みなさま、こんばんは!
今週も新連載の《今さら聞けないシリーズ》をお届けしていきたいと思います。この新企画では、高級腕時計にあまり詳しくない方、これから勉強していきたい方へ向けて「今さら聞けないよ!」といった、高級腕時計の基本的な事をわかりやすくお伝えしていきます。
第4回目となる今回は
【高級腕時計入門編】:『リューズ』
腕時計の操作に欠かせない『リューズ』。「ゼンマイの巻上げ」、「カレンダー調整」、「時刻合わせ」と、その用途はさまざまですが、使い方を間違えると故障に繋がってしまう繊細なパーツでもあります。そこで今回は、意外と知らない『リューズ』の種類や正しい使い方、よくある不具合と対処法をご紹介していきたいと思います。
『リューズ』とは?
『リューズ』=「時計の主たる動作パーツ」
『リューズ』とは、「ゼンマイの巻上げ」、「カレンダー調整」、「時刻合わせ」などの主たる動作に使用するパーツです。その種類には、指で引っ張るだけで引き出せる設計の「引き出し式」と、防水性を確保するためにねじ込む「ねじ込み式」があります。
「引き出し式」は多くの時計に採用されており、固くなっているときは爪を使うと良いですが、あまり力を入れ過ぎると『リューズ』が取れてしまうため、注意が必要です。
「ねじ込み式」は主にダイバーズウォッチに採用されており、文字通りネジのように締め込まれた状態になっているため、操作時はネジを緩めて開放する必要があります。
『リューズ』の役割と使い方
『リューズ』には、上記で述べた「ゼンマイの巻上げ」、「カレンダー調整」、「時刻合わせ」の3つの重要な役割がございます。早速それぞれの使い方を見ていきましょう。
「ゼンマイの巻き上げ」
「ゼンマイの巻上げ」とは、機械式時計の動力である”ゼンマイ“を巻き上げることです。
「引き出し式」
押し込まれている状態の『リューズ』を、そのまま12時方向へ回していきます。
「ねじ込み式」
ねじ込んである状態の『リューズ』を、まずは6時方向へと回して開放し、そのまま12時方向へ回していきます。(*二段階になっているモデルもあり、その場合一段階目の状態で行います。)
「引き出し式」「ねじ込み式」のどちらも、巻上げる際に”キリキリ”と音がします。約30~50回程度『リューズ』を回すとゼンマイが十分に巻上げられます。
※【手巻き式時計】は、ゼンマイが限界まで巻上げられると、それ以上動かなくなる「巻止まり」状態になります。巻止まり状態から無理やり動かそうとすると、ゼンマイが切れてしまうため、注意しましょう。
「カレンダー調整」
日付や曜日などのカレンダー機能を搭載している時計の場合、多くのモデルは『リューズ』を一段階引くと「カレンダー調整」ができるように設計されています。※一部のモデルでは、一段階引いて時刻の調整、二段階引いて日付の調整となっています。
「カレンダー調整」をする際は、時刻がPM8時~AM4時になっていないか、事前に確認しておきましょう。この時間帯は、カレンダー変更の際に使用される歯車が重なるため、歯車の摩耗を促進し、故障リスクが高まります。※「AM」or「PM」が分からない時は、「AM」「PM」の影響を受けない、6時に合わせて調整を行ないましょう。
「時刻合わせ」
「時刻合わせ」を行なう際は、多くのモデルで『リューズ』を最大限引き出した状態(*ほとんどが二段階目)で操作します。ハック機能を持つ時計は”『リューズ』を引き出すと秒針が止まる“という便利な機能を備えており、その状態で合わせたい時間まで回していきましょう。回す方向に関しては、ブランドやモデルによって異なりますが、必ず時計回りに針が動くように動かします。反時計回りに針を動かし続けると、故障の原因となりますので注意が必要です。
よくある『リューズ』の不具合と対処法
『リューズ』は時計操作の中で最も使用頻度が高く、その分不具合も起きやすいパーツです。ここでは、よくある不具合と対処法をご紹介していきます。
「『リューズ』が硬い・空回りする」
『リューズ』が「硬く」動かしにくい場合、『リューズ』と連動している内部パーツが破損している可能性があります。破損を放置すると他のパーツにも影響が出るため、なるべく早めに修理を依頼しましょう。
また、ゼンマイを巻上げているのに「空回り」したような感触がある場合、ゼンマイが切れている可能性があります。こちらも交換が必要なため、修理を依頼しましょう。
「『リューズ』が元の位置に戻らない」
『リューズ』が元の位置に戻らない場合、その多くはゴミやホコリが詰まっていることが原因です。また、重症なケースとして『リューズ』本体や軸に問題があり(損傷や歪み)、動かなくなっていることや、「ねじ込み式」の場合、ネジ山部分が腐食している可能性もあります。いずれにせよ、点検・修理が必要なため、この場合も修理を依頼しましょう。
「『リューズ』が抜けてしまった」
『リューズ』が抜けてしまった場合、1.『リューズ』だけが抜けてしまう、2.『リューズ』と「巻き芯(細い芯)」が一緒に抜けてしまう、2パターンに分かれます。
どちらのパターンにおいても、無理に時計に戻さず、そのまま保管して修理を依頼するようにしましょう。特に「巻き芯」の先は時計の駆動部分に直結しているため、無理に戻そうとすると内部の機械を傷つけてしまうリスクが発生します。
よくある『リューズ』の不具合と対処法をお伝えしましたが、そのいずれの対処法も、プロの修理業者への依頼をすること、ということがお分かりいただけたかと思います。『リューズ』はそれだけ重要な役割を担うパーツであるのです。
まとめ
『リューズ』の役割や使い方について解説いたしましたが、いかがでしたでしょうか。
「ゼンマイの巻上げ」、「カレンダー調整」、「時刻合わせ」など、腕時計の操作の主たる役割を担い、最も仕様頻度が高いパーツのひとつ『リューズ』。改めてその正しい使い方を理解し、みなさんの愛機を大切に使っていっていただければ幸いでございます。
今回もこの記事を見ていただいたことで、高級腕時計に興味を持っていただける方が一人でも増えてくれれば幸いです。
ではまた!