映画やテレビなどで俳優が着用した時計にフォーカスする「Actor’s Watch」。
第53弾の今回は「ブラッドリー・クーパーの腕時計」をお送りします。

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結婚を控えた男たちのバカ騒ぎを描く大ヒットコメディ映画『ハングオーバー! 』(2009)シリーズで大ブレイクしたブラッドリー・クーパーは、続く『特攻野郎Aチーム-THE MOVIE』(2010)で、イケメンを活かしてブラジャーからミサイルまで何でも調達する特殊部隊員「フェイス」役を好演。2011年には『ピープル』誌から「最もセクシーな男性」に選ばれるなど、トップイケメン俳優の地位を築き上げていきます。

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誰もが彼を「ハリウッドの色男枠」俳優として認め始めたその矢先、今度は2012年から2014年にかけて、3年連続のアカデミー賞(主演男優賞2回、助演男優賞1回)にノミネート。惜しくも受賞はなりませんでしたが、ただの色男ではないことを証明して見せます。かと思えばSFアクション『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』(2014)シリーズでは、宇宙一危険なアライグマこと「ロケット」の声を担当と、実に幅広い仕事っぷり。今回はそんな演技派色男、ときどきアライグマ、ブラッドリー・クーパーの腕元に注目していきたいと思います。

アメリカン・スナイパー

American Sniper(2014)

イラク戦争において敵兵160人を射殺した「伝説の狙撃手」クリス・カイルの生涯を描く、クリント・イーストウッド監督作。
激しい戦いでPTSDに蝕まれながらも、傷つき亡くなった戦友の為、敵スナイパーを追い詰めようと何度も戦地に向かっていくクリス(ブラッドリー・クーパー)。優しい夫であり父であった彼が、戦場に赴くたびに人間性を失っていくことに苦しむ彼の妻や子供たち。戦争に翻弄される人々を描きながら、反戦的にも好戦的にも思える筆致で戦場を描く、勧善懲悪とは程遠い、いかにもイーストウッドらしい戦争映画と言えるでしょう。

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この映画でブラッドリー・クーパーが着けているのは、CASIO G-SHOCK DW6600。実在の天才スナイパー、クリス・カイルが所属するアメリカ合衆国海軍特殊部隊「NAVY SEALs」に採用されていた腕時計です。G-SHOCKは世界中の軍人や特殊部隊員に「命を預けられるタフな腕時計」として愛されており、その事実が映画に反映されたもの。海外AMAZONの、この腕時計の商品ページには、世界中の軍人や兵士と思われる人たちからの熱いレビューが並ぶことでも有名ですね。

アロハ

Aloha(2015)

人工衛星打ち上げの為、それに協力する軍事コンサルタントとして元軍人のブライアン(ブラッドリー・クーパー)がハワイにやってくる。ブライアンが任されたのは、先住民族との折衝。ハワイ育ちの若き空軍女性パイロット、アリソン(エマ・ストーン)と共に、先住民族の長と交渉を重ねるうち、ブライアンとアリソンの間には恋愛感情が生まれていく。そして先住民族たちとの信頼関係も培われていき、いよいよ人工衛星打ち上げの日が近づいたある日、ブライアンはこの打ち上げ計画の真の目的を知ってしまう…。

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ハワイの美しい自然をバックに、人生に挫折した元軍人が愛と人生を取り戻していくハートフルなこの人間ドラマにおいて、彼の腕に着けられている腕時計はデカリューズが特徴のIWC ビッグパイロット Ref.IW500901。こちらは、ブラッドリー・クーパーがプライベートでの着用が何度も確認されている、本人愛用の腕時計と思われます。

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ブラッドリー・クーパーがIWCのアンバサダーに就任したのは2018年。この映画の公開はその3年前ですので、彼がアンバサダーに就任する以前からのIWCファンであることがわかります。46mmのビッグサイズでありながら知性を感じさせるビッグパイロットは、セクシーさと演技力を兼ね備える彼自身を表現する腕時計に思えますね。

運び屋

The Mule(2018)

80歳代で麻薬の運び屋となった退役軍人、レオ・シャープの実話に基づいた、クリント・イーストウッド監督・主演の犯罪映画。

仕事を優先するあまり、娘の結婚式すらすっぽかすほどの頑固者の老人アール(クリント・イーストウッド)が、所有する農園を差し押さえられたことで麻薬の運び屋となる。老人が運び屋だと思いもしない警察の捜査を掻い潜り仕事を続けるアール。金回りが良くなったことで余裕が生まれ、疎遠だった家族や仲間とも和解していくが、やがてお金だけでは守ることができない家族との絆に気付き始める….。

前述の『アメリカン・スナイパー』に続く、クリント・イーストウッド監督とのコンビネーション作品。ブラッドリー・クーパーは、運び屋の正体に気付かずも、アールに接近していく麻薬捜査官、コリン・ベイツ役を演じています。

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この映画でブラッドリー・クーパーが身に着けているのは、ワイス ウォッチ カンパニー アメリカンイシュー フィールドウォッチ。オーデマピゲやヴァシュロンコンスタンタンの工房で腕を磨いたのち、故郷のアメリカで腕時計の製造を2013年に開始した若き時計師、キャメロン・ワイスの手による独立系ブランドの腕時計です。

機械式時計をお手頃価格で提供するという目標のもと、1950年代のヴィンテージな航空機器をモチーフとしたシンプルでスッキリとした佇まいの腕時計を得意とするワイス。年老いたアールとコリン捜査官の若さの対比が強い印象を残すこの映画において、ヴィンテージの味わいを持つ新興ブランドの腕時計には、「過去と現代を繋ぐ」という役割がもたらされているように思えてなりません。

ナイトメア・アリー

*出典元:https://freakingeek.com/
Nightmare Alley(2021)

大恐慌時代のアメリカ。見世物小屋の手品師として働くうち、人の心を操る「読心術」のテクニックを身に着けたスタン(ブラッドリー・クーパー)。野心的な彼は、やがて上流階級に取り入り、詐欺まがいの降霊術で人気と尊敬を集め始めると、新興宗教の教祖として大きな屋敷を手に入れるまで成りあがっていく。しかし心霊ビジネスの規模が拡大したことで、良心の呵責にも苛まれ始めたスタンの人生は、女性精神科医のリリス(ケイト・ブランシェット)と出会ったことで大きく変わっていく…。

*出典元:https://indaily.com.au/

アカデミー受賞作『シェイプ・オブ・ウォーター』(2017)、大怪獣と巨大ロボットの戦いを描いた『パシフィック・リム』(2013)など、モンスター映画を撮らせたら当代随一の冴えを見せるオタク系監督、ギレルモ・デル・トロ監督のノワール・ホラー作品。監督いわく「実際の怪物は出てこないけど、人間の誰しもの心の中に隠れているモンスターを描いた」とのこと。2022年3月25日公開の為まだ未見ですが、非常に楽しみな一作です。

*出典元:https://www.gq-magazine.co.uk/

1930年代を舞台としたこの映画で、ブラッドリー・クーパー演じるスタンの左腕には、1920年代のハミルトン ヘイスティングスウォッチが着けられています。アールデコの時代に相応しいスクエアケースに、レイルウェイを備えた小ぶりな金の腕時計。エレガントですが短針のコブラ針が、第一次世界大戦の終結から間もない時代である事を感じさせます。この時計は、監督の了承を得た上でクーパー自身が選んだものだそうで、このような時代背景にしっかりとマッチした腕時計を選ぶセンスは間違いないものと言えるでしょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか?
甘いマスクを活かしたロマンティックコメディ演技から、ハリウッドの生きる伝説クリント・イーストウッドの厚い信頼を受ける重厚な演技力まで兼ね備えたブラッドリー・クーパー。

近年の監督業製作総指揮も兼任する八面六臂の活躍ぶりを見ると、彼ほどクリント・イーストウッドの後継者として相応しい俳優はいないと思わされます。古きアメリカを体現したクリント・イーストウッドの創作精神が、現代のアメリカを体現する俳優、ブラッドリー・クーパーの腕時計を介して結び付けられ、時代の継承が行なわれるというのは、まさに腕時計という小道具の持つ「妙味」と言えます。

*出典元:https://www.today.com/

ブラッドリー・クーパーの腕時計が、これからも数多くの作品で、そこに相応しい「時代」を描き続けることは間違いないでしょう。映画&腕時計ファンとしては今後も期待していくほかありません。それを楽しみに待つことにいたしましょう。
ではまた!

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