機械式時計を選ぶ際、皆さんはどこに注目されるでしょうか。
多くの方は"デザイン性"や"機能性"、"資産性"とお答えになると思います。もちろん見た目やリセールというのは非常に重要なポイントになりますが、ここにブランドやモデルの歴史的背景、年代毎のマイナーチェンジなど、知識や理解が増えることで、さらに時計が好きになり、選ぶ楽しみを味わえるのではないでしょうか。 本コラムでは、初心者、上級者を問わず、機械式時計に関する知識を一つでも多くお伝えし、皆さまの時計選びの参考となるよう徹底解剖、徹底解説してまいります。
今回は【ロレックス】『サブマリーナー』「Ref.16800&Ref.168000」にフォーカスを当ててお話ししていきますので、ぜひ最後までご覧ください。
第二世代サブマリーナーデイトRef.16800
https://commit-watch.co.jp/products/0wxhrwry?_pos=2&_fid=dcd6c5759&_ss=c
第2世代サブマリーナーデイト「Ref.1680」の後継モデルとして1980年頃に登場したのが、第2世代に位置付けられる「Ref.16800」です。
このモデルから風防がプラスチックからサファイアクリスタルに変更され、防水性能も300mへ向上しました。また、逆回転防止ベゼルを装備し、ムーブメントも「Cal.3035」へアップグレード(クイックチェンジ可能)されたことで、より現代的な仕様となっています。
前モデル「Ref.1680」と比べて、スペック面・機能面ともに大きく進化したモデルですが、ヴィンテージ感が残るダイヤルデザインや独特の経年変化が楽しめる点から、現行モデルとは異なる魅力があり、今なお根強い人気を誇ります。
基本スペック
製造年: 1980年〜1988年頃
ケース: 40mm
ベゼル: 逆回転防止式(アルミ製インサート)
風防: サファイアクリスタル
防水: 300m防水
ブレスレット: ハードブレス(93150/593)
ムーブメント: Cal.3035
振動数: 28,800振動
①ダイヤル
「Ref.16800」のダイヤルバリエーションは大きく2種類存在し、前期のマットダイヤルと後期のラッカーダイヤルに分類されます。ダイヤル6時位置の表記やインデックスの仕様で見分けがつくため、「Ref.1680」と比べると識別しやすくなっています。
◯マットダイヤル(1980-84年頃)
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登場初期の個体では、マットな質感のブラックダイヤルが採用され、インデックスはフチなし仕様です。このデザインは前モデル「Ref.1680」の特徴を受け継いでおり、ヴィンテージ感が強く残るため、現在でも人気が高い仕様です。
ダイヤル6時位置の表記は「SWISS - T<25」となっており、夜光塗料にはトリチウムが使用されています。そのため、経年変化によりインデックスや針の夜光がクリーム色に変化する「パティーナ」が見られる個体が多く、コレクターの間でも評価が高いポイントになっています。
◯ラッカーダイヤル(1984-88年頃)
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1984年頃からダイヤルデザインが変更され、光沢のあるブラックラッカーダイヤルが採用されるようになりました。この文字盤では、インデックスにメタルフレームが追加され、より現代的なデザインへと変化しています。
なお、このラッカーダイヤルでも6時位置の表記は「SWISS - T<25」のままで、夜光塗料はトリチウムが使用されていますが、マットダイヤルほどの経年変化(焼け)は見られない個体が多いのが特徴です。また、当時の塗料の性質上、ダイヤルにクラックが入る、通称「スパイダーダイヤル」と呼ばれる個体もあります。
②ベゼル
「Ref.16800」から逆回転防止ベゼルが採用されました。それ以前のモデル「Ref.1680」では双方向回転式ベゼルだったため、ダイバーが誤ってベゼルを動かしてしまうリスクがありました。
逆回転防止ベゼルは、潜水中に誤って時計回りに回転し、実際の潜水時間より短く計測してしまう事故を防ぐために導入されました。これは、ダイバーが酸素ボンベの残量を正確に把握するために不可欠な機能です。
③ブレスレット
ブレスレットは、93150/593が標準装備され、しっかりとした作りのハードブレス仕様になっています。このモデルのブレスレットには、エクステンション(延長機能)が搭載されており、ウェットスーツの上からでも装着できる設計になっています。
また、この世代のブレスレットは、現行モデルと比べると細身で軽量なため、ヴィンテージ感のある装着感が楽しめる点も魅力の一つです。
サブマリーナーデイトRef.168000
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「Ref.16800」の最終進化形として、1987年頃に登場したのが「Ref.168000」です。外観上はほぼ変わりませんが、ケース素材が316Lステンレススチールから904Lステンレススチールに変更された点が最大の特徴です。この素材変更により、耐腐食性が向上し、より頑丈なケース構造へと進化しました。しかし、製造期間はわずか約3年(1985-88年頃)と短く、生産数が少ないため、現在では良個体を探すことが難しいモデルとなっています。
基本スペック
製造年: 1985~88年頃
ケース: 40mm(904Lステンレススチール)
ベゼル: 逆回転防止式(アルミ製インサート)
風防: サファイアクリスタル
防水: 300m防水
ブレスレット: ハードブレス(93150/593)
ムーブメント: Cal.3035
振動数: 28,800振動
①ダイヤル
「Ref.168000」のダイヤルは、基本的に「Ref.16800」の後期型(ラッカーダイヤル)と同じ仕様となっています。ダイヤルデザインには大きな変更はなく、6時位置の表記は「SWISS - T<25」で、夜光塗料にはトリチウムが使用されています。
◯SWISS - T<25 表記(1987年)
6時位置の「SWISS - T<25」表記は、トリチウム夜光を使用していることを示しています。
「SWISS」 → スイス製であることを表す
「T<25」 → トリチウムの“T”と、トリチウムの放射線量が25mCi(マイクロキュリー)未満であることを示します。
この時代のトリチウム夜光は、時間の経過とともに劣化し、クリーム色に変色(パティーナ)する個体が見られます。美しく均一に焼けたダイヤルは市場でも高く評価されるポイントのひとつとなっています。また、メタルフレーム付きのインデックスが採用されており、視認性の向上と高級感のあるデザインになっています。
②ベゼル
「Ref.168000」には、逆回転防止式のアルミ製インサート付きベゼルが搭載されています。これは「Ref.16800」からの継承で、ダイバーズウォッチとしての機能性をさらに向上させたポイントの一つです。ダイバーズウォッチにとって、逆回転防止ベゼルは非常に重要な機能です。ベゼルを時計回りに回転できないようにすることで、潜水時間の誤計測を防ぎ、酸素ボンベの残量を正確に管理できるようになっています。
③ブレスレット
ブレスレットは、93150/593が標準装備されています。このブレスレットは、堅牢なハードブレスタイプで、ダイバーズエクステンション(延長機能)を備えており、ウェットスーツの上からでも装着可能な仕様です。また、フラッシュフィットはブレスレットと切り離しが可能な分離型となっており、当時のサブマリーナーらしいクラシックな仕様を保っています。
通称“トリプルゼロ”
「Ref.168000」は5桁リファレンス世代にも関わらず、型番表記が6桁となっていて、下3桁が“0”になっていることから“トリプルゼロ”という愛称で呼ばれています。また、ケース6時側にはしっかりと“168000”で刻印されているものの、保証書や裏蓋には“16800”で刻印されているケースがあります。
第2世代まとめ
「Ref.16800」と「Ref.168000」は、サブマリーナーの進化の過程で重要な役割を果たしたモデルです。特に、サファイアクリスタル風防や逆回転防止ベゼルを初めて採用したことで、現代のサブマリーナーに通じる仕様へとアップデートされました。
また、マットダイヤルの「Ref.16800」はヴィンテージモデルの中でも人気が高く、夜光の焼け具合が美しい個体は高額で取引されています。一方、「Ref.168000」は製造期間が短いため、コレクターズアイテムとして希少性が高い傾向にあります。
ヴィンテージ市場で注目度が高いモデルのひとつですので、納得のいく一本を手に入れてください。
ではまた!