皆さまこんばんは。

今回も各ブランドがどのグループに位置するのか?『高級腕時計ブランドの相関図』についてお話ししていきたいと思います。

前回は、業界でも有数のブランドが所属している世界三大グループを解説しました。
▶▶▶~今更聞けない!!『高級時計ブランドの相関図』【前編】~
まだご覧になっていない方は、ご覧いただいてから今回の記事を見ると、より分かり易いかと思います。

【後編】では独立ブランド独立時計師アカデミー(AHCI)の紹介をメインに、時計業界の今後の市場動向についても少し解説していきますので、ぜひ楽しんでご覧ください。

2022年現在の高級腕時計ブランドの相関図

まずは簡単に前回のおさらいです。時計業界を形成するグループは、複数ブランドが所属する《世界三大グループ》と《独立ブランド》、企業に属さずに時計製造を行う時計師が属する《独立時計師アカデミー(AHCI)》の、大きく3つに分けることができます。

《独立ブランド》

《独立ブランド》とは、その名の通り企業グループの傘下に入らない独立したブランドを指します。相関図を見ていただくと、【ロレックス】【パテックフィリップ】【オーデマピゲ】などの人気ブランドは、どこにも属さず単独で経営していることが分かりますね。企業グループの傘下に入らないため、自由な時計作りができるという強みがありますが、時計製造にかかる全ての作業を自社で基本的に完結しなければならないため、限られたブランドしかこのような経営は難しいとされています。ここではとくに有名なブランドをピックアップしていきます。

ロレックス

《独立ブランド》の中で、最も知名度の高いブランドと言えば、やはり【ロレックス】でしょう。【ロレックス】と【チューダー】の2ブランド展開ながら、圧倒的な人気を誇ります。

現在【ロレックス】は新開発した「Cal.3200」系へのムーブメントへと随時移行しています。先述の通り《独立ブランド》は《企業グループ》と違い、ムーブメントのパーツ供給を他のメーカーから受けられないため、マニュファクチュールとして経営していることが多いです。

【ロレックス】は売上を公開しておらず、詳細な売上高は不明です。しかし、世界的な金融機関グループ〈モルガン・スタンレー〉と、時計産業専門のコンサルタント会社〈リュクスコンサルト〉が共同で行った調査で、概算の売上高が公開されています。その調査によると、2021年は80億スイスフラン(約1兆623億円)、その市場占有率28.8%と圧倒的な数値となっているのです。

パテックフィリップ

言わずと知れた「世界三大時計ブランド」の一つ【パテックフィリップ】。1839年に創業した老舗であり、『ノーチラス』や『アクアノート』『カラトラバ』などの人気モデルを展開しております。

これまで《独立ブランド》としては、【ロレックス】に次ぐ売上高を誇っていましたが、2021年には初めて【オーデマピゲ】に逆転され、大きな話題となりました。しかし、それでも単独で15億3000万スイスフラン(約2,031億円)の売上高と、圧倒的な数値で老舗ブランドとしての地位を不動のものとしています。

⇩⇩【パテックフィリップ】について詳しく知りたい方は、ぜひ併せてご覧ください⇩⇩

【パテックフィリップ】とはどんなブランド?人気や高額になる理由とおすすめモデルを解説

オーデマピゲ

【パテックフィリップ】、【ヴァシュロンコンスタンタン】と並び「世界三大時計ブランド」としてお馴染みの【オーデマピゲ】。ラグジュアリースポーツウォッチ(通称:ラグスポ)の筆頭でもある『ロイヤルオーク』は、多くの時計ファンから根強い人気を集めています。

先ほどもお伝えしましたが、2021年に初めて【パテックフィリップ】の売上高を超えたとして話題となりました。その売上高は、15億8000万スイスフラン(約2,096億円)。今年は『ロイヤルオーク』誕生50周年を迎えるため、さらに記録的な年になるかもしれません。

リシャールミル

世界最高水準の時計のみを製作するという、高級機械式時計を超越した「エクストリームウォッチ」というコンセプトのもと、2001年に彗星のごとく誕生した【リシャールミル】。平均単価2000万円という超高価格帯の腕時計を取り扱うブランドとしても知られ、創業者のリシャールミル氏は、時計師でも時計デザイナーでもなく、自らを「ウォッチコンセプター」と称し、革新的な腕時計を生み出し続けています。価格帯といい斬新なデザインといい、独立起業だからこそ出来る時計作りと言えるでしょう。

2021年の売上高は11億3000万スイスフラン(約1,500億円)と、圧倒的なスピードで、時計業界の中での存在感を強めています。

《独立時計師アカデミー(AHCI)》

*出典元:https://forbesjapan.com/articles/detail/39904

《独立時計師アカデミー(AHCI)》は、《企業グループ》にも《独立ブランド》にも属さない、時計技師から構成された国際的な組織です。伝統的な時計技師の継承を目的として1985年に結成され、【フランソワ・ポール・ジュルヌ】や【スヴェン・アンデルセン】、日本人では【浅岡肇】、【菊野昌宏】が在籍しています。

※【フランソワ・ポール・ジュルヌ】

会員になれるのは、超高度な時計製造の技術を認められた時計師だけです。時計を作れる時計師は数多くいますが、《独立時計師アカデミー(AHCI)》に認定されているのは、世界で数十人しか存在しておりません。

時計業界の今後の市場動向とは

「ETA社」 2020年問題

時計業界の今後を語る上で欠かせないのが、「ETA社」のムーブメント供給問題です。「ETA社」は、多くの時計ブランドにムーブメントを供給するメーカーで、現在は『スウォッチグループ』の傘下に入っています。問題は、「ETA社」が2002年に”2006年で『スウォッチグループ』以外へのエボーシュ(機械式ムーブメントの半完成品)の供給を停止する”と発表したことから始まります。当時「ETA社」以外でエボーシュを供給できるメーカーはほとんどなかったこともあり、多くの時計ブランドが時計の製造ができなくなる可能性がありました。しかし、スイス連邦競争委員会による仲裁と、多くの時計ブランドからの反発によって、2020年まではエボーシュの供給が続けられることとなります。

実際には2020年1月、『スウォッチグループ』外への供給が一時的に停止されることとなるのですが、7月には供給が再開されます。これは、当初グループ外への供給停止を要望する『スウォッチグループ』が、一転”グループ外へも販売したい”と要望したことも大きいとされています。実は2020年の『スウォッチグループ』の上半期の売上高は、前年同期43.4%と大きく減少していたのです。

現状、一旦は落ち着いたかのようにみえるこの問題ですが、今もムーブメント製造の分野では「ETA社」の独占状態が続いているため、今後再び「ETA社」がムーブメントを供給しないと言った場合、同じ混乱に陥るのは目に見えています。そういった点からも、今後のムーブメントメーカーの動向には要注目です。

【ティファニー】が『LVMHグループ』に買収される

ここ数年の時計業界の動向で、もっとも大きなニュースと言えば【ティファニー】が【LVMHグループ】に買収されたことでしょう。『LVMHグループ』には、ファッションに強いブランドが名を連ねていましたが、宝飾の分野が弱いという課題がありました。【ティファニー】を傘下にすることで、宝飾品の分野の強化を狙っていると考えられます。

【ティファニー】は宝飾ブランドとしての人気はもちろん、時計業界にも大きな影響を与えてきたブランドとして知られています。特に時計業界で【ティファニー】と言えば「Wネーム」。【パテックフィリップ】は、1851年に小売パートナー締結をし、2021年には170周年を記念したコラボモデルの『ノーチラス』を発表しましたが、その反響は時計業界を超えて多くの注目を集めることとなります。

このティファニーブルーを採用したダイヤルの『ノーチラス』「Ref.5711/1A-018」は、世界三大オークションハウス【フィリップス】で、なんと6,503,500ドル(約7億3750万円)という価格で落札されたのです。

もちろん、【ロレックス】との「Wネーム」なども存在し、そのどれもがファン垂涎のレアモデルとして広く知られています。このような歴史的背景も持つ【ティファニー】が【LVMHグループ】に買収されたため、今後の【パテックフィリップ】との関係性が危ぶまれましたが、上記の限定『ノーチラス』の登場もあり、現在の関係性は続いていくと予想されております。しかしこの辺りが今後どうなっていくのか!?今後の動向から目が離せないのも事実です。

まとめ

《独立ブランド》や《独立時計師アカデミー(AHCI)》の紹介、そして時計業界の今後の市場動向についての解説はいかがでしたでしょうか。

【前後編】すべての内容をご覧いただければ、意外なブランドが同じグループに所属していることや、ブランド同士の関係性など、時計業界全体についての枠組みがお分かりいただけたかと思います。また、近年は時計業界の注目すべき動向や転換が多く見受けられます。今回ご紹介した『高級腕時計ブランドの相関図』を頭に入れておけば、より時計のトピックも面白く感じていくことでしょう。

今回もこの記事を見ていただいたことで、時計業界に少しでも興味を持っていただければ幸いです。

ではまた!!

コミットtv 八木コラム