みなさま、こんばんは!
今週も新連載の《今さら聞けないシリーズ》をお届けしていきたいと思います。この新企画では、高級腕時計にあまり詳しくない方、これから勉強していきたい方へ向けて「今さら聞けないよ!」といった、高級腕時計の基本的な事をわかりやすくお伝えしていきます。
第19回目となる今回は
【高級腕時計入門編】:『パワーリザーブインジケーター』
ゼンマイがどのくらい巻き上がっているかを示す『パワーリザーブ』。そして、世界7大機構のひとつ『パワーリザーブインジケーター』。前者については、ほとんどの高級腕時計所持者が当たり前のように知っている言葉ですが、”インジケーター”という言葉が付いた途端、「どのような機構かいまいちわからない」「どういう仕組になっているの?」という方が意外と多くいらっしゃるかと思います。そこで今回は『パワーリザーブインジケーター』について詳しく解説していきます。是非とも最後までお楽しみください。
『パワーリザーブ』とは?
『パワーリザーブインジケーター』を説明する前に、まずは『パワーリザーブ』について簡単にご説明いたします。
『パワーリザーブ』は、ゼンマイを完全に巻き上げた状態から、それが解けて時計が止まるまでの持続時間を意味しています。機械式時計は、動力であるゼンマイを巻き上げ、それがほどける力で動く仕組みになっています。そのため、搭載しているゼンマイの長さやそれを格納する香箱の数によって、動き続ける時間が変わってくるのです。近年は技術の進歩によって、香箱を大型化したり、2つ3つ搭載したりと、『パワーリザーブ』を延長する「ロングパワーリザーブ」が主流となっています。
『パワーリザーブインジケーター』とは?
『パワーリザーブ』についておさらいしたところで、早速『パワーリザーブインジケーター』について解説していきます。
『パワーリザーブインジケーター』=『ゼンマイの巻き上げ残量がわかる』
『パワーリザーブインジケーター』とは、『パワーリザーブ』を文字盤に表示する機構のことです。通常の機械式時計では、ゼンマイがどのくらい巻き上げられているのかわかりません。しかし、『パワーリザーブインジケーター』を搭載していれば、その残量を把握することができます。特に手巻き式時計では、気づかない間に残量がなくなり時計が止まってしまう事態や、ゼンマイを巻き上げすぎてゼンマイが切れてしまうといった事態を防ぐことができます。
『パワーリザーブ』の表示方法はブランドやモデルによって異なり、ゼンマイの巻き上げ残量を表示すると一言で言えば簡単に思えますが、実際は非常に複雑な作りであり、搭載するには高い技術力が必要となります。
『パワーリザーブインジケーター』の歴史
『パワーリザーブインジケーター』を発明したのは、”時計の歴史を200年早めた”と称される天才時計師「アブラアン=ルイ・ブレゲ」です。18世紀末にジャルニャック・サン・メアール伯爵に向けて製作した懐中時計「ブレゲNo.5」が、その代表的なモデルとされています。
腕時計の時代になってからは、20世紀中盤の自動巻き時計開発競争時期に、いくつかの搭載モデルが散見されます。より多くのモデルで見られるようになるのは、1990年代以降の機械式時計の復活に合わせてです。各ブランドが独自のパワーリザーブを開発し、『ロングパワーリザーブ』を備えたムーブメントも生み出され、それまで時間表示が多かった『パワーリザーブインジケーター』も日付表示になるなど、進化を遂げています。
『パワーリザーブインジケーター』の3つの種類
『パワーリザーブインジケーター』と一口に言っても、3つの種類が存在しますので、ご紹介していきたいと思います。
❶【指針式表示機構】
【指針式表示機構】とは、文字盤に設置した指針で『パワーリザーブ』の残量を表示するものです。大きく分けて、扇形と丸形のタイプがあります。【指針式表示機構】は、このあとご紹介する【ディスク式表示機構】と比べ、必要な歯車の数が12~15枚と沢山必要なため、作りはより複雑となります。
【代表モデル】
【A.ランゲ&ゾーネ】
『ランゲ1』
❷【ディスク式表示機構】
【ディスク式表示機構】とは、小窓から覗くディスクの色で『パワーリザーブ』の残量を表示するものです。【指針式表示機構】よりも少ない歯車で構成できるため、ムーブメントの厚みを抑えられるメリットがあります。歯車が少ない分コストが抑えられ、他のパワーリザーブ表示機構に比べて高いコストパフォーマンスを発揮できます。一方で、その構造上、表示位置を香箱によって制限されるというデメリットも存在します。
【代表モデル】
【ウブロ】
『スプリット オブ ビックバン メカ10 キングゴールド』
❸【リニア式表示機構】
【リニア式表示機構】とは、水平に移動する指針によって『パワーリザーブ』の残量を表示できるものです。【パネライ】が2005年に発表した自社製ムーブメント「Cal.P.2002」に搭載されていますが、その後は開発されていません。それだけ実用化が難しいとされる複雑な作りとなっています。パワーリザーブ表示針は、ラックを水平に移動して残量を示していますが、この水平を維持するのが非常に困難とされているのです。
【代表モデル】
【パネライ】
『ルミノール1950』
まとめ
『パワーリザーブインジケーター』について解説しましたが、いかがでしたでしょうか。
ゼンマイの巻き上げ残量を文字盤で確認できる、非常に実用的な機構である『パワーリザーブインジケーター』。世界7大機構のひとつに数えられる複雑機構であり、ブランドやモデルによって、その種類やデザインは異なります。是非とも、皆さんもご自身の好きな1本を探してみてはいかがでしょうか。
今回もこの記事をご覧頂いたことで、高級腕時計に興味を持っていただければ幸いです!
ではまた!