時計好きの間で毎年尽きないネタの一つ
「生産終了(ディスコン)モデル」
近年その時期が訪れると、噂されるモデルは中古市場から姿を消していき、生産終了が決まると同時に価格が高騰していく。
新しいモデルが発表されるというワクワク感と同時に、価格の上昇を期待した動きが起こるこの現象は、高級時計が実物資産として認められている証拠とも言えるでしょう。
そこで今回は、今年廃盤が噂され市場から玉数が減ってきているモデル『ヨットマスターⅡ』にスポットライトを当て、改めて歴史や特徴をお話ししていこうと思います。
『ヨットマスターⅡ』とは
本格的なヨットレースに向けたスポーツモデルとして、2007年に登場した『ヨットマスターⅡ』。『ヨットマスター』をベースに、44㎜の大型ケースを採用し、世界初の「レガッタクロノグラフ」が搭載されたモデルとして、一躍脚光を浴びました。
発表当初は18KYG(イエローゴールド)無垢モデルと18KWG(ホワイトゴールド)無垢モデルのラインアップで、高性能かつ高級素材の高額モデルという立ち位置でしたが、2011年に18KERG(エバーローズゴールド)とSS(ステンレススチール)のコンビモデル、2013年にSS(ステンレススチール)モデルが発表され、幅広い層に受け入れられるようになります。
代表的な系譜
①2007年「Ref.116688」「Ref.116689」
※「Ref.116688」
※「Ref.116689」
2007年に初めてラインアップされた「Ref.116688」、「Ref.116689」。
先ほどご紹介した通り、発表当初は金無垢素材のみでの展開で、ハイグレードな位置づけのモデルでした。既存の『ヨットマスター』と比べ、ケースサイズ・デザイン・ムーブメント等に大きな違いがあることから、今までに無い『ヨットマスター』として話題となります。
「Ref.116688」は、ブルーセラミックベゼル、「Ref.116689」は『ヨットマスター』ロレジウムに倣い、エンボス加工されたベゼルが搭載されています。
②2011年「Ref.116681」
※「Ref.116681」
『ヨットマスターⅡ』初となるコンビモデル「Ref.116681」。
【ロレックス】が独自に開発した18KERG(エバーローズゴールド)とSS(ステンレススチール)を組み合わせ、カジュアルな雰囲気と高級感を併せ持った上品な仕上がりとなりました。また、ベゼルには「Ref.116688」同様「ブルーセラミックベゼル」を採用しています。
③2013年「Ref.116680」
※「Ref.116680」
2013年、ファン待望のオールSS(ステンレススチール)モデル「Ref.116680」が登場。
このモデルにも「Ref.116688」や「Ref.116681」同様に「ブルーセラミックベゼル」が採用されました。今までの高級感ある金無垢モデルやコンビモデルとは異なり、前面に爽やかさを打ち出し、様々なシーンに合わせやすい仕様へと進化を遂げた『ヨットマスターⅡ』は、今なお高い人気を誇るモデルです。
ムーブメント
『ヨットマスターⅡ』最大の特徴でもある「レガッタクロノグラフ」機能を可能としているムーブメント「Cal.4160」は、『デイトナ』に搭載されている【ロレックス】自社開発クロノグラフムーブメント「Cal.4130」をベースに、4年もの歳月を費やして開発されました。
※「Cal.4160」
「レガッタクロノグラフ」とは、ヨットレースにおけるスタートまでのカウントダウンを計測することができる機構で、最大10分間のカウントダウンをセットする事が出来ます。
複雑機構のひとつとされていますが、特許を取得している「リングコマンドベゼル(ムーブメントと連動したベゼル)」を活用することにより、シンプルな操作性を実現しております。
ヨットは車などと違いスタート地点から急加速することが出来ず、あらかじめ風を受けた状態でスタート地点に向かい、号砲と共にスタートする必要があります。このレース開始までのタイミングを誤ると、フライングやスピード不足による遅れを取ってしまうなど、取り返しのつかないミスに繋がってしまいます。
そのため、公式のシグナルでスタートのカウントダウンが行われるヨットレースでは、このような致命的なミスを防ぐため、高精度のカウントダウン機能「レガッタクロノグラフ」を備えた『ヨットマスターⅡ』が支持されているのです。
※「Cal.4161」
2013年には「Ref.116680」の登場とともに、ムーブメントが「Cal.4161」に進化しました。新しい機能が追加されたわけではございませんが、カウントダウン機構のパーツが改良され、メンテナンス性がより向上することとなります。
マイナーチェンジ
2017年、『ヨットマスターⅡ』がマイナーチェンジされたことを、皆さんご存じでしょうか。型番は変更ないのですが、文字盤に大きな変更がございます。
※左:マイナーチェンジ前 右:マイナーチェンジ後
・時針がブルースチール針から「ベンツ針」に変更
・インデックスの縁がブルーからシルバーに変更
・長短針/スモールセコンドの針の色がシルバーに変更
・12時位置のアワーマーカーが長方形から逆三角形、6時位置のインデックスが正方形から長方形に変更
文字盤のマイナーチェンジだけでも、これだけの数が挙げられるため、旧型と比べて大きく印象が変わったかと思います。針やインデックスがシルバーになった事により、文字盤のバランスが洗練され、落ち着いた大人の印象が増したのではないかと個人的には思います。
⇩⇩※以前コミットTVにて配信した『ヨットマスターⅡ』の新旧比較と使い方はこちら⇩⇩
廃盤の噂
【ロレックス】は2022年1月に価格改定を行っており、SS(ステンレススチール)モデルの定価は約10%、金無垢モデルの定価は約3%値上げとなりました。
しかし、そんな中『ヨットマスターⅡ』の定価は全モデル変更なし、、、
実は、2020年1月の価格改定において『エクスプローラーⅠ』「Ref.214270」の定価は変更されませんでした。そして、2021年の新作発表で『エクスプローラーⅠ』が「Ref.124270」にモデルチェンジを果たしたのです。
真意は定かではございませんが、今回定価が変わらなかった『ヨットマスターⅡ』も、このまま在庫を売り切って生産終了。そして新作が発表されるのではないかと言われているのです。
まとめ
廃盤が噂される『ヨットマスターⅡ』について深堀してみましたがいかがでしたでしょうか?
2007年誕生と比較的新しいモデルではございますが、この15年の間に様々なマイナーチェンジやムーブメント変更がされ、知れば知るほど興味が湧いてくるモデルのひとつではないでしょうか。
もちろん。新作発表当日まで何一つ確かなことは言えませんが、本当に発表が楽しみですね。
今回もこの記事を見ていただいたことで、”『ヨットマスターⅡ』に興味を持った!”という方が一人でも多く増えて下されば幸いです。
ではまた!