みなさま、こんばんは!

今週も新連載の《今さら聞けないシリーズ》をお届けしていきたいと思います。この新企画では、高級腕時計にあまり詳しくない方、これから勉強していきたい方へ向けて「今さら聞けないよ!」といった、高級腕時計の基本的な事をわかりやすくお伝えしていきます。

第22回目となる今回は

高級腕時計入門編】:耐磁時計

時計は磁気に弱く、磁気の影響を受けると”時間の進みや遅れ”などの不具合へと繋がってしまいます。『耐磁時計』とは、そんな身の回りの磁気を発する製品から”時計を守るための性能を備えた”時計のことです。今回は「時計はなぜ磁気に弱いのか?」「どんな時計であれば磁気に対応できるのか?」とお悩みの方々のために、なぜ時計に耐磁機能が必要なのかといった理由や、おすすめの耐磁時計モデルをご紹介していきます。

『耐磁時計』とは

機械式時計やクォーツ時計は強い磁気にさらされると、精度が狂ってしまう「磁気帯び」状態になってしまいます。磁気を発する製品には、スマートフォンやパソコン、電子レンジ、磁石製のカバンの留具など、私達の身近にあるものが多いです。そのため「スマートフォンの横に時計を置きっぱなしにしてしまった」「カバンの内ポケットに入れたらカバンの留具部分の磁力が時計に移ってしまった」といったことが起きてしまいます。

『耐磁時計』とは《磁気や磁石に強く、磁気帯びしづらい時計》のことを指します。『耐磁時計』の基準は、ISO(国際標準化機構)では20ガウス(1,600A/m)、JIS(日本工業規格)では60ガウス(4,800A/m)の耐磁性が義務付けられています。

なぜ時計は磁気に弱いのか

題名の通り、そもそもなぜ時計は磁気に弱いのでしょうか?

その理由は、ムーブメントのパーツである金属にあります。金属には強い磁気にさらされるとその磁力が移ってしまう、という性質があります。さらに、磁力から離した後も、しばらく移った磁気は維持されてしまいます。そのため、気づかない間に時計を磁力に近づけてしまい、磁気帯び状態になってしまうということが起こるのです。

磁気帯びになることで一番多く発生するのが”精度不良”です。

理由は、磁気帯びによって大きな影響を受けるのが、腕時計の精度を司る”ヒゲゼンマイ“であることが多いためです。ヒゲゼンマイは伸縮を繰り返すことで正確な時刻を刻むのですが、磁気帯び状態となると、その伸縮が乱れてしまい、その結果精度が狂ってしまうのです。さらには、磁気帯び状態のパーツは互いに引き寄せ合ったり反発し合ったりするため、各種歯車の位置がずれてしまし、パーツそのものの破損に繋がってしまうこともあります。ちなみに、クォーツ時計に関しては、機械式時計よりも磁気に強いとされていますが、ステップモーターが磁気の影響を受け、止まってしまうことがあります。

※コミットTV:磁気帯びした時計の精度における検証動画はこちら⇩

どのように耐磁性を確保しているのか

『耐磁時計』はさまざまなブランドから販売されていますが、一体どのようにして”耐磁性”を確保しているのでしょうか。

もっとも一般的とされる方法は、ムーブメント全体を磁力に強い素材でくるむ方法です。この素材の多くが”軟鉄製”となっておりますが、ブランドによっても違い、【ロレックス】の『ミルガウス』では、独自の強磁性合金を使っています。

また、【オメガ】はムーブメントを覆うのではなく、ムーブメント自体に磁力の影響を受けない素材を使って耐磁性能を確保しています。

おすすめ耐磁時計

ここでは、おすすめの『耐磁時計』をご紹介します。

【ロレックス】
『ミルガウス』
「Ref.116400GV」

『ミルガウス』誕生50周年のアニバーサリーモデルとして発表された、人気のイナズマ針を備えたこちらは、【ロレックス】で唯一の”グリーンサファイアクリスタル風防”を採用し、ブラックダイヤルと2014年に加わったZブルーダイヤルがラインアップされています。オイスターケースと強磁性のインナーケースによって、1,000ガウス(80,000A/m相当)の耐磁性能を備えています。

【オメガ】
『シーマスターアクアテラ 15,000ガウス』
「Ref.220.10.41.20.01.001」

15,000ガウス(1,200,000A/m)の耐磁性能を備えた【オメガ】の『シーマスターアクアテラ』は、ムーブメントに磁力の影響を受けない”シリコン”や”チタン”を使うことによって、高い耐磁性能を確保しています。『シーマスター』本来の防水性能も維持し、日常使いをはじめマリンスポーツといったシーンでも安心して使うことが出来ます。

【ヴァシュロンコンスタンタン】
『オーヴァーシーズ』
「Ref.4500V」

2016年に登場した『オーヴァーシーズ』の第3世代にあたるこちらは、シンプルな3針でありながら軟鉄製耐磁構造のケースを採用し、300ガウス(25,000A/m)の耐磁性能を獲得。150m防水と合わせて、雲上ブランドの中では頭一つ抜きん出たスペックを備えています。

まとめ

『耐磁時計』について解説しましたが、いかがでしたでしょうか。

インターネットの普及や技術の進歩によって、私たちの身近には多くの磁気・磁力が存在しています。そんな磁気・磁力から時計を守ってくれる実用的な機構を備えた『耐磁時計』は、一見すると内部構造のため分かりづらいですが、各ブランドからさまざまなモデルが発売されています。ぜひとも皆さんも、ご自身の好きな『耐磁時計』を探してみてください。

今回も本記事を参考に、一人でも多くの方が高級腕時計に興味を持ってくだされば幸いです!

ではまた!

コミットtv 八木コラム