【パテックフィリップ】とは、世界三大時計ブランドとして名の挙がるスイスの老舗高級腕時計ブランド。『ノーチラス』や『アクアノート』、『カラトラバ』などの人気モデルを中心に、時計愛好家やセレブ、芸能人から高い人気を集めています。
しかし一般的には、【ロレックス】や【オメガ】のような高い知名度がないのも事実です。では一体、人気の理由とは何なのか。
今回は【パテックフィリップ】の人気や高額になる理由、そしておすすめのモデルを紹介していきます。「パテックフィリップの時計が気になる」「ブランドについて詳しく知りたい!」という方は特に本記事を参考にしてみてください。
【パテックフィリップ】が世界的な人気を博しているのには、大きく3つの理由がございます。
①世界三大時計ブランドというステータス
②美しいデザイン
③高いリセール率=高い資産性
それぞれ詳しく見ていきましょう。
①世界三大時計ブランドというステータス
1839年創業以来、約180年以上に渡り廃業・休業することなく続いているブランド【パテックフィリップ】。時代が大きく移り変わる中で、事業を継続していくことは非常に難しいことです。特に1970年代にクォーツ時計が登場した、いわゆる“クォーツショック”では多くの老舗時計ブランドが廃業や休業に追い込まれましたが、そんな中でも今日に至るまで、一度も途切れることなく経営を続けています。その歴史の長さが格式の高さの所以と言えるでしょう。
また、歴史の長さ以上に重要となるのが、“どれだけ高い時計製造の技術を持っているか”という点。【パテックフィリップ】は、時計の部品製造から組み立てまで全ての工程を自社のみで行う、世界でも数少ないマニュファクチュールブランド。製造が難しいと言われている複雑機構を備えた時計、いわゆるコンプリケーション、グランドコンプリケーションモデルも、全て自社で製造しています。特に永久カレンダー搭載モデルは、他のブランドには真似できない絶対的な地位を誇っています。
②美しいデザイン
*出典元:https://www.patek.com/en/collection/calatrava/5227J-001
『カラトラバ』、『パーペチュアルカレンダー』、『ゴンドーロ』など、高貴なデザインのモデルも多い【パテックフィリップ】。華美な装飾を施さず、ゴールドやプラチナなどの素材を活かし、色の見せ方や全体のバランス、一つ一つの部品の磨き方など、細部にまでこだわって作られています。
中でも代表的なモデルとして挙げられるのが、ラウンド型時計の完成とも称される『カラトラバ』。1932年に、ラウンド型ケースにバーインデックスという非常にシンプルなデザインで登場しましたが、今なおドレスウォッチの王者として君臨しています。
③高いリセール率=高い資産性
非常にリセール率が高いことでも知られており、特に人気モデルの『ノーチラス』は、今や定価の数倍もの金額で取引されることがほとんどです。
特にここ数年は新型コロナウイルスによる不安定な世界情勢が発端となり、高級腕時計に対する資産性の側面が更に強くなりました。時計愛好家からの人気はもちろん、資産として【パテックフィリップ】の時計を選ぶ人が増えたことで、中古価格が全体的に跳ね上がっています。
ここからは【パテックフィリップ】の歴史を、ブランドを語る上で重要なポイントとともに紹介致します。
2人の創業者から始まった【パテックフィリップ】
【パテックフィリップ】の歴史は、亡命将校である『アントワーヌ・ノルベール・ド・パテック氏』と、時計師『フランソワ・チャペック氏』が「パテックチャペック社」を設立したことで始まります。創業時は懐中時計を中心に製造しており、年間で200個もの懐中時計を製造していました。しかし3年後にチャペック氏がブランドを去ることになり、『ジャン・アドリアン・フィリップ氏』が後を継ぐことになります。そして、ブランド名を【パテックフィリップ】に改め、再出発を果たすのです。
【ティファニー】との長年に渡るパートナーシップ
【パテックフィリップ】は、その長い歴史の中で【ティファニー】や【カルティエ】、【ギュブラン】といった宝飾ブランドに時計を納品することもありました。特に【ティファニー】は1851年から関係が続いており、【パテックフィリップ】とのWネームが許された唯一の宝飾ブランドです。2001年にはパートナーシップ150年を記念した限定モデル『T150ティファニー』「Ref.5150」が発売されています。
*出典元:https://www.celebremagazine.world/watches-co/patek-philippe-henry-graves-supercomplication/
また【ティファニー】と【パテックフィリップ】を語る上で外せないのが、『グレーブスウォッチ』です。この時計は、1932年にアメリカの銀行家ヘンリー・グレーブス・ジュニア氏が、【ティファニー】を通じて「もっとも高度で複雑な時計」を依頼したことにより誕生した懐中時計です。
*出典元:https://www.sothebys.com/en/auctions/ecatalogue/2018/important-watches-n09952/lot.242.html
グレーブスウォッチは、クロノグラフをはじめ、ムーンフェイズやパーペチュアルカレンダーなど24もの複雑機構が組み込まれています。2014年のSotheby’s(サザビーズ)オークションでは、約24億円という価格で落札されたことからも、その技巧の高さが伺えます。
スイス初の腕時計を開発
*出典元:https://www.patek.com/en/company/patek-philippe-museum/the-museum
1868年、ハンガリーの『コスコヴィッチ伯爵夫人』のために、ブランド初となる腕時計「No.27368」を開発します。豪華なレクタンギュラーケースにイエローゴールドのブレスレットを装着したこの時計は、スイス初の腕時計と言われています。
それからしばらくの間、経営は順調でしたが、1914年から第一次世界大戦が始まったことで世界恐慌が起こり、【パテックフィリップ】は打撃を受けます。そんな中、救いの手を差し伸べたのが文字盤製造業者の『スターン兄弟』でした。彼らが1929年にブランド資本へ参加したことによって、売上は回復。1932年にスターン兄弟が経営権を取得し、今日に至るまでスターン一族による経営が続いています。
ブランド代表モデル『カラトラバ』の誕生
*出典元:https://www.patek.com/en/collection/calatrava/5227J-001
【パテックフィリップ】の経営体制が変わったことによって、新たなモデルが誕生します。それが『カラトラバ96』。現在では『カラトラバ』の名前で、前述の通りブランドを代表するモデルとなっています。
その後も『ノーチラス』や『アクアノート』など名作時計を次々と生み出してきましたが、同時に複雑機構の特許を多数取得し、時計業界全体の技術力を向上させるのに貢献しています。
【パテックフィリップ】を詳しく知らない方の中には“なぜあんなに高価なんだろう?”と感じている方も少なくないはず。ここからは高価になる理由を解説したいと思います。
高い技術力と品質
*出典元:https://www.patek.com/en/company/savoir-faire/attention-to-details/cases-and-bracelets
【パテックフィリップ】は前述の通り、世界でも数少ないマニュファクチュールブランドとして知られています。「時計ブランドなのだから当然なのでは?」と思うかもしれませんが、ほとんどの時計ブランドは、部品の製造やムーブメントの組立は専門企業に依頼しています。特にムーブメントの部品は100以上から成るため、全てを自社だけで製造するのは高度な製造技術と生産体制を整えていなければなりません。そのような難題をクリアし、全て自社だけで行っている稀有なブランドの商品が高額になるのは、お判りいただけるのではないでしょうか。
職人による手作業のため少量生産
*出典元:https://www.patek.com/en/company/savoir-faire/attention-to-details/cases-and-bracelets
時計の製造技術が進化した現在では、工場で部品やケースを量産する体制が一般的です。しかし【パテックフィリップ】の時計は、製作から仕上げまですべての工程において、熟練の職人による手作業で行われています。それによって、機械製造では成し得ない最高品質と精密な仕上がりを実現しているのです。
職人による手作業は、当然ながら機械のように大量に時計を製造することはできません。時計の生産数が限られる分、価格は高くなります。
最後に、代表的なモデルをご紹介していきたいと思います。
ノーチラス
*出典元:https://www.patek.com/en/collection/nautilus/5712-1A-001
【パテックフィリップ】を代表するスポーツモデルの『ノーチラス』。1970年代のクォーツショックによって窮地に追い込まれましたが、1976年に生み出した大人気モデルであります。当時の高級時計といえばゴールド素材が一般的でしたが、ステンレス素材の高価なスポーツモデルとして時計業界から大きな注目を集めました。潜水艦の船窓からインスピレーションを受けた八角形のベゼルと、左右に飛び出た突起が特徴で、発売されるや否や一躍ヒット作となりブランドの窮地を救いました。
デザインを担当したのは「時計界のピカソ」と称されるジェラルド・ジェンタ氏。【オーデマピゲ】『ロイヤルオーク』、【IWC】『インヂュニア』、【カルティエ】『パシャ』、【ブルガリ】『オクト』など、数々の名作時計を生み出した人物として広く知られています。
・阿部泰治のパテック論 ~第99回~ 【パテックフィリップ】『ノーチラス』「Ref.5711/1A-014」
・阿部泰治のパテック論 ~第108回~今が買い!?『ノーチラス』 「Ref.5980/1A-001」/「Ref.5711/1A-001」
アクアノート
*出典元:https://www.patek.com/en/collection/aquanaut/5167R-001
『ノーチラス』にカジュアル要素をプラスしたモデルが1997年に誕生した『アクアノート』。丸みを帯びた八角形のデザインなどを継承していますが、最大の特徴である左右の突起はありません。登場時は『ノーチラス』ほどの人気はなかったのですが、最近は【パテックフィリップ】を代表するモデルの一つとなっています。
カジュアルな雰囲気をまといながらも、スーツにもあわせやすく普段使いからドレススタイルまで、幅広く活躍してくれます。また、カラーバリエーションが豊富なため、自分好みの時計を見つけられるというのも大きな魅力です。
・阿部泰治のパテック論 ~第98回~『アクアノートTIFFANY&Co.』「Ref.5168G-010」18KWG
・阿部泰治のパテック論 ~第105回~「Ref.5165A-001」『アクアノート』ラージ SS / 「Ref.5167/1A-001」『アクアノート』エクストララージ SS
カラトラバ
*出典元:https://www.patek.com/en/collection/calatrava/5227R-001
【パテックフィリップ】と言われて、『カラトラバ』を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。「ドレスウォッチの完成形」と称され、現在もドレスウォッチの王者として君臨しています。1932年の登場以来、大きな外観デザインは変えておらず、そのことからも、完成度の高さが伺えます。ちなみにこのシンプルな文字盤やケースのデザインは、バウハウスの「機能がフォルムを決定する」という哲学からインスピレーションを受けて設計されています。
『ノーチラス』や『アクアノート』と比べると中古価格は落ち着いていますので、【パテックフィリップ】を手にしたい方におすすめのモデルです。
グランドコンプリケーション
*出典元:https://www.patek.com/en/collection/grand-complications/5270J-001
【パテックフィリップ】の強みである時計製造の技術を結集したモデル『グランドコンプリケーション』。『グランドコンプリケーション』とは、永久カレンダーやトゥールビヨン、ミニッツリピーターなどの複雑機構を2つ以上搭載したモデルのことを指します。当然ながらその製造は非常に高度な技術を要し、中古価格も1000万円からというほど高価なコレクションになります。
ゴンドーロ
*出典元:https://www.patek.com/en/collection/gondolo/7041R-001
「アールデコの精神を再現」をコンセプトに、1993年に誕生した『ゴンドーロ』(アールデコとは1920年代にかけて流行した、幾何学模様をモチーフにしたデザインのこと)。名前は、ブラジルの販売店【ゴンドーロ&ラブリオ社】に納入されていた『クロノメトロ ゴンドーロ』が由来となっています。
トノーやレクタンギュラー、クッション型など、さまざまなケース形を取り揃えているのが特徴で、独創的な雰囲気の時計が多くあります。メンズ・レディースともにラインアップされていますが、レディース向けの時計のほうが多く、特に女性からの人気が高いモデルです。
Twenty-4
*出典元:https://www.patek.com/en/collection/twenty4/4910-1200A-001
アクティブに活動する女性に向けて、1999年に発売された『Twenty-4』。アールデコからインスピレーションを受けたスタイリッシュで上品なデザインが特徴です。
【パテックフィリップ】の時計はほぼ機械式時計となっていますが、クォーツ式時計がラインアップされている『Twenty-4』は、巻き上げや機械式の手入れが面倒に感じる方にもおすすめのモデルです。2018年にはラウンド型ケースのベゼルにダイヤモンドがセットされた、コレクション初となる自動巻ムーブメント搭載のモデルが登場しており、レディースウォッチとして人気を誇っています。
いかがでしたでしょうか。
長い歴史と高度な時計製造技術を持っていることから、世界三大時計ブランドとして君臨している【パテックフィリップ】。ラグジュアリースポーツウォッチとして人気の『ノーチラス』や、ドレスウォッチの完成形とも言われる『カラトラバ』、複雑機構を搭載した『コンプリケーション』など、様々なコレクションが用意されています。
その全てが熟練の職人による手作業で一つ一つ製造されており、その緻密な製造技術から成る時計は、もはや芸術品と言えるでしょう。そんな資産性も併せ持った【パテックフィリップ】の時計を実際に手に取って見てみてください。人気たる所以がお判りいただけると思います。