さて、今回のコラムでは、フィリップスなどの海外有名オークションをはじめ、近年脚光を浴びている『F.P.ジュルヌ』を取り上げたいと思います。内容に関しては、現行モデルや当店で取扱いをしたモデルを含めての8選とさせていただきます。

『F.P.ジュルヌ』とは

『F.P.ジュルヌ』とは、天才時計師と呼ばれるフランソワ・ポール・ジュルヌ(1957年フランス生まれ)が1999年にスイスで創業したブランドで、現代を代表する独立時計師のひとりです。時計学校を中退後、1977年に時計修理を始め、1982年には初のトゥールビヨン付き懐中時計を製作しました。1989年にヴィアネイ・ハルター(独立時計師アカデミーに所属するフランス生まれの時計師)などと共にTHA社を創業し、1996年にオリジナルムーブメントの開発に着手し、1999年に初のコレクションを発表しました。

そのデザインと、独創的なムーブメントにより21世紀のブレゲ(トゥールビヨン、パーペチュアルカレンダー、ミニッツリピーターといった、現代の超高級腕時計に備えられている機構の数多くを発明したと言われる)とも例えられています。年間生産数は約900本程度と少量生産ですが、ケースやダイヤルも自社で製造しているブランドでもあります。表参道の『F.P.ジュルヌ』の東京ブティックは、世界で初めてのブティックであり、日本で最も有名な建築デザイナーのひとりである安藤忠雄氏のデザインとなっていて、ジュルヌ氏自らがこの場所を気に入りオープンさせた、彼の一番のお気に入りのブティックだそうです。また、『F.P.ジュルヌ』が他の時計ブランドと一線を画す点が、型番(リファレンス)がない点でしょう。そこにもブランドの哲学があるのかもしれませんね。

直近の動向

『F.P.ジュルヌ』といえば、フィリップスの第11回ジュネーブオークションで、パリのジュエラーであるロレンツ・バウマー所有のユニークピースとして競売にかけられたクロノメーター・レゾナンスとトゥールビヨン・スヴランがエスティメイト(落札予想価格、Estimate)を遥かに超える金額で落札されたことが記憶に新しいですね。

クロノメーター・レゾナンスのロット49は104万スイスフラン(約118,000,000円)
トゥールビヨン・スヴランのロット101は140万スイスフラン(約160,000,000円)

という驚異の落札金額となりました。前者のクロノメーター・レゾナンスのエスティメイトが8万~16万スイスフラン(約9,000,000~18,000,000円)、後者のトゥールビヨン・スヴランのエスティメイトが15万~30万スイスフラン(約17,000,000円~34,000,000円)、という予想を大幅に上回る結果となり、このオークションを境に『F.P.ジュルヌ』の知名度と人気が加速したように思えます。

では早速、そんな『F.P.ジュルヌ』の人気おすすめモデルを紹介したいと思います。

おすすめモデル① エレガント 48MM

『F.P.ジュルヌ』が初のレディースコレクションをサイズアップさせ、メンズ向けに発売したモデルが、このエレガント 48MMです。こちらは8年かけて『F.P.ジュルヌ』が開発したムーブメント「Cal.1210」を搭載しています。このムーブメントは文字盤の4時30分位置にモーションディテクターを備えており、腕から外し、不動状態にあると約30分後に止まり、バッテリー節約のためスタンバイモードとなり、針の動きを停止するという機能を備えていて、再び腕に着けると動き出し、最短距離の右または左回りに針が回り、自動的に現在の時間を表示するという機能を備えています。こうして動力を節約することで、日常生活使用では8~10年、スリープモードでは18年もの駆動時間を可能にしているというのだから、その独創的な発想には驚かされますね。

F.P.ジュルヌ エレガント 48MM-1

【出典】F.P.ジュルヌ

夜光は文字盤全体にスーパールミノバが塗られているため、暗闇でも文字盤全体が光り、視認性は抜群です。ミッドナイトブルーのラバーストラップとチタニウム製のホールディングバックルが付属し、チタン製フラットトノーケースは手首の曲線に沿うように設計されており、商標登録もされています。

おすすめモデル② コレクション・ブラックレーベル クロノメーター・スヴラン

年間の時計製作本数が約900本と非常に限られている中で、『F.P.ジュルヌ』の時計オーナーに向けて、PT(プラチナ)ケースとブラック文字盤を備えたブラックレーベル・コレクションを製作したうちの1つが、こちらの時計です。自社のダイヤル工房を持つ『F.P.ジュルヌ』は、ジュルヌの自由な創造性をダイヤルに落とし込むことができます。ダイヤルには、「INVENIT ET FECIT」と刻印されており、キャリバーがジュネーブにある自社工場において発明、製作および組み立てがされたことを保証しているそうです。ブラックレーベル・コレクションは、グラン・ソヌリを除くすべてのモデルが世界のF.P. ジュルヌブティックで購入することができるようです。ブラックレーベル・コレクションは、それぞれのブティックに年間12本のみ製作され、そのうち同じモデルは2本までと生産数が限られています。

FPJ-Gabarit-Montre-CS-FaceHD

【出典】F.P.ジュルヌ

38mmのPTケースに収まった18KRG(ローズゴールド)製の手巻きムーブメントは非常に美しく、『F.P.ジュルヌ』の中で最もシンプルなダイヤルとなっています。3時位置のパワーリザーブインジケーターと、7時半の位置に配されたスモールセコンドがバランスの良い配置となっています。こちらはのブラックレーベル・コレクションは、『F.P.ジュルヌ』の時計オーナーのみが世界のF.P. ジュルヌブティックもしくはエスパス(フランス語で空間という意)でのみ購入することができます。

おすすめモデル③ クロノグラフ モノプッシャー ラトラパンテ

2018年に発表された、クロノグラフ モノプッシャー ラトラパンテです。ケース径は44mmと大きく、厚さは12.1mm、PT(プラチナ)製で重厚感がありますが、大きさを感じさせない、バランスの良いデザインとなっています。『F.P.ジュルヌ』の他モデルにもある特徴的なサブダイヤル、ギョーシェを施した中央部分、アプライドのアラビアインデックス、短めの針といった特徴は踏襲しつつも、この時計固有の6時位置のビッグデイトや、色鮮やかなバイオレット文字盤が洗練された印象です。PT(プラチナ)のブレスレットには、コマの間とコマの両側の先端に緩衝ラバーが付いており、時計の形状を保つよう配慮されています。手巻きムーブメント(Cal.1518)は、80時間のパワーリザーブを備えており、フルに巻き上げた状態から48時間経過後でも、クロノグラフを作動させ、スプリットセコンド機能を使用することが可能です。ラトラパンテ機能と呼ばれるスプリットセコンドクロノグラフは、2つの対象のタイムが同時計測できます。

【出典】F.P.ジュルヌ

モノプッシャーの名前の通り、この時計は2時位置のボタンでスタート・ストップ・リセットまで操作が可能で、4時位置のボタンがスプリットセコンド用に操作できるようになっています。バイオレット文字盤が非常にカッコいいモデルですね。

おすすめモデル④ クロノメーター・ブルー スヴラン・コレクション

クロノメーター・ブルーは、高い精度とシンプルなデザイン、時計としての機能そのものを形にしたモデルです。直径39mmのケースに、青味がかったダークグレー色のレアメタルであるタンタルを採用しています。タンタルは、非常に硬く加工の困難な素材で、時計製造業ではほとんど使われていません。しかし、耐食性、耐摩耗性に優れた完璧な適合性を備える素晴らしいケース素材といわれております。

FPJ-Co-ImageHD-ChronoBleu-2

【出典】F.P.ジュルヌ

ケースの色と調和したダイヤルは、クロムブルーカラーが採用され、アイボリー色の『F.P.ジュルヌ』特有の針とアラビア数字、7時30分位置のスモールセコンドが、ギョーシェ彫りされた文字盤の鏡面仕上げをいっそう際立たせています。シースルーバックからは、約56時間のパワーリザーブを持ち、二つの香箱を並列配置するレイアウトを採用したムーブメントを眺めることもできます。昨今のブルー人気もあり、人と違った時計をされたい方におすすめ出来るモデルです。

おすすめモデル⑤ オクタ・ディヴィーヌ オクタ・コレクション

クロノメーター・オプティマム、カンティエーム・パーペチュアル、オクタ・リュヌに続き、オクタ・ディヴィーヌも42mmサイズが展開されました。42mmサイズのために再考された『F.P.ジュルヌ』のオクタ・ディヴィーヌは、瞬間切り替え式の大型日付表示、ディスクでの秒表示とパワーリザーブ表示、ムーンフェイズ表示が配置されています。ブルースティール針の美しさと、文字盤上にネジ留めされている研磨仕上げのスチール製の枠は『F.P.ジュルヌ』ならではのディテールですね。新たな表示方式を採用したスモールセコンド、独自のバランスで配置された数字が特徴的です。

FPJ-Coll-OctaDivine-Cuir-Platine-G

【出典】F.P.ジュルヌ

オクタ・ディヴィーヌのムーブメント「キャリバー1300.3」は、18KRG(ローズゴールド)素材で自社製造され、5日間以上のパワーリザーブを備えています。オートブロック機能のボールベアリングシステムにより、ほんの僅かな動きでも巻き上げの動力として、最大限に利用することを可能にした機能を備えています。

オクタ・ディヴィーヌは、PT(プラチナ)製、18KRG(ローズゴールド)製の40MMケースもラインアップされています。

おすすめモデル⑥ オクタ・スポーツ チタニウム ラインスポーツ・コレクション

こちらは、『F.P.ジュルヌ』の時計を愛し、マラソンやトライアスロンの競技に参加するコレクターからの要望を受けて製作した、本格的な高級時計製作に基づいたムーブメントを搭載したスポーツウォッチです。ラインスポーツ・コレクションを強化するために『F.P.ジュルヌ』は、アルミニウム製のムーブメントを搭載したオクタのチタニウムバージョンを製作したようです。ハイレベルなスポーツを実践する人々のために考案されているため、軽量化が実現されています。『F.P.ジュルヌ』の自社キャリバーは軽くて耐久性がありますが、そこにプラスして、高級時計にふさわしい特性を備えた素材=スポーツライン専用のアルミニウム合金製の新ムーブメントを開発しました。この極めて軽量な時計は、総重量がラバーストラップを含めて60グラムという驚くべき軽さが実現されています。FPJ-Coll-LineSport-OctaSport-Grey-G

【出典】F.P.ジュルヌ

『F.P.ジュルヌ』の全てのムーブメントに使用されている18KRG(ローズゴールド)からアルミニウムへの移行は、技術的に極めて難しいとされています。さらに、見た目の美しさにもこだわり、色合いの完璧なコントラストを実現するための徹底した研究が行われたとのことです。ケース側面とブレスレットのそれぞれのコマの外端には、斬新な方法で緩衝ラバーが装着されており、時計を衝撃から保護する役目を担っています。リューズとブランドのロゴを刻印したチタニウム製ディプロイメント・バックルには、ラバーの表面加工が施され、バックルに内蔵された特殊システムによって、半コマ分の長さ±5mm以下の範囲で調整する事ができるよう配慮されています。

おすすめモデル⑦ ヴァガボンダージュIII

こちらは、世界初の瞬時切り替え式ジャンピングセコンドを備えた、ヴァガボンタージュ三部作の最終モデルです。PT(プラチナ)製は69本、18KRG(ローズゴールド)製は68本の限定生産と極めて生産数が少ないモデルで、137本だけのために設計された専用ムーブメントを製造しています。

2004年にアンティコルム(Antiquorum 時計専門のオークション会社)30周年チャリティーオークションのために、フランソワ・ポール・ジュルヌは3本の時計を設計しました。それはフラットトノー型のスライディングアワーの時間表示で、文字盤に『F.P.ジュルヌ』のサインの無い時計だったとのことです。この3本の時計はWG(ホワイトゴールド)、YG(イエローゴールド)、RG(ローズゴールド)の仕様でそれぞれ作られ、ムーブメントは全て真鍮製でした。当時、その落札額は予想価格の三倍という驚くべき価格だったようです。このオークションの後、『F.P.ジュルヌ』は2006年にヴァガボンダージュIを発表しました。この名前は、時刻表示がまるで漂流するかのようなスライディングアワーであったことに由来します。このモデルがヴァガボンダージュの始まりで、二本目のヴァガボンダージュは2010年に発表されており、PT(プラチナ)製が69本、RG(ローズゴールド)製が68本、バゲットダイヤモンドをセットしたPT(プラチナ)製が10本製作されたようです。搭載ムーブメントは手巻き式で、デジタル式の時刻表示、6時位置のスモールセコンド、12時位置のパワーリザーブ表示が特徴です。スモークサファイア文字盤には『F.P.ジュルヌ』のサインはなく、18KRG(ローズゴールド)のムーブメントを眺めることができるモデルでした。FPJ-Actu-Limite-V3-Pl-G

【出典】F.P.ジュルヌ

そして今回ご紹介するヴァガボンダージュIIIが登場することとなります。ヴァガボンダージュIIと同じサイズの商標登録済のフラットトノー型ケースに、ルモントワール機構が付いた手巻きのムーブメントを搭載し、その機能によって1秒ごとに時刻表示機構を進めます。中央の文字盤はスモークサファイア製で、アウターダイヤルと共にネジ留めされています。こちらの文字盤にも『F.P.ジュルヌ』のサインは無く、18KRG(ローズゴールド)製のムーブメントが透けて見えるようになっています。10時位置にデジタルの時表示、6時位置に秒表示があり、それぞれが白い枠で囲まれています。分は中心の白い針で表示され、1時位置にはブルースチール針によってパワーリザーブが表示されます。ヴァガボンダージュIとIIのオーナーは、それらと同じシリアル番号のヴァガボンダージュIIIを『F.P.ジュルヌ』のブティックと正規取扱店で優先的に購入することが可能となっているそうです。

A.ランゲ&ゾーネのツァイトヴェルク同様、現代の腕時計の中で最高水準の先進性を備えた、デジタル表示式の機械式時計です。

おすすめモデル⑧ オクタ・リュヌ オクタ・コレクション

時間が読み取りやすく、日付表示が従来の約2倍に大きくなった新しいオクタ・リュヌです。文字盤の2つの部分はどちらもゴールド製で作られております。ダイヤモンドカットを施した数字が配されたひとつ目のオフセットされたインダイヤルは、視認性向上のために拡大されています。ふたつ目の文字盤には11時位置に大きな日付表示、9時位置にレトログラード方式表示のパワーリザーブ、8時位置にはムーンフェイズが配されています。自動巻き機械式ムーブメント「キャリバー1300.3」は、18KRG(ローズゴールド)製でマニュファクチュールで製作され、『F.P.ジュルヌ』独自のオフセットされた22KRG(ローズゴールド)製ローターにより、片方向巻き上げ式で、類を見ない巻き上げ効率となっております。FPJ-Co-Octa-Lune-CuirPl-G

【出典】F.P.ジュルヌ

こちらのオクタ・リュヌは40mmおよび42mmのケース、素材はPT(プラチナ)製もしくは18KRG(ローズゴールド)製がラインアップされています。文字盤はRG(ローズゴールド)もしくはWG(ホワイトゴールド)製で、レザーストラップ、PT(プラチナ)製およびRG(ローズゴールド)製ブレスレットのモデルがあります。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

独創性溢れるデザインと機構は、他のブランドとは異なる魅力を持っていますね。

コミット銀座では『F.P.ジュルヌ』の預かり販売も強化しておりますので、何かございましたら、是非ともご相談ください。

Text By Yoichiro Yamashita

動画はこちらから

↓↓↓

Other columnおすすめ〇〇選