックフィリップのブレスレットは、以前はネジ式が多く、現在は多くのモデルがピン式に変更されています。
ピン式は、ネジを使用せず、ピンとチューブの「食いつき」によってコマを固定します。調整時は、細いピンをハンマーでたたき抜く、もしくは専用工具を使用してピンを押し抜きます。
このピン式の調整方法は、比較的安価な時計にもよく採用されているため、個人的にはネジ式よりも"安っぽい"イメージを持っていましたが、世界最高峰と誰もが認めるパテックフィリップがネジ式からピン式に調整方法を変更したというのは、個人的に衝撃的なニュースでした。
ただ、ネジ式からピン式になぜ変更されたのか、、、その理由については残念ながら確認できませんでした。どなたかご存じでしたら是非とも教えてください!
2.オーデマピゲ(ネジ+ピン式)
代表モデル『ロイヤルオーク』の人気が衰え知らずなオーデマピゲ。特に外装部品の仕上げの美しさに定評がある、世界三大高級時計ブランドの一つです。
そんなオーデマピゲのブレスレット調整は「ネジ+ピン」のハイブリッド方式。コマを支えるのはピン、そしてピンが抜け落ちないように蓋の役割をする短いネジがコマ側面に取り付けられます。
この方式のメリットは、使用している途中でネジやピンが緩んでしまうリスクが非常に低いことです。
コマとコマをつなぎ合わせる役割をピンに任せ、ネジはそれをサポートすることに徹するため、着用時に発生する回転エネルギーをうまく逃がすことができます。
弱点としては、使用されるネジが非常に小さいため、作業中に紛失してしまうリスクがあります。ご自身で調整される際は、ネジを飛ばしてしまわないようご注意ください。
3.ヴァシュロンコンスタンタン(特殊なネジ式)
ヴァシュロンコンスタンタンは、以前のモデルにはシンプルなネジ式が採用されていることが多かった印象ですが、現行オーヴァーシーズに採用されているのは、緩みリスクを低くするための「特殊なコマネジ」です。
ネジ底に近いところにらせん状のネジ溝があり、その先のピン部分は、連結されているものの一緒に回転しないような構造になっています。
なぜこんな構造になっているかと言うと、オーデマピゲと同じく「着用時の緩みリスク」を低くするためなのです。
考え方としてはオーデマピゲとほぼ同じですが、技術者目線でみると、こちらのヴァシュロンコンスタンタン方式の方が、パーツがつながっている分、調整時に小さなネジを紛失してしまう可能性が低く、良くできているなー!と感心してしまいます。
4.ロレックス(シンプルなネジ式)
最後は、みんな大好きロレックス。
質実剛健なイメージ通り、ロレックスのコマ調整は以前から"シンプルなネジ式"です。耐久性を考えるとシンプルな構造が一番で、着用時の緩みリスクは、ネジ道に緩み止めを塗布すれば回避できるという考えですね。
そんなロレックスのコマ構造、基本は数十年変わっていませんが、貴金属系のモデルには摩耗防止のためのセラミックチューブが採用されたりと、時代に合わせてアップデートが行われています。調整のしやすさで見ると、今も昔もロレックスが一番ですね。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
デザインに限らず、ブレスレットの調整方法という細かいところにも、メーカー毎の特徴、考えが現れていて面白いですよね。こういった違いから、好みの腕時計を探していくのもマニアックな視点で素晴らしいと思います。
本記事が皆さまにとって有益な情報となり、高級腕時計に対する興味が少しでも湧いたようであれば幸いでございます!また、ご不明点は直接ご質問いただければしっかりとお答えさせていただきますので、みなさま是非ご来店、お問い合わせをお待ちしております。
次回もお楽しみに!ではまた!