映画やテレビなどで俳優が着用した時計にフォーカスする「Actor’s Watch」。
第59弾の今回は、ジョン・トラボルタの腕時計をお送りします。

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サタデー・ナイト・フィーバー』(1977)と『グリース』(1978)という、2本の大ヒット青春映画で主役を演じ、一躍スターダムに昇りつめながら、その後は鳴かず飛ばずだったジョン・トラボルタ。世間的には「ハリウッドの一発屋俳優」と思われていたトラボルタですが、15年の時を経て『パルプ・フィクション』(1994)に登場する殺し屋、ヴィンセント役で見事に復活。かつての青春スターは、クセのある悪役俳優として再びトップスターの座へと返り咲きを果たします。

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今回は、そんな山あり谷ありのハリウッドスター、ジョン・トラボルタの腕元に注目して参りましょう。

ブロークン・アロー

BROKEN ARROW(1996)

核弾頭を搭載したステルス爆撃機による訓練中、パイロットのディーキンス少佐(ジョン・トラボルタ)は、かねてから計画していた核弾頭の強奪を実行に移す。同乗するヘイル大尉(クリスチャン・スレイター)を揉み合いの末、機外に強制脱出させると、核弾頭を仲間に向けて投下。自らも脱出し、核弾頭の強奪に成功する。これにより核兵器の紛失を意味する軍の緊急事態コード「ブロークン・アロー(核紛失)」が発動。ヘイルは核弾頭奪還の為、命がけでディーキンス一味を追う。

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チョウ・ユンファ主演の『男たちの挽歌』(1986)シリーズや、『レッドクリフ』(2008)の監督として名を知られる香港映画界の巨匠、ジョン・ウー監督のハリウッド初進出作。

当時、クエンティン・タランティーノ監督の影響等により、香港映画への再評価が高まっていたハリウッド。ジョン・ウー監督は、本作と『フェイス/オフ』(1997)のヒットにより、ハリウッドでもその地位を確かなものとします。

この2作にジョン・トラボルタはメインの悪役として登場しており、香港映画を愛するクエンティン・タランティーノ監督作で復活を果たしたトラボルタが、香港映画の巨匠ジョン・ウー監督のハリウッド進出を成功に導いたと言っても過言ではありません。

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この映画でトラボルタが身に着けているのは、ブライトリング エアロスペース(Ref.F56059)と思われる腕時計。アナログとデジタルを兼ね備えたアナデジ表示が特徴のクォーツウォッチです。

トラボルタは大の航空機マニアとして知られており、20歳で初めて航空機の操縦資格を得ると、現在までにボーイングなどの大型旅客機を含む9種類の操縦資格を取得。総飛行時間は5000時間を超えるプロ級のパイロットでもあります。そのため、プライベートでもパイロットに人気の高いブライトリングの腕時計を愛用しており、ブランドのアンバサダーにも就任。本作でのチョイスは、まさに「プロパイロットが選ぶパイロットウォッチ」と言えるでしょう。

サブウェイ123 激突

The Taking of Pelham 123(2009)

ニューヨーク地下鉄の「ペラム123号」が、駅と駅の中間地点で緊急停止し、先頭車両だけが切り離される。鉄道の指令室に勤める職員ガーバー(デンゼル・ワシントン)が異変に気付いて車掌に無線連絡をとると、応答したライダーと名乗る男(ジョン・トラボルタ)が先頭車両のハイジャックを宣言。ガーバーは乗客を人質にとられ、1時間以内に1000万ドルの身代金を用意するよう要求される。人質を守る為、必死にライダーと交渉を重ねるガーバー。やがて身代金が届くと、ライダーはガーバーに身代金の運搬を命じるのだった、、、

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この映画でも、トラボルタが選んだのは愛するブランドの一本。ブライトリング コルト オートマティック(Ref.A178G99PRS)と思われる腕時計を身に着けています。コルトも元々は軍のパイロット用に開発されたミリタリーウォッチ。ライダータブの付いたベゼル形状からもわかる通り、『ブロークン・アロー』で着用したエアロスペースとも系譜の近い腕時計です。

*出典元:https://www.watchprosite.com/

ところがこの映画、地下鉄の運行や身代金準備のタイムリミットなどを確認するため、腕時計がアップになるシーンも少なくないのですが、全身姿とアップ時で、トラボルタの着けている腕時計がどう見ても違うんですよね(笑)。デンゼル・ワシントンというオスカー俳優が主演を務める映画にしては、いささか腕時計の扱いがユルい気がいたします。

*出典元:https://wristwatchforums.proboards.com/

アメリカン・クライム・ストーリー/O・J・シンプソン事件

The People v. O.J. Simpson: American Crime Story(2016)

元NFLのスター選手であり、引退後は俳優として活躍していた黒人のO.J.シンプソンキューバ・グッディング・ジュニア)が、白人である元妻と友人を惨殺した容疑者として警察の捜査対象となる。テレビ中継が追いかける中、カーチェイスの末に逮捕されたシンプソンは、ロバート・シャピロジョン・トラボルタ)を始めとする著名な弁護士を集めた強力な弁護団を結成する。マスコミが注目する法廷では、弁護団は裁判を「人種差別問題」に誘導。警察の差別的言動や証拠の取り扱いの不備をつくことで無罪を勝ち取るが、彼が視聴者や友人からの信用を取り戻すことはなかった、、、。

*出典元:https://www.entitymag.com/

全米が注目した1994年の「O.J.シンプソン事件」をTVドラマシリーズ化した本作は、事件の関係者による「実際の事件とは異なる部分がある」といった批判もありながら、TV界のアカデミー賞と呼ばれる「エミー賞」9部門の栄冠に輝く実録犯罪ドラマの傑作と呼ばれています。

*出典元:https://www.reddit.com/

この映画でトラボルタが着けているのは、ロレックス デイトナ(Ref.116515LN)と思われる腕時計。革ベルトを付けたエバーローズゴールドのデイトナは、間違いなく富裕層であろう有名弁護士の腕にしっくりくる腕時計であります。しかしエバーローズゴールドのデイトナが登場したのは2008年。1994年に起きた事件、1995年に結審した裁判を描くドラマにおいて、「当時は絶対に存在しない腕時計」が着けられていることになります。このあたり、前述の『サブウェイ123 激突』と同じく、腕時計へのコダワリがユルく感じる作品ではありますね。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
パイロットとしてブライトリングを愛用する腕時計好きではあるものの、俳優として着用する際においては、そこまでのコダワリは見せないのがトラボルタ流(?)という感じがいたします。単なる小道具係のミスなのかもしれませんが。

とは言うものの、浮き沈みも激しく、ゴールデンラズベリー賞(別名:最低映画賞)の栄冠にも複数回輝いているトラボルタ。なんとなく「トラボルタ本人の要望でこうなったのでは…」などと邪推してしまう自分がいるワケではあるのですが、しかしそれでも主役級のオファーが引きも切らないのは、逆に俳優としての魅力に溢れることの証明なのかもしれません。

*出典元:https://www.today.com/

年齢的にも60代後半、70歳も間近となったトラボルタ。
渋さを増した彼が、これからどんな役を演じ、どんな腕時計を着けてくれるのか、楽しみにしたいと思います。

ではまた!

阿部泰治のパテック論