映画やテレビなどで俳優が着用した時計にフォーカスする「Actor’s Watch」。
第154弾の今回は、「スティーブ・カレルの腕時計」をお送りします。

*出典元:https://www.tvinsider.com/

童貞中年を主人公にした大ヒットラブストーリー、『40歳の童貞男』(2005)でハリウッドに童貞ブームを巻き起こした(ような気がする)スティーブ・カレル。あれから20年が経ち、還暦を過ぎた今も、数々のコメディ映画で変顔を披露しつつ、シリアスな映画ではイイ味のナイスミドルも演じられる芸達者のコメディアン。

今回は、そんなスティーブ・カレルが劇中で着用した腕時計に迫ってまいりたいと思います。

40歳の童貞男

THE 40 YEAR OLD VIRGIN(2005)

*出典元:https://100comedy.com/

家電量販店に勤めるアンディ(スティーブ・カレル)は、真面目で人当たりも良く、同僚からの評判も悪くない。しかし彼には、人には言えない秘密があった。それは、40歳にして未だ女性経験が無いということ。そんなある日、同僚で悪友の3人と遊んでいる時、彼は下ネタ話についていけず、童貞だということがバレてしまう。

しかし、そんなアンディにも出会いの日が訪れる。職場の向かいの店でネットオークションを営む女性、トリシュ(キャサリン・キーナー)と知り合った彼は、悪友たちからの指南を受け、彼女をデートに誘うことに成功する。そしていよいよ彼女の家でベッドを共にしようとした時、若い娘が帰ってくる。トリシュは3人の子供を育てるシングルマザーだったのだ。

*出典元:https://productplacementblog.com/

40歳を過ぎてもマンガやテレビゲーム、フィギュア集めなどのオタク趣味がやめられない童貞君の一途な恋心を描き、全世界で大ヒットを記録した『40歳の童貞男』(2005)。スティーブ・カレルの名前を一躍世界に知らしめた本作で彼が着用している腕時計は、カシオ G-SHOCK(Ref.DW5600E)と思われます。

ドレッシー&フォーマルな服装に合わせづらいことから、服装に気を遣わないオタク御用達の高機能ウォッチという偏見が根強いG-SHOCK。そういったステレオタイプを、そのまんまキャラクター表現に用いたチョイスとなっております。

ジ・オフィス

THE OFFICE(2005-2013)

*出典元:https://www.thepioneerwoman.com/

アメリカの製紙会社、ミフリン社のペンシルバニア州スクラントン支社。無神経で無能、空気は読めずセクハラ大好き、なのに自分が周りから慕われていると思い込んで疑わない、自称「世界一の上司」ことマイケル(スティーブ・カレル)は、いつものように、お寒いジョークでフロアを凍り付かせていた。

リストラの噂が流れるオフィスで、冗談で部下にクビ宣告して泣かせたり、よそ見運転で従業員を轢き殺しかけたり、部下の母親と付き合ったりするマイケル。しかしある日、オフィスが縮小されることになり、、、

*出典元:https://www.wristenthusiast.com/

架空の企業内で巻き起こるドタバタした日常を、まるでドキュメンタリーのようなタッチで描いたコメディドラマ『ジ・オフィス』(2005-2013)。元々はイギリスの人気ドラマでしたが、こちらはそのアメリカ版リメイクとなります。本作で、嫌われ者ながら愛すべきダメ上司のマイケルを演じたスティーブ・カレルが着用しているのは、タイメックス パーペチュアルカレンダー(Ref.T2D611と思われるクォーツウォッチ。

ロレックスなどの高級腕時計を着けさせたら「デキる上司」に見えてしまうでしょうから、大衆時計メーカーのクォーツドレスウォッチは絶妙なチョイスと言えるでしょう。また、アメリカを代表する時計メーカーのタイメックスを着用することで、イギリス版とは違う「アメリカ版らしさ」を意識しているのかもしれません。

マネー・ショート 華麗なる大逆転

THE BIG SHORT(2015)

*出典元:https://www.theverge.com/

投資会社を経営するマイケル(クリスチャン・ベイル)は、ある日、CDOという格付けの高い金融証券に、信用力が低いはずのサブプライムローンが組み込まれていることに気づく。CDOの破綻は時間の問題と見抜いたマイケルだが、好景気に沸くウォール街でその予測に耳を傾ける者は1人もいなかった。

マイケルの予測に信憑性を感じた銀行家のジャレット(ライアン・ゴズリング)は、知人のファンドマネージャー、マーク(スティーブ・カレル)に話を持ち掛ける。予測には懐疑的だったマークも、サブプライムローンの多くが、返済できるはずのない低所得層を対象に組まれている事を知り、愕然とする、、、

*出典元:https://p3.no/

リーマンブラザーズの破綻で大儲けした投資家たちの姿を描く金融ドラマ『マネー・ショート 華麗なる大逆転』(2015)。スティーブ・カレルは、破綻を見越して投機を仕掛けた実在の投資家、スティーブ・アイズマンをモデルとした男、マーク・バウムを本作で演じています。

彼が劇中で着用しているのは、ロレックス サブマリーナー(Ref.116610)。実在のアイズマンがサブマリーナーを着けていたかは定かではありませんが、映画に登場する投資家や資産家の腕時計と言えば、以前であれば金無垢のデイデイトが順当でした。それがSS(ステンレススチール)のサブマリーナーに取って代わられたというのは、時代の移り変わりを感じさせます。

スペース・フォース

SPECE FORCE(2020-2022)

*出典元:https://www.nme.com/

アメリカ空軍のナンバー2、マーク・ネアード(スティーブ・カレル)は、母国が宇宙軍の創設を目指していることを知り、思わず吹き出してしまう。やがて新設されたアメリカ宇宙軍の名は「スペース・フォース」。その初代指揮官に任命されたのは、マークだった。

宇宙を軍事的に支配する第一歩として、月面基地の建造を目標に掲げたスペース・フォース。しかし元同僚からは笑われ、協力者であるハズの科学者マロリー(ジョン・マルコヴィッチ)からは「宇宙を戦場にするなど、とんでもない!」と叱られる日々。果たしてマークは、クセが強い部隊員だらけのスペース・フォースを率いていくことができるのか、、、?

*出典元:https://rubberb.com/

アメリカ宇宙軍のゆるゆるな日々を描いたコメディドラマ『スペース・フォース』(2020-2022)。ダメダメ宇宙軍を率いることになった軍人を演じるスティーブ・カレルが本作で着用しているのは、オメガ スピードマスター ムーンウォッチ プロフェッショナル(Ref.311.30.42.30.01.005)と思われます。

宇宙軍!アメリカ!スピードマスター!という、この安直さすらもギャグなのではないかと思わせてくれる一本。本ドラマにオメガが協賛しているかどうかは闇の中です。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

オタクの腕にG-SHOCKダメ上司の腕にタイメックス投資家の腕にロレックス宇宙軍司令官の腕にスピードマスターと、役柄をベタに表現するステレオタイプな腕時計のオンパレードとなりました。

もともとコメディアン出身のスティーブ・カレル。偏見やステレオタイプを笑いに変える事が本職だけに、その人が「いかにも着けてそう」な腕時計の数々が、キャラクターをわかりやすく表現する小道具として必要になるのでしょう。

*出典元:https://www.vanityfair.com/

ウェス・アンダーソン監督の最新作『アステロイド・シティ』(2023)では、コロナに感染したビル・マーレイのピンチヒッターとして見事に代役を果たし、今年公開予定の『ブルー AND THE SECRET FRIENDS』(2024)では声優としての一面も見せるスティーブ・カレル。

偏見とステレオタイプに溢れた彼の腕時計のチョイスをニヤニヤ顔で眺められるのは、「映画好きの時計愛好家」だけに許された秘かな楽しみ。童貞から宇宙軍司令官まで、どんな役柄でもこなす彼が次に身に着ける「いかにも」な腕時計は何なのか?楽しみでなりません。

ではまた!

Actor's watch