映画やテレビなどで俳優が着用した時計にフォーカスする「Actor’s Watch」。
第62弾の今回は、映画に登場した「超」高額な腕時計をお送りします。

パイレーツ・オブ・カリビアン/生命の泉』(2011)は約469億円、『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019)は約440億円。製作費に糸目をつけないハリウッド映画ですが、それでも劇中に「超」が付くほど高額な腕時計が登場することは滅多にありません。

*出典元:https://comicbook.com/

大きな興収を稼ぐ超大作の多くはアクション映画であり、激しいアクションは腕時計の故障/破損などの際に契約問題に発展しかねませんから、そんなリスクを負ってまで超高額な腕時計を小道具として使う必要性は無いのでしょう。それでも、探せばいろいろと見つかるのがインターネットの良いところ。

今回は「意外にもこんな作品に?」という超高額腕時計をご紹介して参ります。

JUNO/ジュノ

JUNO(2007)

予期せぬ妊娠をしてしまった16歳の女子高生ジュノ(エリオット・ペイジ)。産むか中絶か悩んだものの、産むことを決意したジュノは、親友のリアと協力して里親探しを始める。高級住宅地に住む作曲家のマーク(ジェイソン・ベイトマン)とヴァネッサを「完璧な夫婦」と感じて里親に決めたジュノだが、子供が欲しい妻のヴァネッサに対し、夫のマークはまだ子供を持つ決心がついていなかった。それ知ったジュノはマークを里親にすべきか悩み始める、、、

*出典元:https://www.ilgiornale.it/

パンクロック好きのヒネクレ女子高生、妊娠したジュノの奮闘を描くハートフル・コメディ映画『JUNO/ジュノ』。この映画で高額な腕時計を着用しているのは、ウィル・スミスと共演した『ハンコック』(2008)や、ピクサーの長編CGアニメ『ズートピア』(2016)の主演声優として知られ、本作では、ヒロインのジュノが産もうとする子供の養父に選んだ作曲家、マーク役を演じるジェイソン・ベイトマンです。

*出典元:https://www.rolexforums.com/

この映画で彼が身に着けているのは、ロレックス デイトナ(Ref.6263)と思われる腕時計。黒目パンダのインダイヤルとプラスティックベゼルが特徴的なこの手巻きデイトナ、コンディションにもよりますが、まず1千万円を下ることはありません。ベイトマン演じるマークは、高級住宅地に暮らし、ヒロインのジュノが子供を里親に出そうと考える「完璧な夫婦」の夫。実にいい趣味をしております。

*出典元:https://www.chicagotribune.com/

ちなみにこの手巻きデイトナはジェイソン・ベイトマンが愛用する私物のようで、プライベートやオフショットでも彼が着けている姿が頻繁に撮られております。2400館以上の映画館で公開され、アカデミー脚本賞にも輝き、最終的に2億ドル以上の興収を上げた『ジュノ/JUNO』ですが、元々は7館のみで公開された新人監督の低予算映画。登場人物の腕時計については俳優の私物で賄ったのではないかと思われます。

PARKER/パーカー

PARKER(2013)

天才的な腕を持つ強盗プロフェッショナル、パーカー(ジェイソン・ステイサム)は、ある日、4人の新しい仲間と共に強盗を成功させるが、その4人の裏切りによって大金を奪われ、瀕死の重傷を負わされてしまう。一命を取り留めたパーカーは、復讐のため彼らが潜伏するパームビーチに飛んで捜索を開始する。するとそこで知り合った女性から、4人が新たな強盗を計画していることを知り、復讐の機会をうかがうのだった、、、

*出典元:https://quotesgram.com/

原作はベストセラー犯罪小説家、故ドナルド・E・ウエストレイクが「リチャード・スターク」名義で書き上げた『悪党パーカー』シリーズ。原作では非情で冷徹、かつ暴力的な男として描かれていたパーカーを、ストイックさのある現代的なアンチヒーローに仕上げたのは、『愛と青春の旅だち』(1982)などで知られる職人監督、テイラー・ハックフォードの手腕によるものでしょう。

*出典元:https://openers.jp/

本作の主役、強盗のプロであるパーカーを演じるのはご存知ジェイソン・ステイサム。彼が本作で着けている腕時計は、リシャールミル フェリペ・マッサ ビッグデイトクロノグラフ(Ref.RM011)と思われます。相場や為替によりますが、新品であれば4千万円以上の値が付く腕時計。これだけでパーカーがどれほど腕の立つ強盗なのか一目でわかるというもの。「悪党しか殺さない。汚い金しか奪わない。仕事は完璧に美しく」をモットーとするパーカーの腕には、世界中の富裕層やトップアスリートに愛される、強固で高精度、かつ完璧な美しさを誇るリシャールミルが、まさに最も相応しい腕時計であると言えるのではないでしょうか。

メビウス

MÖBIUS(2013)

ロシア連邦保安庁(FSB)のスパイであるモイズ(ジャン・デュジャルダン)は、モナコでロシア人実業家、ロストフスキー(ティム・ロス)のマネーロンダリング疑惑を調査していた。ロストフスキーが経営する銀行で働いている女性ディーラーのアリス(セシル・ドゥ・フランス)を内通者として雇ったモイズは、やがてアリスと愛し合うようになっていく。しかしアリスの正体はFSBの敵対組織であるCIAに雇われた女スパイだった、、、

*出典元:https://www.lexpress.fr/

国際都市モナコを舞台に、スパイ同士の愛と裏切りが交錯する駆け引きを描き、本国フランスでは初登場第2位となるヒットを記録した本作。この映画で高額な腕時計を身に着けているのは、2011年の第84回アカデミー賞で、みごと主演男優賞の栄冠に輝いた、フランス映画界を代表する名優ジャン・デュジャルダンです。

*出典元:https://www.fpjourne.com/

彼が劇中で身に着けているのは、F.P.ジュルヌ オクタ・カレンドリエ。120時間以上のパワーリザーブとアニュアルカレンダーを備えた世界初の腕時計として知られており、こちらも3千万円以上の値が付けられる高額品です。F.P.ジュルヌはスイス ジュネーブの腕時計ブランドではありますが、創設者であり時計技師でもあるフランソワ・ポール・ジュルヌ氏はマルセイユ生まれのフランス人。この映画と腕時計についてはF.P.ジュルヌの公式サイトにも記載があるので、創設者の母国であるフランス映画界のため、F.P.ジュルヌが一肌脱いで協賛したものではないかと思われます。

F.P.ジュルヌ公式サイト

まとめ

いかがでしたでしょうか?
映画において、超高額な腕時計は贅沢に製作費をかけた超大作ではなく、どちらかといえば予算が限られる単館系映画やB級アクション、衣装や小道具などに徹底的にこだわるヨーロッパ映画に登場するというのが面白いところ。

映画館で超高額な腕時計を目にしたければ、超大作ではなく、小規模だけどこだわり抜いて作られた作品をチェックすべきと言えそうです。そんなわけで今週は待ちに待った単館系新作映画『アネット』と『スパークス・ブラザーズ』を観に行く予定です。面白い腕時計が出てくるか、乞うご期待!

ではまた!

Actor's watch