映画やテレビなどで俳優が着用した時計にフォーカスする「Actor’s Watch」。
第82弾の今回は、「ライアン・ゴズリングの腕時計」をお送りします。
*出典元:https://www.hollywoodreporter.com/
甘いマスクの二枚目ながら、秘密や悩みを抱えた「屈折イケメン」を演じさせたらピカイチのライアン・ゴズリング。古き良きジャズにしか興味がないピアニストを演じた『ラ・ラ・ランド』(2016)や、「人間もどき」と呼ばれる人造人間を演じた『ブレードランナー2049』(2017)など、オスカー受賞作や大ヒット映画で、彼が演じた不器用で悩み多きキャラクターを目にされた方も多いのではないでしょうか。
今回の「Actor’s Watch」は、そんなライアン・ゴズリングが劇中で着用した腕時計に迫ってみたいと思います。
ハーフネルソン
HALF NELSON(2006)
*出典元:https://it.wikipedia.org/
ブルックリンの中学校で歴史を教えているダン・デューン(ライアン・ゴズリング)は、くだけた授業スタイルで生徒からの信頼も厚い人気教師。その一方、プライベートではドラッグに溺れ、生徒や同僚に麻薬中毒者であることを知られぬよう、人知れず苦労していた。
ある日、彼はバスケ部のコーチとして生徒たちの試合を見守った後、我慢できずにトイレの個室でコカインを吸い始めるが、その姿を女生徒に目撃されてしまう。その日から彼の人生は大きく変わり始める。
*出典元:https://medium.com/
ドラッグ中毒の教師と、兄の影響でドラッグディーラーの手伝いをさせられている女生徒との交流を描いた『ハーフネルソン』(2006)。この作品でライアン・ゴズリングはアカデミー助演男優賞にノミネートされ、注目俳優の仲間入りを果たします。
本作で彼が身に着けているのは、カシオ データバンク 150(Ref.DBC150B-1DF)。知的な雰囲気ながら、チープさとオタク感を併せ持ったデータバンクは、ドラッグ漬けの日々で貯金もなく、カードすら止められそうになっている中学教師という役どころにはピッタリの腕時計のように思えます。
ラブ・アゲイン
CRAZY, STUPID, LOVE(2011)
*出典元:https://www.vulture.com/
好きな相手ができた妻から離婚を迫られた、しがない中年男性キャル(スティーヴ・カレル)。やもめ暮らしを始めた彼が、行きつけのバーでバーテン相手に嘆いていると、ジェイコブと名乗る若くてハンサムな色男(ライアン・ゴズリング)が「女の落とし方」を教えに現れる。
会話や服装など、モテるための「イロハ」を教わったキャルはナンパに成功。その日から複数の女性とのアバンチュールを楽しみ始めるが、別居中の妻が自分にまだ未練を残していることを知ると、彼女との復縁を考え始める。そして、妻との生活を取り戻そうとするキャルの姿を見たジェイコブも「人を愛すること」の大切さに気付かされ、口説き落とそうとしていた法学生のハンナ(エマ・ストーン)を真剣に愛そうと考え始める。
*出典元:https://www.cultjer.com/
2016年の『ラ・ラ・ランド』に先駆け、ライアン・ゴズリングとエマ・ストーンの初共演作となった恋愛映画『ラブ・アゲイン』(2011)。真実の愛を知らぬ色男を演じたライアン・ゴズリングは、本作でロレックス サブマリーナー(Ref.16610)を着用しています。
フィットしたスーツをノーネクタイでセクシーに着こなす色男。ややゴツめのサブマリーナーで抜け感を演出という感じでしょうか。モテ男コーデを知り尽くしたジェイコブらしい、軽さと隙を感じさせるテクニックと言えるでしょう。
ドライヴ
DRIVE(2011)
*出典元:https://www.rtbf.be/
卓越したドライビングテクニックを持つキッド(ライアン・ゴズリング)。昼間はスタントドライバーや整備工場のメカニックとして働き、夜は犯罪者の逃走を手助けする「逃がし屋」に手を染めていた彼は、ある日、アパートの同じ階に住む人妻アイリーン(キャリー・マリガン)と知り合う。
間もなくアイリーンの夫が服役していた刑務所から出所するが、夫は刑務所内で金銭トラブルを起こしており、その代償として街の質屋を襲う計画に無理やり加担させられる。アイリーンの為に「逃がし屋」を買って出たキッドだが、彼はこの計画の裏にある大きな陰謀に気づいていなかった。
*出典元:https://www.thegoldencloset.com/
ライアン・ゴズリングが寡黙ながら心の優しい「裏社会のプロフェッショナル」を演じた『ドライヴ』(2011)。本作で彼は、パテックフィリップのスモールセコンド三針時計を着用しています。しかし画像を見てお判りの通り、この腕時計は小道具として製作された実在しないモデル。ストーリー上「パテックフィリップの実在しないモデル」である必要性は無く、本物を使いたかったが用意できなかったので仕方なく小道具で、ということなのかもしれません。
ファースト・マン
FIRST MAN(2018)
*出典元:https://www.elconfidencial.com/
1961年、空軍のテストパイロットだったニール・アームストロング(ライアン・ゴズリング)は、幼い娘を病気で亡くしてしまう。悲しみに暮れる妻の前で感情を表すことのなかった彼も深い悲しみからは逃れられず、それを紛らわすかのようにNASAの宇宙計画に志願する。
度重なるパイロットの死亡事故や、ベトナム戦争の泥沼化による財政圧迫など、悪いニュースが続く中、過酷な訓練を重ねていくアームストロング。やがてアポロ11号の船長に任命された彼の前に、人類初の月面着陸という、命がけのミッションが立ちはだかる。
*出典元:https://www.chronoholic.com/
人類の歴史としてのアポロ11号ではなく、宇宙飛行士ニール・アームストロングの眼を通した「彼にとってのアポロ11号」を描いた『ファースト・マン』(2018)。本作でアームストロングを演じたライアン・ゴズリングが着けるべき腕時計はコレ以外にあり得ないでしょう。その腕時計とはオメガ スピードマスター 4th(Ref.ST 105.012-65)。
文字盤にはNASA公認クロノグラフとして選ばれた証「PROFESSIONAL」の表記が入ったスピードマスター4thモデル。宇宙服の太い袖に合わせ、ベルクロのナイロンベルトに換装されています。アームストロング船長とオルドリン操縦士がアポロ11号計画において実際に着用した、「人類の歴史」のマイルストーンと言える一本です。
グレイマン
THE GRAY MAN(2022)
*出典元:https://wired.jp/
殺人罪で刑務所に収監されていたコートランド(ライアン・ゴズリング)のもとに、CIAのフィッツロイという男が面会に現れる。彼はコートランドに「司法が手を下せない悪党を抹殺する、正体不明の存在(グレイマン)になること」を条件に釈放するという取引を持ち掛ける。
こうして秘密部隊「シエラ」のエージェントとなったコートランドは、コードネーム「シエラ・シックス」として、CIAからの暗殺指示を着実に遂行していく。しかしある日、CIAの不正を掴んだ男を仲間と知らずに暗殺したことで、彼自身も命を狙われる身となる。
*出典元:https://productplacementblog.com/
『アベンジャーズ』シリーズのルッソ兄弟がメガホンを取り、Netflix史上最高額である2億ドルもの予算をかけて製作された配信映画『グレイマン』(2022)。陰謀によって身内から命を狙われる暗殺者「シエラ・シックス」を演じたライアン・ゴズリングは、劇中でタグホイヤー カレラ キャリバー5 デイト(Ref.WBN2111.FC6505)を着用しています。
2021年より、ライアン・ゴズリングはタグホイヤーのアンバサダーに就任しており、本作でのカレラの着用は、そのタイアップの一環とのこと。エレガンスと堅牢性を兼ね備えた「カレラ キャリバー5 デイト」のイメージが、ライアン・ゴズリング本人の洗練された雰囲気と、暗殺者という役柄の力強さとして、キャラクターに見事に投影されているのではないでしょうか。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
ドラッグに溺れたり、女性を真剣に愛せなかったり、寡黙すぎたり、感情を表に出せなかったり、、、と、性格の偏ったキャラクターを演じることが多いだけに、人物イメージがトゥーマッチにならぬよう、腕時計はシンプルにしているように思えます。
*出典元:https://www.digitalspy.com/
ライアン・ゴズリングは、役柄のキャラクター性を高い演技力で正確に表現できてしまうが故に、腕時計がそれを邪魔したり、余計なイメージを表現してしまわないよう、そのブランドの腕時計の中から、普遍性の高いモデルが選ばれたと言えるのではないでしょうか。
腕時計の着け方として、あえて特別なイメージを表現しない、このような「引き算」のチョイスも面白く感じます。とはいえこれは、着用者自身のキャラクターが濃くなければ成立しない着け方とも言えるでしょう。
もしも私がこれを真似したら、全身が特徴のない「ぼんやりした影」みたいな存在になりそうで怖いので、やっぱりやめておきますね!(笑)
ではまた!