機械式時計を選ぶ際、皆さんはどこに注目されるでしょうか。
多くの方は"デザイン性"や"機能性"、"資産性"とお答えになると思います。もちろん見た目やリセールというのは非常に重要なポイントになりますが、ここにブランドやモデルの歴史的背景、年代毎のマイナーチェンジなど、知識や理解が増えることで、さらに時計が好きになり、選ぶ楽しみを味わえるのではないでしょうか。 本コラムでは、初心者、上級者を問わず、機械式時計に関する知識を一つでも多くお伝えし、皆さまの時計選びの参考となるよう徹底解剖、徹底解説してまいります。
今回は【ロレックス】『サブマリーナー』「Ref.1680/8、16808、16618」にフォーカスを当ててお話ししていきますので、ぜひ最後までご覧ください。
モデルの概要
『サブマリーナー』の金無垢モデルとして登場した「Ref.1680/8」。その後、風防のサファイアクリスタル化やムーブメントの進化を経て「Ref.16808」、「Ref.16618」と世代交代をしながら、『サブマリーナー』におけるラグジュアリースポーツの象徴としてその存在感を高めてきました。
『サブマリーナー』の中でも特に「高級感」「華やかさ」を求めるファンに愛されるこちらの系譜。今回はその魅力を、世代ごとに詳しく解説していきます。
第一世代サブマリーナーデイト Ref.1680/8
基本スペック
製造年:1969年〜1979年頃
ケース:40mm
ベゼル:両方向回転式
風防:プラスチック
防水:200m防水
ブレスレット:リベットブレス、ハードブレス
ムーブメント:Cal.1570
振動数:19,800振動
第二世代サブマリーナーデイト Ref.16808
基本スペック
製造年:1979年〜1988年頃
ケース:40mm
ベゼル:両方向回転式
風防:サファイアクリスタル
防水:300m防水
ブレスレット:ハードブレス
ムーブメント:Cal.3035
振動数:28,800振動
第三世代サブマリーナーデイト Ref.16618
基本スペック
製造年:1989年〜2008年頃
ケース:40mm
ベゼル:逆回転防止式
風防:サファイアクリスタル
防水:300m防水
ブレスレット:ハードブレス
ムーブメント:Cal.3135
振動数:28,800振動
①ダイヤル
「Ref.1680/8」
『サブマリーナー』として初めて登場した18Kイエローゴールド製モデルであり、同時にフジツボ(ニップル)インデックスと呼ばれる立体感のあるインデックスが採用されていることが大きな特徴です。
◯ フジツボ(ニップル)インデックス(ブラック / ブルー)
このフジツボ(ニップル)は、ゴールドの枠にトリチウムが盛られた夜光面積が小さいインデックスで、夜光の焼けや経年変化によって、個体ごとに異なる表情を楽しめるのが魅力です。
中でもブルーダイヤルは経年変化により紫がかった「ヴァイオレット」やブラウン変化した「トロピカルダイヤル」と言った個体も存在し、非常に高額で取引される傾向にあります。
◯ 夜光: T SWISS T(トリチウム)
6時位置には「T SWISS T」表記があり、トリチウム夜光であることを示しています。トリチウム夜光は自発光型ですが、すでに半減期(約12年)を大きく超えており、現在は光らない個体が大半ですが、経年変化によって針やインデックスの夜光部分がクリーム色〜ブラウン色に焼けた“パティーナ”を形成している個体も多く、ヴィンテージファンからの評価が非常に高いです。
「Ref.16808」
風防がプラスチックからサファイアクリスタルへ、ムーブメントが「Cal.3035」へと大きな進化を遂げたモデル。ダイヤル面でも過渡期らしい複数のバリエーションが存在します。
◯ 初期:フジツボ(ニップル)インデックス(ブラック / ブルー)
前モデル「Ref.1680/8」を引き継ぎ、初期個体はフジツボ(ニップル)インデックスが採用されています。ただし風防がサファイアクリスタルになったことで視認性が高まり、インデックスや文字盤の光沢感もよりシャープに見える印象です。
◯ 中期以降:縁ありインデックス(ブラック/ブルー)
※写真は「Ref.16803」
1980年代中盤から後半にかけて、徐々にフチありインデックスへと変更されます。ブルーダイヤルでは放射状のサンレイ仕上げが施されており、光の当たり方で鮮やかに色合いが変わるのが特徴。このブルー文字盤の中でも、日焼けや経年によってヴァイオレットに変化する個体も見られ、それぞれが唯一無二の個性を持つ個体として評価されています。
◯ 夜光: T SWISS T → SWISS – T < 25(トリチウム)
表記は初期個体が「T SWISS T」、中期以降の個体は「SWISS – T < 25」となっています。トリチウム夜光であるため、長期保存された個体ほど夜光が焼けてパティーナが出ている傾向が強く、中でもブルーダイヤルとの組み合わせは評価が高くなりやすいです。
「Ref.16618」
ダイヤルバリエーションはさらに豊富になり、高級感と多様性を極めたサブマリーナーとして位置付けられます。金無垢モデルならではの華やかさに加え、文字盤の仕上げや素材にもこだわりが見られます。
◯ 主なダイヤルバリエーション:
・ブルーダイヤル
・ブラックダイヤル
・シャンパンダイヤル(2Pサファイヤ8Pダイヤ)
・グレーダイヤル(2Pサファイヤ8Pダイヤ)
とくに人気が高いのはブルーダイヤル。光の当たる角度によってブルーからヴァイオレットまで見える個体や、正面から見てもヴァイオレットに見える個体まで非常に表情豊かな文字盤が魅力です。
◯ 夜光の変遷:
・初期:SWISS – T < 25(トリチウム)
・中期:SWISS(ルミノバ初期)
・後期:SWISS MADE(ルミノバ以降)
2000年前後からはルミノバ夜光へ移行しており、夜光焼けのないクリアな印象のダイヤルになります。その分、実用性が高く、夜間の視認性も確保されています。
②ベゼル
「Ref.1680/8」
ステンレスモデルの「Ref.1680」同様に、両方向回転式ベゼルが採用されていますが、素材は18Kイエローゴールド製で、圧倒的なラグジュアリー感が漂います。
アルミ製ベゼルインサートは、ダイヤルカラーに合わせて以下の2種類が存在します。
・ブラックインサート(ブラックダイヤル)
・ブルーインサート(ブルーダイヤル)
このベゼルインサートは非常に経年変化しやすく、長年使い込まれた個体ではブルーがパープルやグレーにフェードしたり、ブラックもブラウン味を帯びるなど、味わい深い変化を見せることがあります。
こうした「ベゼル焼け」「色抜け」個体はヴィンテージ市場では評価ポイントのひとつです。オリジナルベゼルかつ状態良好なものは年々希少性が増してきています。
◯ ベゼルの刻み数:
60分表示の目盛り付きで、ダイバーズウォッチらしいデザインではあるものの、まだこの時代には逆回転防止機構は搭載されておらず、あくまで視認性を重視した機能性に留まっています。
「Ref.16808」
両方向回転式ベゼルを継承しており、インサートは引き続きアルミ製です。
・ブルーダイヤル(ブルーベゼル)
・ブラックダイヤル(ブラックベゼル)
風防がサファイアクリスタルに変更されたことにより、ベゼルとの相性や視認性が向上。また、文字盤の光沢感とベゼルカラーが美しく調和しており、視覚的にも非常に洗練された仕上がりになっています。
◯ 経年変化と人気:
ブルーベゼルは、パープルやスモーキーブルーに褪色する個体が存在しており希少価値があります。また、文字盤とベゼルの焼け具合に調和が見られる個体は特に高額で取引されています。
「Ref.16618」
ダイバーズウォッチとしての安全性を高めるため、逆回転防止ベゼルが初めて搭載されました。これにより、潜水時の計測中に誤ってベゼルが動いてしまうリスクを防ぎ、実用面での信頼性が大きく向上。現在のサブマリーナー同様に「一方向にしか回らない構造」がこのモデルから始まっています。
◯ アルミインサートのまま、造形が精緻に:
インサートはアルミ製が継続されており、ブルーとブラックの2種類が存在。ただし、前世代と比較して目盛りや刻印がやや深く、視認性が向上しているのもポイントです。
◯ 褪色個体の人気:
ブルーベゼルの褪色個体(パープル〜バイオレット系)は高く評価されており、文字盤と色調がマッチしたものは国内外問わずコレクターから人気です。特に、ブルーダイヤル&ブルーベゼルの両方が紫寄りに変色した個体は“フルフェード”として珍重されることもあります。
③ムーブメント
『サブマリーナー』のイエローゴールドモデルでは、各世代ごとに搭載ムーブメントが進化しており、それぞれの時代背景や技術革新を色濃く反映しています。精度・耐久性・メンテナンス性の観点からも、それぞれの違いは大きなチェックポイントです。
「Ref.1680/8」
ロレックスのヴィンテージ自動巻きムーブメントの代表格、「Cal.1570」。1970年代を代表するムーブメントといえます。
◯ 「Cal.1570」の特徴
・振動数:19,800振動/時(ロービート)
・デイト表示付き(クイックチェンジなし)
このキャリバーの最大の魅力は、長年の使用にも耐える堅牢さ。現代のムーブメントと比べてやや精度は劣るものの、適切なオーバーホールを施せば現在でも日常使用が可能です。一方で、クイックチェンジ(日付の早送り機能)がないため、カレンダー合わせにやや手間がかかる点は、ヴィンテージモデルならではの味とも言えます。
「Ref.16808」
大きな技術革新が、「Cal.3035(ハイビート+クイックチェンジ)」の採用です。これは、1980年代以降のロレックススポーツモデルに幅広く搭載されたムーブメントで、現代的な実用性の基礎を築いたキャリバーと言えます。
◯ 「Cal.3035」の特徴
・振動数:28,800振動/時(ハイビート化)
・クイックチェンジ機構(デイト早送り)
・ハック機能搭載
現在でも多くのモデルに受け継がれる28,800振動(8振動/秒)のハイビート設計となり、視覚的にもスムーズな秒針の動きが楽しめるようになりました。また、クイックチェンジ機構の搭載により、日付の合わせが圧倒的に楽になり、日常使いでも大きな利便性をもたらしています。メンテナンス性も高く、部品供給も比較的安定しているため、今後も安心して使えるムーブメントと言えるでしょう。
「Ref.16618」
言わずと知れたロレックスの名機「Cal.3135」を搭載。1988年の登場以来、30年以上にわたり実用機として採用され続けたロングセラーで、信頼性・耐久性・整備性のすべてにおいて非常に優れたムーブメントです。
◯ 「Cal.3135」の特徴
・振動数:28,800振動/時(ハイビート)
・クイックチェンジ&ハック機能付き
・ツインブリッジテンプ受けによる耐衝撃性アップ
「Cal.3035」の後継ムーブメントとして、細かな改良が加えられており、安定性と精度がより高次元でバランスされています。整備性の高さから多くの技術者からも信頼されており、現行モデルの「Cal.3235」登場まで、【ロレックス】のスタンダードムーブメントとして長く君臨していました。
モデル選びのポイント
1969年に登場した「Ref.1680/8」から始まった、サブマリーナーデイトの金無垢モデル。その後、風防のサファイアクリスタル化、ムーブメントの進化、ブレスレットの強化と、モデルは進化を重ねながら、現代的な実用時計へと成長していきました。
それぞれの世代にははっきりとした個性と魅力があり、コレクションや実用時計としての価値も高まっています。
※写真はトロピカル化した「Ref.1680/8」
①ヴィンテージの雰囲気を楽しみたいなら → 「Ref.1680/8」
特にトリチウム焼けのパティーナ個体や、褪色したブルーベゼルが人気。価格は張りますが、長期的に見ても安定した評価が見込まれます。
②仕様の個体差を楽しみたいなら → 「Ref.16808」
ニップル or 縁ありインデックス、トリチウム夜光でダイヤルカラーの個体差も豊富。過渡期モデルならではの奥深さがあります。
③実用性と高級感の両立を求めるなら → 「Ref.16618」
現代的な使いやすさと、金無垢ならではの迫力を両立。毎日使える金無垢ロレックスを探している方におすすめです。
まとめ
Ref.1680/8から始まる金無垢サブマリーナーは、どの世代も共通して「金無垢スポーツウォッチ」という唯一無二の魅力があります。サブマリーナーの堅牢さと金無垢の華やかさが融合した存在感は、まさに“大人のラグジュアリーツール”と呼ぶにふさわしい一本。
それぞれの世代に個性があり、使い方・好みによってベストな一本は変わってきます。
購入を検討する際には、コンディション(ケースの痩せ、ブレスのヨレ、ダイヤルの焼け)をしっかり確認し、できれば実物を手にとって納得のいく選択をしていただくのがおすすめです。
こだわって探せば探すほど、“自分だけの金無垢サブ”に出会えるはずです。
また次の記事でお会いしましょう!
ではまた!