映画やテレビなどで俳優が着用した時計にフォーカスする「Actor’s Watch」。
第18弾の今回はフランスが誇る名優、ジャン=ポール・ベルモンドの腕時計にフォーカスしていきたいと思います。YouTubeでリクエストをいただきましたANONさん、ありがとうございます!

*出典元:http://www.watchound.com/

アニメ『ルパン三世』『コブラ』のモデルともいわれ、日本ではゴダール監督の『勝手にしやがれ』『気狂いピエロ』など、ヌーヴェルヴァーグ作品の主演俳優として知られるジャン=ポール・ベルモンド。

*出典元:https://see-mag.fr/

60年代後半にゴダール監督と決別し、その後は『リオの男』(1964)や『カトマンズの男』(1965)など、数々の冒険映画に出演。危険なスタントも自らこなすアクションスターとしての名声を築いていくことになります。そして劇中の彼の腕元に数々のブランド腕時計が着けられるようになるのも、アクションスターとなった70年代の頃から。

それでは早速、彼の腕元を年代を追って見ていきましょう。

おかしなおかしな大冒険

Le magnifique(1973)

人気絶頂のスパイ小説家フランソワ(ベルモンド)と、彼の小説をテーマに論文を書こうとする美女(ジャクリーン・ビセット)が、小説の世界を舞台にスパイ活劇を繰り広げるドタバタアクションコメディ。

*出典元:https://www.telerama.fr

この映画でベルモンドが身に着けているのはセイコー ヨットマン(Ref.6138)。厚みと丸みのあるケース形状と、インダイヤルのSFチックなデザインから、海外では通称「UFO」と呼ばれる、現代ではヴィンテージセイコーの人気モデルです。

*出典元:https://vintagewatchinc.com/seiko/6138-chronograph/ufo/

1960年代後半から70年代にかけて、セイコーはヨーロッパの天文台が行っている数々の時計精度コンクールで、並み居るスイスブランドを抑えて上位を独占。そういった時代を反映しているようにも思える、時計好き俳優らしいチョイスです。

ジャン=ポール・ベルモンドの恐怖に襲われた街

Peur sur la ville(1975)
パリ警察きっての腕利き警部(ベルモンド)と、連続殺人犯の息詰まる戦いを描いたクライムアクション。走る電車の屋根の上での活劇や、高い屋根の上での追跡劇など、一歩間違えば死んでしまいそうな市街地でのアクションは、ジャッキー・チェンにも影響を与えたといわれています。

ベルモンドの怪盗二十面相

Incorrigible(1975)
刑務所を出所したばかりの詐欺師(ベルモンド)が、変装や声色を使って騒動を繰り広げるが、美人保護観察官のジュヌヴィエーヴ・ビジョルドに一目ぼれして…というドタバタコメディ。

危険を買う男

L’alpagueur(1976)
警察が手を出せない「危険な事件」の処理を請け負う一匹狼の仕事人(ベルモンド)と、強盗殺人を続ける凶悪犯との戦いを描くアクション映画。

*出典元:http://kaltan1.free.fr/

1975~76年のこちらの3作品では、ベルモンドはロレックスの手巻きデイトナ(Ref.6263)を身に着けています。3作連続で着用したということは、よほどお気に入りだったのでしょう。特に『恐怖に襲われた街』では激しいアクションシーンも少なくない中、時計が存在感を示しています。

*出典元:https://www.christies.com/

このRef.6263は後年、ジャン=ポール・ベルモンドから、息子であるF1レーサー、ポール・アレクサンドル・ベルモンドに受け継がれ、その後、2013年のクリスティーズオークションに登場。203,000スイスフラン(約2,500万円)で落札されています。

警部

Flic ou voyou(1979)

警官とマフィアの癒着が絶えないフランスの裏社会。その解決のため、マフィアへの潜入捜査官となった警視ボロウィッツ(ベルモンド)の活躍を描くクライムアクション映画。マフィアらしく振る舞うためか、いつものスポーツモデルではなく、珍しくデイトジャストを身に着けています。

*出典元:https://wedplain15.hatenablog.com/

ライオンと呼ばれた男

Itinéraire d’un enfant gâté(1988)

実業家として成功を収めた男(ベルモンド)が、航海に出た大西洋上で連絡を断ち失踪。人生に足りない何かを求めて放浪の旅に出るが…。

*出典元:https://solar-management.fr

55歳になり、いい感じに皺と渋味が出てきたベルモンドの腕元には、ブライトリングのクロノマットが着けられています。少しヤンチャな雰囲気のあるクロノマットが「冒険心が忘れられない50代」というキャラクターに程よくマッチしています。

The Eldest Ferchaux(2000)

フランスのテレビドラマのようですが、詳細は不明。
ベルモンドは1933年生まれですので、2000年当時は67歳。

*出典元:https://www.paneraimagazine.com/
この年でデカ厚時計の代名詞、パネライのサブマーシブルを着用していますが、長年のアクションスター生活で鍛えられた腕には何の問題もありません。こんな67歳になりたいものですね。

まとめ

いかがでしたでしょうか?
ジャン=ポール・ベルモンドといえば、愛用していたデイトナ Ref.6263が特に有名ですが、調べてみると役に合わせて数々の時計を着けていたことがわかりました。

60年代までのベルモンドは、高級時計が似合うとは言い難い「刹那的に生きる若者」を演じることが多く、私の好きな『リオの男』『カトマンズの男』、あるいはゴダール作品においては、時計が話題になることはありませんでした。

*出典元:https://www.askmen.com/

しかし70年代に入り、スターとしての階段を上り、年齢を重ねるにつれ、ベルモンドは役柄に相応しい時計遍歴を積み重ねていくことになります。このような理想的な「地位や年齢に見合う時計」の着け方、見習っていきたいものですね。

ではまた!

Actor's watch