みなさん、こんばんは。

今回は、前回同様にジュネーブで開催されたCHRISTIE‘S(クリスティーズ)11月6日Legendary And Unique Watches、7日Rare Watchesのオークション結果をお伝えしていきたいと思います。

【PHILLIPS(フィリップス)】の結果では、レマニアベースのムーブメントを搭載した『パーペチュアルカレンダークロノグラフ』「Ref.3970」、「Ref.5970」、「Ref.5004」が特に注目されておりましたが、果たして【CHRISTIE‘S(クリスティーズ)】の結果は、、、!?年明け異常な相場感になっていた『ノーチラス』などの動きも含めて、早速見ていきましょう。

※落札価格に別途手数料(26%)が加わった金額がオークション会社への支払い金額となります
※日本円につきましては、コラム掲載時の直近レートを参照しております
※CHF(
スイスフラン)=147.73円
※画像は全て【CHRISTIES】を参照しております

11月6日《Legendary And Unique Watches》

【Lot.2058】
『パーペチュアルカレンダー クロノグラフ』18KYG
「Ref.3970E」

Sold for CHF 138,600(JPY 20,475,378)

レマニアベースのムーブメントを搭載した『パーペチュアルカレンダークロノグラフ』第三世代「Ref.3970」の2ndシリーズにあたるこちらは、スクリューバック、バーインデックス、リーフ針の組み合わせが、クラシカルな雰囲気を演出する人気のモデルです。ホールマークがラグサイドに刻印されており、2ndシリーズは製造個体も少なく、探されている方も非常に多い印象です。付属品完備で、2ndシリーズの後期に見られる裏蓋がサファイアクリスタルバック仕様、且つ交換用のクローズドバック(裏蓋)が付属するという、珍しい個体でした。落札金額を見ると、お得感あるプライスであったのではないかと思います。

【Lot.2059】
『パーペチュアルカレンダー スプリットセコンドクロノグラフ』18KYG
「Ref.5004」

Sold for CHF 390,600(JPY 57,703,338)

『パーペチュアルカレンダークロノグラフ』にスプリットセコンドが加わり、レマニアベースのムーブメントを搭載した「Ref.5004」。1994年から2010年まで製造されていたと言われていますが、年間製造本数も少なく、市場で見かけることはほとんどないモデルです。スプリットボタンを配した大きめのリューズ、太くしっかりとしたラグ、アラビアインデックス×リーフ針の組み合わせ、インダイヤルのデザイン、、、全てにおいて完璧です。こちらは、1997年の製造個体で、保証書、交換用の裏蓋、調整ピン、専用の内箱が付属しておりました。画像で判断すると、若干ポリッシュによりラグ部分に丸みが見られますが、【PHILLIPS(フィリップス) 】の落札金額を大幅に上回る結果となっております。評価されるのは嬉しいことではあるのですが、どんどん遠い存在に、、、どこか寂しい感もありますね。(笑)

11月7日《Rare Watches》

【Lot.34】
『ノーチラス』「TIFFANY&CO.」SS
「Ref.5711/1A-018」

Sold for CHF 3,174,000(JPY 468,895,020)

昨年冬、【PHILLIPS(フィリップス)】での出品発表と同時にリーク情報が拡散され、存在が明らかとなった【TIFFANY&CO.】と【パテックフィリップ】の長きに渡る良好なパートナーシップを祝うに相応しいWネームモデル「Ref.5711/1A-018」。『ノーチラス』の中でも一番人気と言っても過言ではない、SS(ステンレススチール)ケース、自動巻き、三針モデルの「Ref.5711/1A」のフィナーレを飾るべく発表された、豪華コラボレーションと言えるでしょう。限定170本と極めて少なく、ニューヨーク、ビバリーヒルズ、サンフランシスコにある【TIFFANY&CO.】ブティックのみで販売されたようです。発売当時の【PHILLIPS(フィリップス)】のチャリティーオークションでは、日本円にして”約7億3750万円”という驚愕の落札金額でしたが、今回も現在の市況を考えると高額落札となる”約4億7000万円”。いつか扱いたい、夢のような1本ですね。

【Lot.36】
『ノーチラス』18KWG
「Ref.5719/1G-001」

Sold for CHF 327,600(JPY 48,396,348)

こちらは、18KWG(ホワイトゴールド)素材に1,675個のダイヤモンドがセットされた全面パヴェケース(約8.68カラット) の超絶ラグジュアリー仕様のノーチラスです。文字盤、ケース、ブレスレットに惜しげもなく全面セットされたダイヤモンドは圧巻であります。日本円にして5千万円アンダーの落札金額は、リーズナブルに感じてしまうのは私だけでしょうか(笑)

【Lot.83】
『パーペチュアルカレンダークロノグラフ』18KWG
「Ref.5270G-014」

Sold for CHF 138,600(JPY 20,475,378)

2011年に発表された、『パーペチュアルカレンダークロノグラフ』第四世代「Ref.5270」。ムーブメントは、レマニアベース「CH 27-70 Q」から、完全自社製「CH 29-535 PS Q」が搭載されております。発表時から数年間は、18KWG(ホワイトゴールド)仕様のみの展開でした。文字盤デザインは初代、二代目、三代目に分類することができ、こちらは二代目にあたるモデルで、特徴はタキメーターの外周表示の6時位値が下に膨らんだようなデザインとなっている点です。枝番違いでシルバー文字盤も展開されておりますが、生産期間わずか1年という短命モデルであり、特にブルー文字盤は人気が高いです。

【Lot.85】
『ワールドタイム クロワゾネ』PT
「Ref.5131/1P-001」

Sold for CHF 189,000(JPY JPY 27,920,970)

現代版『ワールドタイム』二代目「Ref.5130」をベースに、クロワゾネを配したこちらの「Ref.5131」は、全てのケース素材(YG、RG、WG、PT)で異なる文字盤を備え発売されました。その大トリとして2017年に登場したプラチナ仕様の文字盤は、北極から見た世界地図が描かれています。流通している個体数は極めて少なく、こちらも【PHILLIPS(フィリップス) 】の落札金額を上回る結果となりました。『ワールドタイム』クロワゾネシリーズは、私の中でも特に思い入れがあり、評価が高まっていくのが嬉しい反面、、、どんどん遠い存在となって、、、(笑)お持ちの方、お早めのお話をお待ちしております!!

【Lot.86】
『ミニットリピーター パーペチュアルカレンダー』PT
「Ref.5074P-001」

Sold for CHF 756,000(JPY 111,683,880)

ミニットリピーターにパーペチュアルカレンダーを搭載し、【パテックフィリップ】としては42mmと迫力あるケース径を、重厚なPT(プラチナ)仕様とした「Ref.5074P-001」。非の打ちどころの無い黒文字盤との組み合わせは、半端ない存在感でございます。私が得意げに語るのには訳がありまして、コミット銀座でも幸運にもお取り扱いをしたことがあるモデルなのです。過去の話をしたらキリがないのですが、その時の販売価格は今回の落札金額の半分くらいでした。カセドラルゴングが奏でるミニット・リピーターの音色はとにかく美しく、とてもかっこいいモデルです。

【Lot.87】
『パーペチュアルカレンダー』18KYG
「Ref.3940J-028」

Sold for CHF 132,300(JPY 19,544,679)

1985年から2006年まで、20年以上製造されていたロングセラーモデル「Ref.3940」は、
PT(プラチナ)、WG(ホワイトゴールド)、RG(ローズゴールド)、YG(イエローゴールド)の4素材で展開されていました。以前は比較的市場で出回っていた印象がありましたが、最近は見かけることがめっきり少なくなったと思います。多くのモデルが18KYG(イエローゴールド)の印象で、通常のプリントされたローマンインデックスを配した文字盤は、過去にいくつか見ておりますが、今回出品されている黒文字盤は初めて見ました。更に、レギュラーモデルで存在していなかったことに加えて、製造年が2018年であるから驚きです。唯一無二感を思うと、こちらもリーズナブルな落札金額であったと思います。

【Lot.88】
『パーペチュアルカレンダークロノグラフ』18KRG
「Ref.3990R-010」

Sold for CHF 403,200(JPY 59,564,736)

『パーペチュアルカレンダークロノグラフ』第三世代にあたる、レマニアベースのムーブメントを搭載した「Ref.3970」に、バゲットカットダイヤモンドベゼルを備えた「Ref.3990」。過去に、PT(プラチナ)ケース、18KWG(ホワイトゴールド)ケースは見たことがありましたが、こちらは18KRG(ローズゴールド)ケース仕様。品のあるグレー文字盤のインデックスには、11Pのダイヤモンドがセットされ、ゴージャスでありながら落ち着いた印象を与えております。ちなみに、この存在が知られているのはたったの4本であり、その内の1本という極レア個体です。落札金額は日本円でほぼ6千万円。レア度を考えると、リーズナブルであるかもしれません。こちらの後継モデルが「Ref.5971」になる訳ですが、実は「Ref.3990」が、コンプリケーションモデルに宝石を初めてセットしたモデルなのです。

【Lot.92】
『パーペチュアルカレンダークロノグラフ』18KYG
「Ref.1518」

Sold for CHF 2,214,000(JPY 327,074,220)

最後ご紹介するのは、1940年代に発表された【パテックフィリップ】『パーペチュアルカレンダークロノグラフ』初代モデル「Ref.1518」。製造個体は僅か281本と言われており、見ること自体が夢のようなモデルです。その多くは18KYG(イエローゴールド)ケースと言われ、素材問わず、海外の時計オークションに出品されると高額な落札金額を記録しています。が、、、今回出品されている個体は、ただの「Ref.1518」ではなく、6時位置のインダイヤルに【CARTIER】の文字を刻んだ超希少なWネームモデルなのです。2002年には【CARTIER】でWネームである事が証明されており、画像を見ると文字盤、ケースの状態も良さそうです。ラグ裏にもWネーム個体に見られる刻印がはっきりと確認できます。文字盤上のエナメル質もしっかりと残っており、ホールマークもはっきり見て取れ、ケースのエッジが立ったとても状態が良い1本は、日本円で3億円超ですが納得の落札金額ですね。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

【PHILLIPS(フィリップス) 】の落札結果を受けてなのか、『ワールドタイムクロワゾネ』、『パーペチュアルカレンダー』、『パーペチュアルカレンダークロノグラフ』、特にレマニアベースのムーブメントを搭載したモデルの落札金額が上がっている印象でした。もちろん、『ノーチラス』や『アクアノート』のモデルも複数出品されており、今の時計市況を見るうえで、今回もとても勉強になりました。この後は香港での開催も控えており、オークションはまだまだ続きます!できる限り分かり易く速報でお伝えしていきますので、お楽しみにお待ちください!

ではまた!

阿部泰治のパテック論