時計好きの間で毎年尽きないネタの一つ

生産終了(ディスコン)モデル

近年、毎年その時期が訪れると噂されるモデルは中古市場から姿を消していき、生産終了が決まると同時に価格が高騰していく。

新しいモデルが発表されるというワクワク感が生まれると同時に、価格の上昇を期待した動きが見えるこの現象は、高級時計が実物資産として認められている証拠とも言えるでしょう。

そこで今回は、来年廃盤が噂され市場から玉数が減ってきているモデル『ミルガウス』にスポットライトを当て、改めて歴史や特徴をお話ししていこうと思います。

ミルガウスってどんな時計?

【ロレックス】のプロフェッショナルモデル(=スポーツモデル)には、モデル毎に特化した特徴があります。

『エクスプローラーⅠ/Ⅱ』〈探検家のための時計〉
【極限の耐久性】

『サブマリーナー』〈ダイバーズウォッチの原型〉
【信頼性(防水性)、堅牢性と機能性】

『シードゥエラー』〈深海を制覇した時計〉
【水圧への耐久性】

『ヨットマスター』〈洋上で活躍する時計〉
【鮮烈な個性で海の世界を表現する(機能性)】

『GMTマスター』〈グローバルに活躍する時計〉
【2つのタイムゾーンを同時に表示】

『デイトナ』〈レースのために生まれた時計〉
【レースサーキットのために生まれたクロノグラフ】

では実際『ミルガウス』の特化した特徴は?

〈科学に敬意を表して〉⇒【高性能磁気遮断システム】=《耐磁性》

当時【ロレックス】は《耐磁性》に特化する、医師や科学者に向けたプロフェッショナルモデルの開発を進め、そして科学に敬意を表して完成された時計が『ミルガウス』です。

名前の由来は、フランス語で1000(ミル)と磁束密度の単位(ガウス)から「1000ガウスの磁気に耐えうる時計」という意味で付けられました。

『ミルガウス』の系譜

初代『ミルガウス』「Ref.6541」

1956年に誕生した初代『ミルガウス』「Ref.6541」

※初代ミルガウス「Ref.6541」

磁力を表現したといわれるジグザグしたデザインの秒針「イナズマ針」を持つ『ミルガウス』の記念すべきファーストモデルです。回転式ベゼルと固定式ベゼルの2種類が存在します。

2代目『ミルガウス』「Ref.1019」

続いて1960年代~1988年の期間に登場したのが2代目ミルガウス「Ref.1019」

※2代目ミルガウス「Ref.1019」

このモデルからイナズマ針と回転ベゼルが廃止され、その見た目はガラッと変わりました。ダイヤルはブラックとシルバーの2色展開。ファーストモデルとは打って変わってシンプルなデザインに変更されています。

しかし当時は『サブマリーナー』『エクスプローラー』『デイトナ』の人気が高く、満を持して《耐磁性》に特化した『ミルガウス』を発表したものの、一般ユーザーからの満足のいく支持は得られず、、、

それもそのはず。現代はパソコン、スマートフォン、テレビなどの電子機器が当たり前のように存在しているため”磁気は時計の天敵”という認識があるのに対し、当時は今ほど磁気への認知度が高くなかったのです。

そうして1988年、わずか2世代で『ミルガウス』は一度幕を閉じます。

3代目『ミルガウス』「Ref.116400」

2000年代に入りスマートフォンやパソコンの普及が進み、いわゆる電子機器と呼ばれるモノが社会に定着してきました。

そんな世の中の流れに一般ユーザーももちろん反応し、多くの時計ブランドが磁気への対策をし始め、高級腕時計にとって「耐磁性」という要素は欠かせないものとなっていきます。

このとき【ロレックス】は時計パーツにおいて最も磁気帯びしやすい「ヒゲゼンマイ」の改良に着手し、「パラクロムヒゲゼンマイ」を独自開発します。

※パラクロムヒゲゼンマイ

そして2007年。初代『ミルガウス』「Ref.6541」のイナズマ針と、2代目『ミルガウス』「Ref.1019」のシンプルなデザインを受け継ぎ、見事に進化を果たした3代目『ミルガウス』「Ref.116400」が復活を果たし、当時大きな話題となりました。

白と黒の2色の文字盤がラインアップされ、ケースも40㎜にサイズアップ。

2007年同時期には『ミルガウス』「Ref.116400GV」も発表されます。

※「Ref.116400GV」

型番の末尾にあるアルファベット「GV」は、フランス語でグリーンガラスを意味し、【ロレックス】唯一のグリーンサファイアクリスタル風防を備えたモデルです。

ちなみにこちらは20年ぶりの『ミルガウス』復活ということで、記念モデル的な立ち位置で発表されたそうです。当時は黒文字盤のみの展開でしたが、2014年にZブルー文字盤もラインアップに加わりました。

※「Ref.116400GV」Zブルー文字盤

2015年頃に「Ref.116400」は廃盤になりますが、「Ref.116400GV」は現行モデルとして今なお販売されております。

耐磁性の秘密

新たに復活した3代目『ミルガウス』の特殊な耐磁性の秘密は、磁気に強い「パラクロムヒゲゼンマイ」を使用したムーブメント「Cal.3131」が搭載されている点にあります。

※「Cal.3131」

強磁性合金が使用されたインナーケースを備え、磁束密度を表す「B」が刻印されています。このインナーケースがあることにより、一旦磁気を受け止め外部へと流す役割を果たしてくれます。また、デイト機能が無いのも理由があり、文字盤のカレンダー穴から内部に磁気が侵入してくるのを防ぐ為なのです。

細部にまで磁気対策に拘ったパーツを使用することにより、『ミルガウス』は耐磁性に強い唯一無二の時計としての地位を確立しています。

廃盤の噂

近年、『サブマリーナー』『GMTマスター』『エクスプローラー』などの新作モデルが次々と発表されていますが、そのすべてがキャリバーチェンジを果たしています。

『ミルガウス』は2007年に発表された「Ref.116400GV」が未だ現行モデルとして名を連ねていますので、キャリバーチェンジを果たし、後継モデルが出る可能性大と言われております。

ちなみにここ2~3年程『ミルガウス』は廃盤になると予想され、度々話題になってはことごとく裏切ってくれています。(笑)個人的には来年こそ『ミルガウス』の年になる気が、、、

今から楽しみですね。

まとめ

廃盤が噂される『ミルガウス』について深堀してみましたが、いかがでしたでしょうか。

意外にも3世代しかないモデルの『ミルガウス』ですが、その歴史や背景は、今まで持っていたイメージを覆し、とても興味が湧くモデルであったかと思います。

現在、コミット銀座では『ミルガウス』全モデルの買取強化をしておりますので、ご売却をご検討の方は是非一度お問い合わせください。そして、今回もこの記事を見ていただいたことで『ミルガウス』に興味を持っていただければ幸いでございます。

ではまた!

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