みなさま、こんばんは!
今週も新連載の《今さら聞けないシリーズ》をお届けしていきたいと思います。この新企画では、高級腕時計にあまり詳しくない方、これから勉強していきたい方へ向けて「今さら聞けないよ!」といった、高級腕時計の基本的な事をわかりやすくお伝えしていきます。
第17回目となる今回は
【高級腕時計入門編】:『マニュファクチュール』
時計好きなら誰しもが一度は耳にしたことがある『マニュファクチュール』。『マニュファクチュール』メーカーというと、優れた時計メーカーであり、その作り込みに拘りを持っている印象を抱くかと思います。しかし、実際にどのような意味なのかは詳しく知らない!という方も意外と多いのではないでしょうか。今回は『マニュファクチュール』の意味と、『エタブリスール』との違いについて解説していきますので、是非とも最後までお楽しみください。
『マニュファクチュール』とは
『マニュファクチュール』とは、ムーブメントを含めた部品の製造や組み立てを、全て自社で行なうメーカーを指します。ケースデザインからムーブメント製造まで一貫して行なうため、開発や製造に高額なコストと労力がかかり、時計自体の価格も高価になる傾向があります。
機械式時計は部品が小さい上に作りが精密であったため、部品の専門メーカー、ムーブメントの専門メーカー、ケースの専門メーカーなど、昔から分業が基本でした。現在の高級腕時計業界における『マニュファクチュール』という用語は、厳密に定義されたものではありません。そのため、社外のムーブメントを自社風に改良し、自称しているメーカーも多々あります。
ですが、高級腕時計業界の中で本当の意味で『マニュファクチュール』と評価されるメーカーは、ムーブメントの地板、受け、歯車などの部品を、全て自社で製造しているのです。
完全『マニュファクチュール』とは
先述の通り、『マニュファクチュール』を自称するメーカーであっても、全ての部品を自社のみで生産できるところはほとんど存在しません。特にムーブメントの心臓部である「ヒゲゼンマイ」は、髪の毛よりも細く、わずかなズレでも正確な時刻を刻めなくなってしまう、非常に難易度の高い部品です。そういった高度な部品の製造ができる数少ないメーカーは、完全『マニュファクチュール』メーカーと呼ばれています。
完全『マニュファクチュール』メーカーとして名前が挙げられるのが、【パテックフィリップ】【オーデマピゲ】【ロレックス】などです。また、日本が誇る時計ブランド【セイコー】も完全『マニュファクチュール』メーカーとして知られています。時計の分業制が当たり前だったスイスに対し、日本では分業の歴史がなかったため、早くから自社開発・製造できる技術を備えていたと言われています。
『エタブリスール』との違い
『マニュファクチュール』の対義語として挙げられるのが、『エタブリスール』という用語です。『エタブリスール』は、自社で製造するのではなく、ムーブメントや部品を他社から仕入れて組み立てるメーカーのことを指します。
ムーブメントの開発や製造を専門のメーカーに委ねることで、開発やテストにかかる費用をカットすることができるため、価格を抑えて販売することができます。また故障した際も、パーツが多く出回っているため安く修理することができる点は、『エタブリスール』のメリットと言えるでしょう。
『エタブリスール』には、完成品のムーブメントを仕入れてそのまま使用する場合と、「エボーシュ」と呼ばれる半完成状態のムーブメントを仕入れ、ブランド独自の改良や調整などを加えてから用いる場合とがあり、その改良や調整の有無や度合いによっても価格に差が生まれてきます。
『エタブリスール』メーカーで多く使われているのが「ETA社」のムーブメントです。ETA社は安価で高品質なムーブメントを作り出すことから多くの時計メーカーで採用されています。
『マニュファクチュール』の代表ブランド
それでは『マニュファクチュール』として知られる代表的なブランドを紹介します。
1.【パテックフィリップ】
世界三大時計ブランドとして知られる【パテックフィリップ】。その理由の一つには、時計製造における高い技術力が挙げられます。【パテックフィリップ】のムーブメントは、見た目にも美しいというだけでなく、精度や機能が優れている特徴があります。また、独自に『パテックフィリップ・シール』という品質規格を設け、精度、外装、仕上げ方法と、最高峰の品質を目指しています。
2.【オーデマピゲ】
【オーデマピゲ】は、【パテックフィリップ】、【ヴァシュロンコンスタンタン】に並び世界三大時計ブランドに挙げられる時計ブランドです。『ロイヤルオーク』の知名度が高いですが、その技術力も折り紙付き。ブランドの創立以来、ムーブメントはもちろん、ケースや文字盤にいたるまで自社製造を目指してきました。2009年には3つの棟からなる「マニュファクチュール・デ・フォルジュ」を創設し、時計作りの本場”ジュウ渓谷”でも、屈指の規模の生産体制を誇っています。
3.【パルミジャーニ・フルリエ】
【パルミジャーニ・フルリエ】は、上記のブランドよりも知名度は劣りますが、高度な時計製造技術を持っていることで知られています。時計製造を専門とした企業と同じ財団に所属しており、ムーブメント用のネジを作る「エルウィン」や、ヒゲゼンマイなどの脱進調速機を製造する「アトカルパ」など、5社をまとめて「パルミジャーニ・ウォッチメイキング・センター」と称しています。
4.【ロレックス】
人気・知名度共に、現在世界でもトップクラスと呼べる【ロレックス】。世界中の時計愛好家から愛されており、その理由=魅力のひとつに、実用時計の最高峰とも呼ばれている自社製ムーブメントの存在が挙げられます。過去には、ゼニス社で作られた名機「エルプリメロ」を改良して採用された『デイトナ』などもありましたが、現在では全てのモデルにおいて完全自社製のムーブメントを採用し、『マニュファクチュール』を実現しております。
5.【グランドセイコー】
最後にご紹介するのは、日本が誇る国産時計の雄【セイコー】。中でも国産腕時計の頂点といえる【グランドセイコー】は、部品製造から組立、調整、出荷までを一貫して「雫石高級時計工房」で行なっています。【グランドセイコー】は精度と信頼性を追求するため、最新技術と職人たちの匠の技を融合し、世界でも最高レベルの精度をもつ時計を生み出しているのです。
まとめ
今回は、『マニュファクチュール』について解説しましたが、いかがでしたでしょうか。
近年では時計技術が進歩したことから、『マニュファクチュール』メーカーが以前よりも一層多くなりました。皆さんも是非ともお好きな『マニュファクチュール』メーカーを探し、その伝統と拘りの詰まった時計を手にしてみてください。
今回も、この記事を見ていただいたことで高級腕時計に興味を持っていただければ幸いです!
ではまた!