映画やテレビなどで俳優が着用した時計にフォーカスする「Actor’s Watch」。
第74弾の今回は、「映画に登場したロレックス GMTマスター」をお送りします。

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旅客機の技術革新による「大航空時代」が到来し、複数の時間帯をまたぐ移動や旅行が当たり前となった1950年代。パン・アメリカン航空の要望を受け、24時間表示ベゼル複数の時間帯表示機能を備えたパイロットウォッチとしてロレックスが開発し、1954年に発表された腕時計がGMTマスターです。

今回は、そんなロレックス:GMTマスターが登場する映画に注目してみました。

『007』シリーズに登場したGMTマスター

『007 ゴールドフィンガー』のオナー・ブラックマン

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まずはサブマリーナーと同じく「映画と腕時計」というテーマであれば必ず採りあげられる『007』から。本シリーズでGMTマスターが登場するのは『007 ゴールドフィンガー』(1964)。ショーン・コネリー演じるジェームズ・ボンドが白タキシードにサブマリーナー(Ref.6538)を合わせて登場することでも知られる作品です。

☞#2 ジェームズ・ボンドのサブマリーナー【ショーン・コネリー編】を読む

本作では悪役側ボンドガールのプシー・ガロアを演じるオナー・ブラックマンが、初代GMTマスター(Ref.6542)を着用。銃を片手にボンドと渡り合う女パイロットの腕に、当時としては最先端のパイロットウォッチであるGMTマスターが見事にハマっております。

1960~70年代の映画に登場するGMTマスター

『イージーライダー』のピーター・フォンダ

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アメリカン・ニューシネマの代表作『イージー・ライダー』(1969)。「反体制」「リベラリズム」「ヒッピー文化」など、従来の価値観に反発するカウンターカルチャー台頭の一端を大きく担った映画と言っていいでしょう。

コカイン密売で得た大金を元手に、ハーレーのバイクで放浪の旅に出るアウトローたち。その一人、本作の主人公ワイアット役を演じたピーター・フォンダが身に着けているのは、GMTマスター プロトタイプ。リューズガードの無い金無垢のGMTマスターです。ワイアットは旅立ちの時に「もう自分を縛るものは何もない」とばかりに、腕時計を投げ捨てるのですが、その腕時計はどう見てもGMTマスターではない安物の金時計。ヒッピーでもロレックスの断捨離は難しかった模様です。

☞#19 1960年代後半「激動のアメリカ」とロレックス を読む

『わらの犬』のダスティン・ホフマン

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田舎暮らしを始めた知的で都会的な大学教授が、閉鎖的な地元民との軋轢を募らせ暴力性を目覚めさせられていく『わらの犬』(1971)。クエンティン・タランティーノにも多大な影響を与えたバイオレンス映画の巨匠、サム・ペキンパー監督渾身の一作です。

暴力性に目覚める物静かな教授役のダスティン・ホフマンが身に着けているのは、革ベルトに付け替えられたロレックス GMTマスター(Ref.1675)、青赤のペプシベゼル。昼と夜をあらわすツートーンのベゼルが「理性」と「暴力性」という人間の二面性を表現しているようにも思えるのが面白いところ。

ちなみにこの腕時計は、ダスティン・ホフマン主演の『マラソンマン』(1976)の劇中や、『クレイマー、クレイマー』(1979)の広告写真などでも着用されており、本人愛用の腕時計と言われております。

☞#25 ダスティン・ホフマンのGMTマスター「ペプシ」Ref.1675 を読む

『地獄の黙示録』のマーロン・ブランド

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ベトナム戦争を描いてカンヌ映画祭の最高賞(パルム・ドール)に輝いたフランシス・フォード・コッポラ監督の『地獄の黙示録』(1979)。近年でも劇場で完全版リバイバル上映が行なわれるなど、評価も人気も衰えないベトナム戦争映画における「レジェンド」級作品です。

本作でGMTマスターを着用しているのは、道を踏み外し、ベトナム奥地に自らの帝国を築く元エリート軍人のカーツ大佐(マーロン・ブランド)。一見すると謎のモデルですが、実はこの時計、ベゼルが外されたGMTマスター(Ref.1675)なのです。何もかもを捨ててベトナムの奥地に隠遁する男が着ける腕時計としては、ツートーンのベゼルが派手に見えるので、ベゼルを外して地味な腕時計に見せかけていたそうです。

☞#12 『地獄の黙示録』のセイコーとロレックス を読む

1980~90年代の映画に登場するGMTマスター

『ファイヤーフォックス』のクリント・イーストウッド

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ソ連が開発した最新鋭戦闘機。軍事バランスの崩壊を恐れたNATOが主導する、戦闘機強奪計画のために召集された元米空軍パイロットの活躍を描く『ファイヤーフォックス』(1982)。

本作では、監督と主演を務めたクリント・イーストウッドがGMTマスターを着用しています。その時計は、ブラウンとゴールドのツートーンベゼルの GMTマスター(Ref.16753)、そのカラーリングから通称「ルートビア」と呼ばれる一本。GMTマスターはパイロット役の演技に説得力を持たせてくれますね。

この腕時計は、クリント・イーストウッド主演の『タイトロープ』(1984)や、『ザ・シークレットサービス』(1993)でも着用されている、本人愛用の腕時計です。

☞#1 クリント・イーストウッドとロレックス GMTマスター を読む

『ダンボドロップ大作戦』のレイ・リオッタ

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グッドフェローズ』(1990)や『ハンニバル』(2001)などの出演作で知られるコワモテ俳優、レイ・リオッタが珍しく善人の軍人役を演じた『ダンボドロップ大作戦』(1995)。南ベトナムの村で、死んでしまった守り神の象の代わりとなる、新しい象を手に入れようと奮闘する軍人を演じています。

本作で任務第一の軍人を演じるレイ・リオッタが着用しているのは、ペプシカラーのベゼルが色鮮やかな、ロレックス GMTマスターと思われる腕時計。画像ではフラットなサファイアクリスタル風防に見えますので、撮影時期を考えるとGMTマスター(Ref.16700)あるいはGMTマスターⅡ(Ref.16710)ではないかと思われます。

☞#70 【追悼コラム】R.I.P. レイ・リオッタの腕時計 を読む

2000年代の映画に登場するGMTマスター

『ライフ・アクアティック』のオーウェン・ウィルソン

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ジャック・クストーをモデルにしたと思われる海洋映画監督の晩年を描く、ポップでカラフルな冒険映画『ライフ・アクアティック』(2004)は、今に至るウェス・アンダーソン監督の独特なスタイルが確立された作品と言っていいでしょう。

この映画で海洋映画監督の息子役を演じたオーウェン・ウィルソンが着けている腕時計は、GMTマスターII(Ref.16710)赤青のペプシベゼル。酸素ボンベの確認をする場面など、多くのシーンでその姿がハッキリと確認できます。

この時計は、『ウェディング・クラッシャー』(2005)、『ビッグ・ボーイズ しあわせの鳥を探して』(2011)など、彼の他の出演作でも着用が確認されており、おそらくは彼の愛用品であろうと思われます。

☞#54 ウェス・アンダーソン監督の盟友 オーウェン・ウィルソンの腕時計 を読む

『オーシャンズ13』のブラッド・ピット

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ダニー・オーシャン率いる13人の仕事人たちが、ダイヤの強奪と、裏切り者であるラスベガスのホテル王への復讐を狙うクライムサスペンス『オーシャンズ13』。

この映画では、天才詐欺師オーシャンの右腕、チームのスカウト役であるラスティを演じるブラッド・ピットが、ロレックス GMTマスターII(Ref.116718LN)を身に着けています。金無垢のロレックスを身に着けることで羽振りの良さを見せつけ、スカウト相手に「儲かる話」があることをさりげなくアピールする小道具として、腕時計が用いられています。

☞#31 永遠のイケメン俳優ブラッド・ピットの腕時計 を読む

2010年代の映画に登場するGMTマスター

『ザ・タウン』のジョン・ハム

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アメリカでもっとも強盗が多発する街として知られるボストン州チャールズタウン。親から子へと強盗稼業が受け継がれていくような街で、登場人物たちが運命に逆らい、人生を変えていこうとする姿を描いた『ザ・タウン』(2010)。

ベン・アフレック監督/主演の本作では、強盗たちを追うFBI捜査官フローリー(ジョン・ハム)の腕にGMTマスター(Ref.16700)が着けられています。執拗に強盗一味を追い詰め、任務遂行や検挙の為には手段を択ばない、その「正確無比」なキャラクター性を、腕時計が表現しているようにも思えます。

『ブラックリスト』のジェームズ・スペイダー

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元海軍軍人の国際的犯罪者、レイモンド・レディントン(通称レッド)が、自分の知る凶悪犯罪者のブラックリストをもとに、FBIと協力して事件を解決していくサスペンスドラマ『ブラックリスト』(2013~)。

現在9シーズンまで放送されている本作でGMTマスターⅡ(Ref.16710)を着用しているのは、ドラマの主人公レッドを演じるジェームズ・スペイダー。かつての甘いマスクのイケメン青春スターも御年62歳。三つ揃えのスーツにボルサリーノという、危険な香りを漂わせるイケオジ凶悪犯の腕に、ポップなカラーリングのGMTマスター「ペプシ」が、少しの抜け感を演出しています。

『ゴーン・ガール』のベン・アフレック

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セブン』(1995)や『ファイトクラブ』(1999)で知られるデヴィッド・フィンチャー監督が、闇を抱えた夫婦が巻き込まれる失踪事件を描いた『ゴーン・ガール』(2014)。

世間や警察から疑いの目を向けられながらも失踪した妻を懸命に探す夫、ベン・アフレック演じるニックが身に着けているのは、GMTマスターII(Ref.16710)の青赤ベゼル、通称「ペプシ」。完璧な夫とは言えない、ある意味人間らしい弱みを持ったキャラクターのニックに、ポップな印象の「ペプシ」が少しの柔らかさをもたらしているように思えます。

☞#36 俳優と監督の二刀流 ベン・アフレックの腕時計 を読む

まとめ

いかがでしたでしょうか?

もともと旅客機を操縦する国際線パイロットの腕時計として開発され、世に出た経緯があるだけに、1971年の『わらの犬』の大学教授など、サブマリーナーよりも早い時期から「エリートが着ける腕時計」としてのイメージがあるように思えます。

そして何より、ペプシベゼルの人気に驚かされますね!アップにならなくてもそれと判る青赤のペプシベゼルのGMTマスターは、キャラクターに「何となく」着けさせる腕時計ではありません。監督がそこに何らかの意味意図を持たせて着けさせている腕時計と言っていいでしょう。映画にペプシのGMTマスターが登場したら、そこにはキャラクターを表現する監督の意図があるはず。それが何かを推理しながら観てみるのもオススメですよ。

ではまた!

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