みなさま、こんばんは!
今週も新連載の《今さら聞けないシリーズ》をお届けしていきたいと思います。この新企画では、高級腕時計にあまり詳しくない方、これから勉強していきたい方へ向けて「今さら聞けないよ!」といった、高級腕時計の基本的な事をわかりやすくお伝えしていきます。
第16回目となる今回は
【高級腕時計入門編】:『ミニッツリピーター』
音で時刻を知らせる複雑機構『ミニッツリピーター』。その美しい音色は聞くものを魅了し、世界三大複雑機構の一つにも数えられ、時計好きなら一度は聞いたことがあると思います。しかし、実際にそれはどのような仕組みで、なぜ生まれたのかといった詳細を知らない人も意外と多くいらっしゃるのも事実。そこで今回は、『ミニッツリピーター』の仕組みや特徴について、分かり易く解説していきたいと思います。
『ミニッツリピーター』とは?
『ミニッツリピーター』=『ゴングで時刻を知らせる複雑機構』
『ミニッツリピーター』とは、ゴングで現在の時刻を知らせる複雑機構のことです。ゴングは3種類の音で時刻を知らせ、一般的には1時間を低音、15分を中間音(低音と高音の組み合わせ)、残りの分を高音で表します。例えば現在の時刻が10時35分であれば、低音が10回、中間音が2回、高音が5回鳴ります。
とても簡単に聞こえますが、機械式時計で行なうのは至難の業。その機構の複雑さから『パーペチュアルカレンダー』、『トゥールビヨン』とともに「世界三大複雑機構」の一つに数えられています。現代では、暗闇で時刻が確認できないというシチュエーションはほとんどありませんが、機構の難易度の高さと希少性、そして耳でも時計の良さを味わえるという観点から、時計コレクターからの高い人気を集めています。
『ミニッツリピーター』の歴史
『ミニッツリピーター』の始まりは”懐中時計”です。1783年、時計界の歴史を200年早めたと称される天才時計師「アブラアン=ルイ・ブレゲ」が生み出し、初めて懐中時計に搭載されました。その後、1892年には【オメガ】が世界初の『ミニッツリピーター』搭載腕時計を発表します。その技術の高さから、一時は技術者への継承が途絶えていましたが、【パテックフィリップ】が『ミニッツリピーター』の技術を再構築し、1989年に創業150周年記念モデルとして復活させることに成功しました。
『ミニッツリピーター』の仕組み
『ミニッツリピーター』は100種類以上にも及ぶ部品が組み合わされており、それを小さな腕時計に搭載することは非常に困難なことです。最も重要なパーツのひとつに”スネイル”と呼ばれる手裏剣型の部品があり、針の位置情報を伝達する役割を果たしています。『ミニッツリピーター』を作動すると、”スネイル”から現在時刻を読み取りハンマーを動かしているのです。
『ミニッツリピーター』と『ソヌリ』の違い
『ミニッツリピーター』に似た機構として、『ソヌリ』があります。
『ソヌリ』は30分や1時間などの時間を、定期的に自動で知らせてくれます。『ソヌリ』を駆動するためのゼンマイが解ける力で自動的に音を鳴らすため、あらかじめゼンマイを巻き上げて動力をチャージしておく必要があります。
一方で、『ミニッツリピーター』はボタンを押したり、スライダーを下げたりする力でゼンマイをチャージし、その解ける力で機構を動かして音を鳴らします。要するに任意で音を鳴らす=作動しなければ音は鳴らないということです。
『ミニッツリピーター』の特徴と魅力
続いて『ミニッツリピーター』の特徴と魅力を3つご紹介します。
1.【音色の美しさ】
1つ目は、言わずもがな『ミニッツリピーター』が奏でる音色の美しさです。夜でも明るく、夜光も発達した現代では、ほとんど使うことはないとも言えますが、それでも今なお多くの人の心を掴んでいるのは、『ミニッツリピーター』にしかない音色を味わえるからです。
2.【機構そのものの希少性の高さ】
『ミニッツリピーター』は、その機構の複雑さから、限られた時計師しか作ることが出来ません。そのため、大量生産はほぼ不可能であり、価格も1000万円以上は軽く超えてしまいます。平均価格は2000~3000万円とも言われており、その希少性とステータスの高さから、多くの時計愛好家の羨望の眼差しを集めています。
3.【ブランド独自の魅力が楽しめる】
各ブランドの『ミニッツリピーター』搭載時計は、機構は同じであっても、その奏でる音色やリズムなどはそれぞれ違います。複雑機構の開発に強みを持つ【パテックフィリップ】の教会の鐘の音のような美しさ、【オーデマピゲ】の音響版にゴングを設置し、ハンマーの振動音を増幅させるシステムなど、どのブランドも個性が溢れています。こういった側面からも、自分好みの『ミニッツリピーター』を見つける楽しみも味わえます。
『ミニッツリピーター』の代表的なモデル
ここからは『ミニッツリピーター』の代表的なモデルをご紹介いたします。
【パテックフィリップ】
『ミニッツリピーター』
「Ref.5078P-001」
【パテックフィリップ】『ミニッツリピーター』の中で、最も人気の高いモデルとしても知られる「Ref.5078P-001」。感動するほどに美しい音色はもちろんの事、グラン・フー・エナメルの白文字盤を備えたシンプルかつ高貴なデザインは、時計好きを魅了し続けて止みません。
当店でも今年(2022年)1本取り扱いましたが、約10日ほどで販売に至り、その人気と希少性の高さが伺えました。
【オーデマピゲ】
『ロイヤルオーク ミニッツリピーター スーパーソヌリ』
「Ref.26591TI.OO.1252TI.01」
【オーデマピゲ】『ミニッツリピーター』の代表作でもある「スーパーソヌリ シリーズ」。
「スーパーソヌリ」は、時計でありながら楽器のような音へのこだわりが特徴となっております。”音質そのものをコンセプトにする”と掲げている通り、音のクオリティを徹底的に重視し、ローザンヌ連邦工科大学との共同開発では、音響学者、研究者、音楽学院の教授、弦楽器職人、そして時計師という、異色の時計開発チームを編成し開発された、まさに逸品です。
以前、ジャパンブティック限定のプラチナ仕様「Ref.26591PT.OO.D002CR.01」を取り扱いましたが、その時に聞いた音色は、今でも忘れることができないほど透き通った音でした。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
世界三大複雑機構の一つに数えられている『ミニッツリピーター』は、希少性・ステータス性はもちろん、やはりその美しい音色が何よりもの魅力です。ブランドによって音色やリズム、開発背景、技術とそれぞれ異なりますので、是非ともお好みの時計を探してみてください!
今回も、この記事を見ていただいたことで高級腕時計に興味を持っていただければ幸いです!
ではまた!