皆さん、こんにちは。

以前のコラムで、今月上旬(2022年5月)にスイス:ジュネーブで開催された“世界三大オークションハウス”PHILLIPS(フィリップス)、CHRISTIE’S(クリスティーズ)、Sotheby’s(サザビーズ)の注目時計を取り上げました。

※前回の記事をまだご覧になっていない方はコチラを是非ご一読ください。

今回は、2022年5月7日、8日に開催されたPHILLIPS(フィリップス)”The Geneva Watch Auction: XV Session 1&2”の結果から、予想落札金額(エスティメート)と落札金額との差(上昇率)が大きかったモデルの上位TOP10を、ランキング形式でご紹介したいと思います。一体どのモデルがランクインしたのでしょうか?是非最後までお楽しみください!

*価格については、オークションの落札価格に手数料(26%)が入った金額となっております。
*日本円につきましては、オークション開催直近レートを参照しております。
*CHF(スイス・フラン)=133.30円換算
*画像は全てPHILLIPSを参照しています

【※文中に出てくる用語について】
*LOT(ロット):オークション出品物に付けられた番号。競売はこのロット番号の順に行われる。
*Estimate(エスティメート):各オークション会社が想定している『落札予想価格』。

【The Geneva Watch Auction: XV Session 1&2】予想落札金額越え!TOP10ランキング

第10位 ■LOT.135
【Heuer】
『Triple calendar chronograph』

Point
1940年代から1950年代に製造されていた【ホイヤー】表記のアンティーククロノグラフ。現在の【タグホイヤー】ではなく、『タグ』グループに入る前のホイヤー社製の個体です。この時期の時計は、マニアの間で「プリタグ」とも呼ばれており、名機と名高いバルジュー社製の手巻きムーブメントを搭載しています。サーモンダイヤルとステンレスのケースの組み合わせ、且つ保存状態が良好な点が評価されました。

Estimate : CHF 5,000 – 10,000
SOLD:CHF 35,280(JPY 4,702,824)
上昇率:352%

【出典】フィリップス

第9位 ■LOT.298
【F.P. Journe】
『Octa Calendrier “Souscription”』

Point
「レゾナンス」および「トゥールビヨン」を製作する資金を集めるために「サブスクリプションピース」として限定20本で販売された『オクタ スースクリプション』。こちらのモデルは、2002年のグランプリ ド オルロジュリー ド ジュネーブで「特別審査員賞」を受賞しています。人気のサーモンダイヤルとピンクゴールドケースの組み合わせは、この一本のみ製作されたと言われており、まさにオークションピースとして相応しいモデルです。

Estimate : CHF 70,000 – 140,000
SOLD:CHF 504,000(JPY 67,183,200)
上昇率:360%

【出典】フィリップス

第8位 ■LOT.208
【Daniel Roth】
『Skeleton Tourbillon』

Point
【オーデマピゲ】【ブレゲ】など名だたる時計ブランドで時計技師として活躍した「ダニエル ロート」。こちらは、レマニア製のエボーシュに装飾とスケルトン化を施した、シリアルナンバー「1」のトゥールビヨンです。1994年にイタリアの「L’Orologeria Pisa」で販売された個体となります。

Estimate : CHF 40,000 – 80,000
SOLD:CHF 289,800(JPY 38,630,340)
上昇率:362%

【出典】フィリップス

第7位 ■LOT.104
【MB&F X Urwerk】
『Experiment ZR012 “Nitro”』「Ref.C3H5N309」

Point
【ウルベルク】と【MB&F】の共同プロジェクトで製作された「Ref.C3H5N309」。天然のジルコニウムが素材として使用されており、独特な関節式ラグが印象的なデザインのモデルです。ジルコニウムは金属アレルギーを起こしにくく、軽量でキズが付きにくい、また鮮やかな発色をする等の特徴を持ち、プラチナに並ぶレアメタルのひとつとして注目を集めている素材です。シンガポールのパラゴンセンターで「アワーグラス」が主催した”スーパーマシーンズ&ホロロジカルヒーローズ展”にて初めて展示され、ブラックの『Experiment ZR012』は、当時「アワーグラス」からのみ購入可能でした。生産本数24本の希少モデルです。
【24本の内訳】
ジルコニウム/チタン(12本)、ブラックジルコニウム製(12本)

Estimate : CHF 20,000 – 40,000
SOLD:CHF 163,800(JPY 21,834,540)
上昇率:416%

【出典】フィリップス

第5位 ■LOT.252
【Cartier】
『Paralélogramme』

Point
1936年に販売された名作「タンク アシメトリック」。別名「パラレログラム(平行四辺形)」、「ロザンジュ(ひし形)」としても知られています。ダイヤルは右に30度傾き、インデックスの「12」はダイヤルの右上の角に、「6」はその対角線上の角に置かれている独特なデザインとなっています。「クラッシュ」、「サントレ」などと並べられる【ヴィンテージ カルティエ】の一本で、こちらの個体は保存状態が非常に良かった為、特に評価されました。

Estimate : CHF 30,000 – 60,000
SOLD:CHF 252,000(JPY 33,591,600)
上昇率:420%

【出典】フィリップス

第5位 ■LOT.168
【Omega】
『Speedmaster “Monza”』

Point
1995年にプロトタイプとして製作された『Speedmaster”Monza”』は、世に出ることがなかった一本。ダイヤル6時位置には、赤字で表記された「MONZA」の文字がセットされ、これはあくまで推測になりますが、F1が開催されている、イタリア北部のモンツァ・サーキットに由来しているのではと思われます。(【ロレックス】『デイトナ』の名称がアメリカのフロリダにあるスピードウェイ「デイトナ・インターナショナル」に由来していることもあり、そちらを意識したのではないかと思われます。)シリアルナンバーの刻印がないプロトタイプですが、【オメガ】が正式に存在を認めたお墨付きであることが高評価に繋がりました。

Estimate : CHF 30,000 – 60,000
SOLD:CHF 252,000(JPY 33,591,600)
上昇率:420%

【出典】フィリップス

第4位 ■LOT.284
【Omega】
『Speedmaster “FAP”』「Ref.2998-5」

Point
1959年から1962年のたった三年間しか生産されなかった「Ref.2998」。こちらはペルー空軍のために作られた時計で「Fuerza Aéreadel Peru」の略である「FAP」が刻印されたケースバックを備えています。「ドットオーバー90」ベゼル、ムーブメントが名機「Cal.321」である点も評価されたポイントです。

Estimate : CHF 20,000 – 40,000
SOLD:CHF 189,000(JPY 25,193,700)
上昇率:473%

【出典】フィリップス

第3位 ■LOT.165
【Urwerk】
『King Cobra』「Ref.UR-CC1」

Point
独創的な時計を製作することで有名な【ウルベルク】。『キングコブラ』は、ワールドタイム機構の発明で有名な時計技師「ルイ コティエ」によって製作された【パテックフィリップ】のプロトタイプへのオマージュとして2010年に発売されました。こちらの「Ref.UR-CC1」は、2012年にロンドンにある時計店「マーカス ウォッチ」のオープン10周年を記念して製造されたモデルです。「時間」はケース下部にある直線で、「分」表示はその上に設けられたハッシュマークが付いた線で、「秒」は上部の回転する数字にて確認できます。

Estimate : CHF 30,000 – 60,000
SOLD:CHF 327,600(JPY 43,669,080)
上昇率:546%

【出典】フィリップス

第2位 ■LOT.191
【Rolex】
『Chronograph』「Ref.3668」

Point
1930年代後半頃に販売され、約30本の生産数であったとされる最初期のオイスタークロノグラフ「Ref.3668」。特徴的なエンジンターンドベゼル、リベットブレス、サーモンダイヤルのすべてが保存状態に優れていることも評価されたようです。果たして現存している個体は何本あるのでしょうか。

Estimate : CHF 30,000 – 50,000
SOLD:CHF 277,200(JPY 36,950,760)
上昇率:554%

【出典】フィリップス

第1位 ■LOT.169
【Omega】
『Speedmaster “Apollo Soyuz”』「Ref.ST 145.022」

Point
アメリカのアポロがソビエト連邦のソユーズ宇宙船とのドッキングに成功した(二カ国が協力して実施した有人飛行による初の国際宇宙ミッション)1975年の偉業を称え、翌年1976年に500本限定(全てイタリア市場向け)で発売された「アポロ ソユーズ」。ダイヤル12時位置にミッションのロゴが印字されており、「Speedmaster Professional」の表記がないことも特徴のひとつです。

Estimate : CHF 12,000 – 20,000
SOLD:CHF 113,400(JPY 15,116,220)
上昇率:567%

【出典】フィリップス

まとめ

いかがでしたでしょうか。

今回のオークション結果を見ると、誰もが注目している王道モデルよりも、特徴的なデザインのモデルがランクインしており、予想落札金額を大きく超えた結果となったように思えます。これは、需要と供給によって決まる価格において”希少性”の重要度が証明されたとも言えるでしょう。また、少し無理矢理な理論かもしれませんが、高級時計への注目度が上がり、所謂王道ではなく、”人と違うモノ=時計”を求める人が増えているのではないでしょうか。もしこの考察が当たっていれば、業界にとっては非常に嬉しいことですね!

さて、引き続き同時期に開催された【CHRISTIE’S(クリスティーズ)】、【Sotheby’s(サザビーズ)】の結果についても記事にしていきますので、是非お楽しみに!

ではまた!

Other columnおすすめ〇〇選