今回は入門編シリーズとして、高級時計業界で耳にする【よくわからないワード】や【略語】について解説していきます。

高級時計を好きな人や詳しい人からすれば聞きなれたワードが、全然知らない人からすると“???”が並んでしまう、、、

どの業界にもありますよね。

実際に私もこの業界に入った子ばかりの頃は、呪文でも唱えられているのか?と思うぐらい全く分からないワードや略語ばかりでした(笑)

本日は、きっと同じような悩みを持っている方がいらっしゃるだろう!そう思い筆を走らせていきたいと思います。

①「PP・AP」

・『パテックフィリップ』(PP)・『オーデマ ピゲ』(AP)

「PPAP」….ペンパイナッポーアッポーペン??
高級時計を全然知らない人がこのワードを聞くと、もしかしたら思い浮かべてしまう方もいらっしゃるのではないでしょうか。(笑)

冗談はさておき、時計業界における「PP・AP」とは、世界三大時計の内の2ブランド。
『パテックフィリップ』と『オーデマ ピゲ』を表します。

さりげない会話に出てくると、普段から馴染みがあるんだなぁ~となる用語ですので、是非とも覚えておいてください。

② 「ディスコン」

・“discontinued” (ディスコンティニュード)を短縮した呼び方

時計業界では、新作発表前によくこのワードが飛び交います。

「ディスコン」=生産(製造)中止=廃盤

「ディスコン」になると噂されたり、「ディスコン」が決定したりすると、時計の相場は大きく変わります。どのモデルが「ディスコン」になるのか世界中が注目しているのですね。最近は実物資産としての側面も併せ持つ高級時計にとっては、このワードには敏感になっておくと良いかもしれません。

③ 「スモセコ」

・スモールセコンドの略

基本的に秒針は中央部分に配置されているケースが多いです。対して、スモールセコンドとは、秒針を小さくし中央ではない場所に配置することを言います。特に6時位置や9時位置に見られることが多いです。

④「バキバキ個体」

・ポリッシュがかけられていないエッジの立った個体=ノンポリッシュ

コミット銀座では時計のケースやブレスにポリッシュがされていない個体を「バキバキ個体」と呼びます。このワードが出たときは優良個体の証です!

当店エグゼクティブアドバイザー兼鑑定士の金子は、このポイントを非常に重視しております。

➄「シングルトリチ」

・シングルバックルでオールトリチウム仕様の個体

ロレックスのセミヴィンテージ商品でよく聞くワード「シングルトリチ」
デイトナ、エクスプローラー、GMTマスターなどのモデルで、R番(1987年)~T番(1996年)辺りの製造個体に見られる人気の仕様です。
「シングル」というのはバックルの仕様がシングルタイプということ。T番以降になるとダブルバックルの仕様に変更されます。もちろん作りはダブルバックルの方がしっかりしていますが、シングルバックルのヴィンテージ感を好まれる方が多く、大変人気があります。

続いて「トリチ」とは?マクドナルドのハンバーガーにもこんなのありましたよね(笑)

これは「トリチウム」のことを指します。U番(1997年)辺りまで、文字盤インデックスや針に使用されていた夜光塗料のことです。個体ごとに「トリチウム」(塗料)が焼け、経年変化が起こります。(*すべてではない)これもヴィンテージの雰囲気を存分に楽しむ要素のひとつですね。ただし、ロレックスでオーバーホールを行うと、トリチウムの針からルミノバの針に交換されてしまうことがありますので要注意。メーカー修理のため、何の疑いもなく修理(交換)してしまう人も多く、オリジナルの状態を維持されたオールトリチウムは個体も少なく、評価と需要が高くなっています。

⑥「トリチノバ」

・トリチウム表記なのにルミノバ仕様の個体

あまり聞きなれないワードだと思いますが「トリチウム」と「ルミノバ」を掛け合わせた用語が、この「トリチノバ」です。

夜光が「トリチウム」から「ルミノバ」に切り替わる移行期間のU番(1997年)辺りに存在する珍しい仕様です。文字盤6時位置に「SWISS-T<25」や「T SWISS MADE T」などの表記があるにも関わらず、インデックスや針は「ルミノバ」仕様なのです。僅かな生産個体数となりますので、今後は面白い個体となる可能性があります。評価が高まった時は手に入れるのが難しくなりそうですね。

⑦「オンリースイス」

・6時位置の表記が「SWISS」のみ

こちらは、サブマリーナー、エクスプローラー、GMTマスターなどで見られる仕様です。「ルミノバ」仕様に変更されたU番(1997年)中期~A番(1999年)中期までの約1年間で製造された個体に存在します。この辺りの年代を買われる際は探されてみるのも面白いと思います。

まとめ

今回の内容はいかかでしたでしょうか。

1⃣「PP・AP」=パテックフィリップ・オーデマ ピゲ
2⃣「ディスコン」=廃盤
3⃣「スモセコ」=スモールセコンド
4⃣「バキバキ個体」=ノンポリッシュ個体=優良個体
5⃣「シングルトリチ」=シングルバックル+トリチウム
6⃣「トリチノバ」=トリチウム表記なのにルミノバ仕様
7⃣「オンリースイス」=文字盤6時位置の「SWISS」表記のみ仕様

それぞれのワードを解説していると、私自身も『昔は知らなかったなぁ』と、なんだか懐かしい気分になりました(笑)

まだまだご紹介しきれていないワードや略語も色々とありますので、引き継ぎ入門編シリーズを楽しみにしていてください。

ではまた!

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