香港屈指のスラム街「九龍城砦」に暮らす人情味豊かなアウトローたちと、九龍城砦を我が物にしようとする香港マフィアの戦いを描いたアクション大作『トワイライト・ウォリアーズ 決戦! 九龍城砦』(2024)。昨年公開された香港では歴代映画No.1の興収を稼ぎ出し、2025年1月17日より公開が始まった日本でも、映画館「新宿バルト9」は連日満席、パンフレットが売り切れてプレミア化するなど、香港映画ファンの間で大きな話題となっています。
本作の主役、九龍城砦のトップに立つ最強の理髪店主「ロンギュンフォン」を演じるのは、香港映画界の重鎮、ルイス・クー。モデル出身の色気を漂わせたルックスを武器に1990年代から俳優として活動を始め、2000年代に入ると香港映画の巨匠、ジョニー・トー監督の作品に立て続けに主演。香港では知らぬ者のいない、押しも押されぬ国民的スターへと昇りつめます。
映画やテレビなどで活躍する映画人の腕時計にフォーカスする「Actor’s Watch」。第209弾の今回は、そんなルイス・クーが着用した腕時計をご紹介して参ります。
ショパール
アルパイン イーグル【Ref.298600-3022】
『トワイライト・ウォリアーズ 決戦! 九龍城砦』のお披露目上映が行われた、2024年5月のカンヌ映画祭。そのプレミアに登場したルイス・クーが着用していた腕時計は、ショパール アルパインイーグル(Ref.298600-3022)でした。シックなタキシードの袖口から覗くピンクの文字盤が、少しコワモテなルイス・クーを柔らかな印象にしてくれています。
映画の中では、最強のアウトローにして九龍城砦のボスでありながら、住人の皆から信頼され、愛される理髪店のオヤジを演じたルイス・クー。そういうギャップのあるキャラクターをこのキュートな腕時計で表現したのかもしれません。
パネライ
ラジオミール オット ジョルニ【Ref.PAM01348】
続いては、パネライが製作した2023年新作のプロモーション動画に登場したルイス・クー。彼が動画の中で着用したのは、パネライ ラジオミール オット ジョルニ(Ref.PAM01348)でした。
リサイクル素材で作られたパネライ独自の「eスティール」にブラックDLCコーティングを施した後、パーツのひとつひとつを手作業で研磨。それによって下地のeスティールが顔を覗かせ、一本一本が異なる表情を見せるという、ヴィンテージ感とエイジングが表現されたモデルです。
そして、この腕時計をルイス・クーが着用すると、同じ人間が役柄に応じて全く違う人物を表現する「俳優」という仕事との共通点を感じさせる一本のようにも思えてきます。
ジェイコブ&Co.
ブガッティ シロン トゥールビヨン【Ref.BU200.40.AA.AA.B】
最後は、2024年1月に香港に初出店した「ジェイコブ&Co.」のオープニングイベントから。
香港のペニンシュラホテル内にオープンした「ジェイコブ&Co.」のブティックに招待されたルイス・クー。ブランド創設者のジェイコブ・アラボ(右)と並んでカメラに収まった彼がこの時に着用していた腕時計は、ジェイコブ&Co. ブガッティ シロン トゥールビヨン(Ref.BU200.40.AA.AA.B)と思われます。
レーシングドライバー、ルイ・シロンの名を冠したスーパーカー「ブガッティ シロン」とのコラボレーションとなる超絶ウォッチ。文字盤のW型16気筒エンジンのクランクを模した機構がピストン運動を行ったり、パワーリザーブを燃料計で表示するなど、高級車好きには堪らない仕様となっています。
ちなみにこの腕時計の定価は約6千万円となっております。このような超高級腕時計のプロモーションをオファーされるルイス・クー。彼のスター俳優としてのステータスの高さがよくわかる一本です。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
コロナ禍が落ち着いた時期に私が香港を訪れた際、食料品、医療品、自動車、金融など、多くの企業の広告にルイス・クーが起用されているのを目にして、その人気の高さに驚いた記憶があります。高級時計業界も彼の人気には逆らえないのでしょう。毎年のように複数のブランドが彼をプロモーションに起用している為、バラエティに富んだラインアップになりました。
香港映画界のトップスターであるルイス・クーですが、実は重度のオタクとしても知られており、来日すると仮面ライダーのフィギュアを求めてオモチャ屋をハシゴしたり、主演作『ダブル・サスペクト 疑惑の潜入捜査官』(2016)では「キカイダー」のオモチャを小道具にするなど、その「特撮愛」は筋金入り。
そのスピリットが存分に発揮された作品が、ルイス・クーが製作・主演を務めたSF大作『未来戦記』(2022)。彼がパワードスーツを着て宇宙からやってきたクリーチャーと戦うこの作品は、香港での公開と同時に大ヒットを記録し、コロナ禍で冷え込んだ香港映画界の復興を象徴する作品となりました。
中国返還以降、一時期は力を失ったようにも見えた香港映画ですが、『未来戦記』や『トワイライト・ウォリアーズ 決戦! 九龍城砦』を見る限り、そのパワーは戻ってきています。ルイス・クーが香港映画の復活を主導・牽引している存在の一人であることは間違いありません。映画ファンは彼の作品を絶対にお見逃しなく!
ではまた!