映画やテレビなどで俳優が着用した時計にフォーカスする「Actor’s Watch」。
第92弾の今回は、「ケヴィン・ベーコンの腕時計」をお送りします。

*出典元:https://screenrant.com/

ロックとダンスを愛する高校生を演じた『フットルース』(1984)の世界的大ヒットにより、青春スターとして注目を集めたケヴィン・ベーコン。その後は、モンスター映画の歴史的大傑作『トレマーズ』(1990)をはじめ、『アポロ13』(1995)、『インビジブル』(2002)、『ミスティック・リバー』(2003)など、オタクに愛されるB級SFから、アカデミー賞に絡む大作ドラマまで、幅広いジャンルの作品で活躍を続けています。

全てのハリウッド俳優は、共演者を6人辿っていけば必ずケヴィン・ベーコンに辿り着くという「ベーコン数」なるジョークが生まれるほど、数多くの名作や人気作でスター俳優との共演を続けてきたケヴィン・ベーコン。

今回は、彼が劇中で着用した腕時計に注目して参ります。

アポロ13

APOLLO 13(1995)

*出典元:https://www.netflixlovers.it/

1970年、月面に向けて飛び立ったアポロ13号は、酸素タンクの爆発事故に見舞われる。事故に伴う水と電力の不足により、月面着陸はおろか、計画を中止しての帰還すら絶望的と思われたアポロ13号。極寒と脱水状態により体調の維持すら困難な中、ヒューストン管制センターの面々と共に困難に立ち向かい、地球への生還を目指す乗組員、ジム・ラヴェル(トム・ハンクス)、フレット・ヘイズ(ビル・パクストン)、ジャック・スワイガート(ケヴィン・ベーコン)の3人。

皆が一丸となり、致命的な危機を脱したのも束の間、宇宙船が正しい軌道を外れていることが判明。このままでは生還の望みが完全に絶たれてしまう乗組員たちは、電力不足でコンピューターも自動操縦装置も動かない中、アナログな方法で軌道修正を行なう「賭け」に出る。

*出典元:https://www.chronomaddox.com/

月面着陸は断念したものの、致命的な事故に対して乗組員や地上スタッフが一致団結して迅速かつ正確に対応し、乗組員全員が生還したことで「成功した失敗」「危機管理のお手本」ともいわれるアポロ13号の爆発事故。この実話を基に製作された大ヒットパニック映画『アポロ13』(1995)では、軌道修正に必要な14秒間のブースター噴射を行なうため、ケヴィン・ベーコン演じる宇宙飛行士のジャック・スワイガードが、史実通りオメガ スピードマスター(Ref.105.012による14秒の計測を行い、軌道修正を成功させます。

本作が「時計愛好家が見るべき一本」と呼ばれるのは、スピードマスターが「宇宙飛行士が着ける腕時計」から「宇宙飛行士の命を守った腕時計」となった歴史的な瞬間が描かれているから。そのシーンを演じたケヴィン・ベーコンも、腕時計愛好家にとって「忘れてはならない俳優」と言っていいでしょう。

CITY ON A HILL/罪におぼれた街

CITY ON A HILL(2019)

*出典元:https://www.tvinsider.com/

汚職や人種差別がはびこる1990年代初頭のボストンで、汚職に手を染めながらも数々の実績によって信望を集めるベテラン捜査官ジャッキー(ケヴィン・ベーコン)と、正義感溢れる若き黒人検事補のデコーシー(オルディス・ホッジ)。それぞれ別の事件を捜査する二人は、お互いが捜査する事件に同じ強盗団が関与していることを知り、コンビを組むことになる。

不正や強引な捜査も厭わない汚れ捜査官ジャッキーと、法を遵守するデコーシー検事補。時に対立しながらも協力し合い、事件の真相に近づいていく二人だが、その頃、荒れた生活を送っていたジャッキーの家庭は、崩壊寸前となっていた。

*出典元:https://9gag.com/

汚職捜査官と正義感溢れる検事補という異色のコンビが凶悪犯罪に挑む、重厚なサスペンスドラマ『CITY ON A HILL/罪におぼれた街』(2019)。本作では、嘘も不正も厭わないクズっぷりが素晴らしいFBI捜査官ジャッキーを演じるケヴィン・ベーコン。そんな彼の腕に着けられているのは、ロレックス デイデイト(Ref.18239BIC)と思われる腕時計。

犯罪組織や情報屋との、適正とは言いがたいコネクションを利用して凶悪犯罪を追うジャッキー。相手からの信用がなければ「いい情報」は掴めないでしょうから、信用が第一の政治家や投資家にデイデイトの愛用者が多いのと同じ理由で、この腕時計が選ばれているように思います。「善い信用」か「悪い信用」か、同じ信用でも180度違ってはおりますが。(笑)

レフト -恐怖物件-

YOU SHOULD HAVE LEFT(2020)

*出典元:https://www.goldderby.com/

妻を浴室での溺死事故で亡くした裕福な銀行家テオ(ケヴィン・ベーコン)は、「事故に見せかけて妻を殺した」という世間の噂に不満を募らせていた。やがて若い女優のスザンナ(アマンダ・サイフリッド)と再婚したテオは、妻と、前妻との間の娘エラを連れ、自然豊かな別荘地で休暇を過ごすため、片田舎の一軒家を借りる。

住み始めてすぐ、その家に違和感を覚えるテオとスザンナ。持ち物から浮気が発覚したスザンナが家から追い出されると、徐々に奇妙な現象が起き始める。娘の部屋に現れる謎の人影。メモ帳に残された「帰るべきだったのに」「もう遅い」の文字。やがてその家から逃げる事すらできなくなったテオは、過去の自分と向き合うことを余儀なくされていく、、、

*出典元:https://www.fromthemovie.com/

過去に闇を抱えた銀行家が、家族と休暇を過ごすために借りた奇妙な一軒家で精神的に追い詰められていく心理サスペンス『レフト -恐怖物件-』(2020)。つらい過去がありながらも、若い女優の妻と娘に恵まれた、裕福な銀行家を演じたケヴィン・ベーコン。本作で彼は、革ベルトのタグホイヤー カレラ クロノグラフ キャリバー16(Ref.CBK2112.FC6292)を着用しています。

カジュアルでスポーティーなカレラ クロノグラフですが、ブルー文字盤と革ベルトがエレガンスを感じさせる一本。いかにも「やり手ビジネスマンの休暇」らしい、絶妙な腕時計のチョイスと言えるのではないでしょうか。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

インタビューでは「自分には、こういう役はやらないというルールは無い」と答えているケヴィン・ベーコンですが、個人的には『CITY ON A HILL/罪におぼれた街』のジャッキーのような、ゲスい悪党を演じる彼の演技が一番の好み。川下りを楽しむ休暇中の一家を人質に取る強盗犯を演じた『激流』(1994)や、少年を虐待する少年院の看守を演じた『スリーパーズ』(1996)での演技が特に印象に残っています。

*出典元:https://tn.com.ar/

近年の作品では、冷徹なルックスを活かしてベテランの捜査官や刑事を演じる事が多くなっているケヴィン・ベーコンですが、『COP CAR/コップ・カー』(2015)で演じたのは、私利私欲の為には人殺しも厭わないヤバめの保安官。ケヴィン・ベーコンが悪役を演じる映画は、彼の演技が素晴らしいのはもちろん、主役も引き立って見えるので、安心して映画館に足を運べます。この辺りが「共演者を6人辿っていけば必ずケヴィン・ベーコンに辿り着く」という、引く手あまたの状況を生み出しているのではないでしょうか。

この調子であれば、まだまだ多くの傑作に魅力的な悪役として登場してくれそうなケヴィン・ベーコン。魅力的な悪役が着用する、魅力的な腕時計とは何なのか?これからも存分に見せつけていただきたいたいと思います。

ではまた!

Actor's watch