映画やテレビなどで俳優が着用した時計にフォーカスする「Actor’s Watch」。
第103弾の今回は、「エド・ハリスの腕時計」をお送りします。

*出典元:https://www.npr.org/

常に冷静沈着で理性的な顔立ち、それでいて眼光は鋭く、ワイルドな雰囲気も感じさせるエド・ハリス。サスペンス映画に登場すれば、誰しもが「犯人はエド・ハリス」と思ってしまう存在感から「黒幕俳優」の異名を持ち、実際に物語の黒幕を演じる事も多い、ハリウッドの名バイプレイヤーのひとりです。

今回は、そんなエド・ハリスが劇中で着用した腕時計に注目して参ります。

アビス

ABYSS(1989)

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カリブ海のケイマン海溝で謎の沈没を遂げた原子力潜水艦「モンタナ」。アメリカ政府は付近で深海の石油採掘を行なっていた人工島「ディープコア」に救助協力を依頼し、海軍特殊部隊を派遣する。「ディープコア」の責任者であるバッド(エド・ハリス)は、高圧的な特殊部隊の司令官や、「ディープコア」の設計者である別居中の妻と衝突しながらも、モンタナの捜索に協力する。

やがて深海に沈む「モンタナ」に辿り着き、生存者がいないことを確認したバッドたち。しかし、ハリケーンの襲来によって「ディープコア」と海上支援船を繋ぐケーブルが破損。海上に戻ることが出来なくなり、通信手段も絶たれてしまう。この絶体絶命の危機の中、彼らが暗黒の深海で出会った「未知の存在」とは、、、

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マリアナ海溝に単独潜航するほどの深海好きとして知られる、ジェームズ・キャメロン監督。その「深海愛」をテーマにした海洋SF映画『アビス』(1989)では、深海油田採掘のプロフェッショナルを演じたエド・ハリスが、セイコー サードダイバー(Ref.6309-7049)を着用しています。

C-ラインのケースに、4時位置のリューズ。アップにならなくても一目で「サードダイバー」とわかる、セイコーダイバーズの個性が光る一本。プロダイバーの腕に相応しい腕時計と言えるでしょう。もっとも、物語の舞台となるケイマン海溝は水深7684mですので、この腕時計は勿論、防水性能:3900mを誇るロレックス シードウェラー ディープシー(Ref.136660)ですら、水圧に耐えることはできませんが。

アポロ13

APOLLO 13(1995)

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1970年、月面に向けて飛び立ったアポロ13号は、酸素タンクの爆発事故に見舞われる。事故に伴う水と電力の不足により、月面着陸はおろか、計画を中止しての帰還すら絶望的と思われたアポロ13号。ジム・ラヴェル(トム・ハンクス)、フレット・ヘイズ(ビル・パクストン)、ジャック・スワイガート(ケヴィン・ベーコン)の3人の宇宙飛行士は、極寒と脱水状態により体調の維持すら困難となっていく。

そんな中、ヒューストン管制センターの主席管制官ジーン・クランツ(エド・ハリス)は、乗組員たちから状況を聞き取りながら、次々と襲い掛かるトラブルに的確に対応していく。皆が一丸となり致命的な危機は脱したかに思われた。しかし、宇宙船が地球に戻るための軌道から外れていることが判明。このままでは生還の望みが完全に絶たれてしまう乗組員たちは、自動操縦装置もコンピューターも使えない中、ある原始的な方法で軌道修正を行なう賭けに出る。

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致命的な事故が起きたものの、スタッフの団結とトラブルへの的確な対処で乗組員全員が生還し、「成功した失敗」「危機管理のお手本」ともいわれるアポロ13号の爆発事故。冷静さを失わず、その「的確な対処」を決断し続けた実在の管制官、ジーン・クランツエド・ハリスが演じています。

彼が本作で着用しているのは、セイコー 5スポーツ(Ref.6309-6032)。事故当時、ジーン・クランツは実際にセイコー 5スポーツ(Ref.6119-8460)を愛用しており、映画ではそれより少々カラフルで、スクリーンに映えるデザインのモデルが選ばれているようです。

*出典元:https://montrespubliques.com/

こちらが実際のジーン・クランツと愛用のセイコー5。アポロ13号を生還に導いた腕時計としては、乗組員のジャック・スワイガードが「14秒間のブースター噴射」を計測したオメガ スピードマスター(Ref.105.012)が有名ですが、地上においてはセイコー5スポーツこそが、このミッションを成功に導いた「立役者」と言えるでしょう。

ファントム/開戦前夜

PHANTOM(2013)

*出典元:https://www.filmstarts.de/

東西冷戦の真っ只中、1968年のソビエト連邦。ベテラン潜水艦長デミトリー(エド・ハリス)は、試作の軍事装置「ファントム」の実験の為、旧式潜水艦「K-129」での航海を命じられる。装置とその開発者ブルニー(デイヴィッド・ドゥカヴニー)を乗せた「K-129」は、世界中のあらゆる船と同じ音波を発することができる「ファントム」を用いて、敵艦のソナーを欺き、誰にも気付かれることなく航海を続けていく。

そんな中、デミトリーと副艦長のアレックス(ウィリアム・フィクナー)は、ブルニーを始めとする「ファントム」の関係者たちの個人情報が搭乗書類から消されている事に気づき、彼らが危険な秘密組織の一員ではないかと疑いを持ちはじめる、、、

*出典元:https://likeafilmstar.com/

東西冷戦の最中にソ連の潜水艦が謎の沈没を遂げた実話を基に、独自の解釈を加えて緊迫感ある軍事サスペンスに仕上げた『ファントム/開戦前夜』(2013)。本作では、秘密組織の野望を阻止しようとするベテラン潜水艦長を演じたエド・ハリスが、ユリスナルダン マリーン クロノメーター(Ref.266-67-3/42)を着用しています。

目印の無い大海原で位置を知る為の「航海用クロノメーター」を由来とするこの腕時計。潜水艦長が着けるに相応しい腕時計ではあるのですが、残念ながら時代の整合性が全く合っておりません。1960年代の話に、2010年代に発売された腕時計を着用するのは、さすがにいかがなモノかと思います。(笑)

まとめ

いかがでしたでしょうか。

「エド・ハリスと言えば黒幕、黒幕と言えばエド・ハリス」と言われるほど、数々の作品で「事件の黒幕」を演じてきたエド・ハリス。しかし、彼が黒幕を演じた映画においては、印象に残るような腕時計を着用しておらず、今回ご紹介した作品は、彼が黒幕ではない人物を演じた映画ばかりになりました。これには理由があります。

*出典元:https://www.sensacine.com/

エド・ハリスがロレックスなどの高額な腕時計を着用して映画に登場すれば、それだけで「財力と権力」を有するキャラクターに見えてしまうので、観客に「黒幕ではないか?」と疑われやすくなります。逆に、彼が安価な大衆向けの腕時計を着用していたら、正体が明かされたときに「裏で全てを操っていた切れ者」という印象が説得力に欠けたものになってしまいます。

つまり、映画で「黒幕」を演じる者にとって、キャラクターを如実に表現してしまう腕時計という小道具は、演技や演出の邪魔をするモノでもあるのです。あくまで私個人の推察ですが、これこそがエド・ハリスが黒幕を演じる際、印象に残る腕時計を着けない理由と考えています。

腕時計がキャラクターの本性を表現し、ネタバレの可能性を生むというのは「映画と腕時計」特有の関係性。次の出演作でエド・ハリスがどのような役を、どんな腕時計を着けて演じるのか?それとも着けないのか?彼の腕元に注目してみてください。

ではまた!

Actor's watch