映画やテレビなどで俳優が着用した時計にフォーカスする「Actor’s Watch」。
第107弾の今回は、「『刑事コロンボ』に登場した腕時計」をお送りします。

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1968年から2003年にかけて全69話が制作され、世界中で長きに渡り人気を博したサスペンスドラマ『刑事コロンボ』。日本でも、NHKや「金曜ロードショー」などでの放送を楽しみにされていた方も多いのではないでしょうか。

いつでもどこでもヨレヨレのコートにボサボサ髪、こもった声で「ウチのカミさんがねぇ…」(CV:小池朝雄/石田太郎)と愚痴をボヤきながら犯行現場に現れる刑事コロンボ(ピーター・フォーク)。キレ者然としたシャーロック・ホームズやエルキュール・ポワロとは違い、一見すると頼りなさげだけれど、僅かな証拠や証言の矛盾も見逃さず、にこやかに犯人を追い詰めていくコロンボのキャラクターは後年のミステリー作品にも大きな影響を与え、『古畑任三郎』シリーズなど、数多くのフォロワー作品が世界中で作られています。

今回の「Actor’s Watch」は、そんな人気ドラマシリーズ『刑事コロンボ』に登場した腕時計に注目して参ります。

指輪の爪あと(第4話)

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DEATH LENDS A HAND(1971)

大物財界人のアーサーは、大きく歳の離れた若い妻の浮気調査を私立探偵のブリマー(ロバート・カルプ)に依頼する。首尾よく夫人の浮気の証拠を掴んだブリマーだが、依頼人には事実を隠し、浮気をネタに彼女を脅迫しようと考える。

しかし、夫人はブリマーの脅しに従おうとせず口論となり、カッとなったブリマーに殴られて倒れた彼女は、ガラステーブルに頭を強く打ち付けて亡くなってしまう。その後、我に返ったブリマーは死体を廃車置き場へと運び、物取りの犯行に見せかけようとするが、、、

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1971年に放送された第4話『指輪の爪あと』で印象的な腕時計を着用しているのは、探偵社の社長として成功を収めているブリマーを演じたロバート・カルプ。彼は『刑事コロンボ』シリーズにおいて、都会的でスマートな成功者やインテリの犯罪者を3回も演じていることで有名ですが、記念すべき1回目の出演がこの『指輪の爪あと』。

トボけた風体のコロンボを見下し、犯行後も自ら捜査に協力して進展を窺うキレ者の探偵社社長ブリマーが着用している腕時計は、ロレックス GMTマスター(Ref.1675/8)。いかにも成功者らしく、ロレックスの金時計を着けこなしています。

アリバイのダイヤル(第12話)

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THE MOST CRUCIAL GAME(1972)

フットボールチームのゼネラルマネージャー、ハンロン(ロバート・カルプ)には、スポーツビジネス界のトップを狙うという野心があった。しかしオーナー企業の2代目社長エリックは、能力もやる気も欠けた男。ハンロンはエリックを殺して会社を乗っ取り、事業拡大を目指そうとする。

フットボールの試合観戦というアリバイ作りを行なったハンロンは、ボックス席からこっそりと抜け出し変装してエリックの自宅に忍び込むと、彼を氷塊で撲殺。死体と氷塊をプールに投げ込み、溺死事故に見せかけようと企てる。

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ロバート・カルプが再び犯人役を演じた1972年放送の第12話『アリバイのダイヤル』。『指輪の爪あと』では成功者を演じたカルプですが、本作では成功者の座を窺い、その邪魔者を消そうとする野心家を演じております。

試合観戦を抜け出してのアリバイ工作をコロンボがどう崩すのかが見どころの本作。チームのゼネラルマネージャーを演じるカルプが着用しているのは、やっぱりロレックス GMTマスター(Ref.1675/8)。本人の愛用腕時計かもしれません。

野望の果て(第20話)

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CANDEDATE FOR CRIME(1973)

組織犯罪撲滅を公約に掲げて選挙戦を繰り広げる上院議員候補、ヘイワード(ジャッキー・クーパー)のもとに犯罪組織からの脅迫状が届く。しかしそれは世間からの注目を集める為、選挙参謀のハリーが仕組んだ自作自演のやらせだった。

そんな中、愛人との関係をハリーに咎められたヘイワードは、彼を疎ましく思い殺害を決意する。 ヘイワードから「愛人との関係を清算しに行くので、護衛の警察の目を引き付けるために自分に変装して欲しい」と頼まれたハリーは、彼の帽子と上着を着たところを撃ち殺される。ヘイワードは「自分に間違われたハリーが犯罪組織に撃たれた」という筋書きで警察の目を欺こうとする。

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自分を操り人形のように扱う選挙参謀に嫌気が差した上院議員候補が、不倫の清算を命令されて犯行に及ぶ、1973年制作の第20話『野望の果て』。本作に登場するのは「被害者が身に着けていたものと同じ」としてコロンボが持ってきたセイコー5 スピードタイマー(Ref.6139-6000)

腕時計に工作して「時計が止まった時刻=犯行時刻」をアリバイトリックにしようとしたヘイワードに対し、コロンボは「このセイコーの腕時計は、滅多なことでは壊れて止まることはないんですよ」とセイコー社員のクレーマー対応的な追い詰め方をしていくのが、実に印象的です。

意識の下の映像(第21話)

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DOUBLE EXPOSURE(1973)

心理学研究所の所長ケプル(ロバート・カルプ)は、愛人を使って大手企業の重役にハニートラップを仕掛け、それをネタに強請を働いていた。しかし強請を告発しようとする社長が現れたことで、ケプルは彼の口を封じる計画を立てる。心理学を用いた広告フィルムの試写会中、サブリミナル効果を用いて彼が喉の渇きで席を立つように仕向けたケプルは、水飲み場で彼を射殺。

計画通り、浮気された社長夫人が夫を射殺したかのように現場を偽装したケプルだが、犯行を映写技師に目撃されていたことで予期せぬ第二の殺人事件が起きてしまう。

*出典元:https://www.rolexforums.com/

ロバート・カルプが3回目の犯人役を演じた1973年放送の第21話『意識の下の映像』。サブリミナル映像をトリック&事件解決に用いているのは、当時としてはかなり斬新だったのではないでしょうか。ロバート・カルプの鼻につくインテリ演技が冴えわたっています。

本作に登場する腕時計は、もうお判りですね。ロレックス GMTマスター(Ref.1675/8)です。『指輪の爪あと』『アリバイのダイヤル』『意識の下の映像』でロバート・カルプが演じる犯人は、それぞれ全く無関係な別人であるにも関わらず、何故か全員、緑のジャケットに茶色のパンツをコーディネートするという「お遊び」が行なわれており、それに合わせて腕時計も敢えて同じものを着けたのかもしれません(衣装共々、ただの私物かもしれませんが)。

魔術師の幻想(第36話)

*出典元:https://slate.com/

NOW YOU SEE HIM(1976)

人気マジシャンのサンティーニ(ジャック・キャシディ)は、マジックショーのクラブオーナーに「元ナチス親衛隊」という秘密の過去を知られていた。自分の隠された経歴をネタに多額の公演料をピンハネされていたサンティーニは「逆らえば、お前の過去を公表する」と脅されたことでオーナーの殺害を決意する。

大仕掛けな脱出マジックの最中に舞台を抜け出し、オーナーの部屋で彼を撃ち殺して舞台に戻ったサンティーニ。「殺害時刻にはマジックの舞台に立っていた」という彼のアリバイを、コロンボは崩すことができるのか?

*出典元:https://www.spotern.com/

映画『アイガー・サンクション』(1975)でクリント・イーストウッドとの共演経験もある名優、ジャック・キャシディ。彼が手品のトリックを犯行に用いるマジシャンを演じた1976年放送の『魔術師の幻想』では、時間を計る彼の腕に50年代製のルクルト メモボックス Cal.814(Ref.不明)が着けられています。

文字盤のロゴに「Jaeger」の表記が無いのは、Jaguar社が既に登録商標を行なっていたアメリカにおいて、それと酷似した「Jaeger」の商標使用を避けたから。つまりこのメモボックスは「アメリカ流通モデル」ということになるでしょう。アラームウォッチであるメモボックスは「〇〇分以内に脱出」など、舞台上で時間をしっかり計る必要があるマジシャンには最適かもしれません。アラーム音でトリックがバレる気がしなくもないですが。

ルーサン警部の犯罪(第38話)

*出典元:https://streamondemandathome.com/

FADE IN TO MURDER(1976)

コロンボと彼のカミさんも大好きな刑事ドラマ『ルーサン警部』の主役を演じる人気俳優、ファウラー(ウィリアム・シャトナー)は、朝鮮戦争の脱走兵だったことを番組の女性プロデューサーに知られ、それを理由に強請られていた。

口封じの為に彼女を殺す計画を立てたファウラーは、睡眠薬を飲ませて眠りに落ちた付き人に「一瞬だけ寝落ちした」と錯覚させるトリックを仕掛けてアリバイ工作を行うと、撮影所の衣装や小道具を使い、強盗になりすまして買い物中の彼女を射殺しに向かう。

*出典元:https://www.spotern.com/

ドラマ『刑事コロンボ』の劇中劇と言える『ルーサン警部』の主演俳優ファウラーを演じているのは、これまた大人気SFドラマ『スター・トレック』シリーズでカーク船長を演じたウィリアム・シャトナー。1976年放送の『ルーサン警部の犯罪』は、シャトナーが「ルーサン警部としてファウラーを疑う」ようなシーンがあるなど、メタ要素も感じられる異色作です。

本作に登場する腕時計は、ファウラーが付き人に睡眠薬を盛るシーンでハッキリ見える、モバード デイトロン(Ref.HS360)。モバードとゼニスが共同開発した「初代エルプリメロ(Cal.3019 PHC)」搭載モデルです。

死を呼ぶジグソー(第64話)

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UNDERCOVER(1994)

ある日、アパートの一室で相撃ちとなった二人の遺体が発見され、そのうち一人はジグソーパズルのピースの様に切り取られた写真の一部を握りしめていた。翌日、事件を調査するコロンボの元に、保険会社の調査員を名乗る男アーヴィング(エド・ベグリー・ジュニア)が訪れ、今回の事件と7年前の400万ドルが盗まれた銀行強盗事件との関連について話し出す。

保険調査の中で、とある人名リストを預かったアーヴィングは、それが「写真のピースを持つ人物リスト」であり、ピースを全て繋ぎ合わせると、行方不明になっている400万ドルの所在がわかるはずとコロンボに説明する。

強盗事件解決の為にリストの人物に当たることにしたコロンボだが、その周りで不穏な事件が起こり始める。

*出典元:https://www.columbo-site.freeuk.com/

1979年~1988年の中断を経て、1989年からシリーズ再開となった『新・刑事コロンボ』シリーズ。旧シリーズから10年が経ち、貫禄が付いて日本語吹き替えも小池朝雄から石田太郎にバトンタッチしたコロンボや、旧シリーズより派手さやドラマチックさが重視された内容は賛否両論を巻き起こしました。

そんな『新・刑事コロンボ』の一作、1994年放送の『死を呼ぶジグソー』ではコロンボが着用している腕時計が判明!それは、ビクトリノックス スイスアーミーウォッチ(Ref.V.25221)でした。スイスのマルチツールメーカーとして知られるビクトリノックス社の、赤いベゼルが印象的なクォーツウォッチです。コロンボがロレックスなどの高級腕時計を着けたら「切れ者」警部として容疑者から警戒されてしまうことは間違いありません。チープというほどではない2万円前後のアウトドアウォッチは、コロンボが着けるのに、いかにも丁度良いチョイスではないかと思います。

復讐を抱いて眠れ(第67話)

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ASHES TO ASHES(1998)

かつての愛人で、今はゴシップレポーターとして活躍するヴェリティーから「過去の悪事を自分のテレビ番組で暴露する」と言われた大手葬儀社の社長プリンス(パトリック・マクグーハン)。悪事の発覚を恐れたプリンスは、葬儀社の遺体処理部屋で彼女を殺害する。

別の遺体と彼女の遺体をすり替えて火葬し「遺体なき殺人」を完成させたプリンスは、彼女の自宅に侵入して自分に関する記事を消し去り、麻薬に関する記事を新たに作成。彼女が麻薬組織に誘拐されて行方不明になったように見せかけ、完全犯罪を目論むのだった。

*出典元:https://www.spotern.com/

被害者の死体を消し去る葬儀社社長の犯罪を描いた、1998年放送の第67話『復讐を抱いて眠れ』。本作で犯人役を演じたのは、現在も熱狂的ファンによるシナリオ議論が行われているカルトSFドラマ『プリズナーNo.6』で主演、企画、製作総指揮を務めた、パトリック・マクグーハン。なんと『刑事コロンボ』シリーズでは、4回目の犯人役となっています。

そんな彼が劇中で身に着けているのは、カシオ スタンダード(Ref.MQ-24-7B2)。1990年代は、ジェームズ・ボンドですらクォーツウォッチを着けていた「機械式時計復興前夜」とも言える時代。このチープカシオは、そんな時代を象徴する一本と言えるでしょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

10年の中断がありつつも、35年もの長期間制作が続けられた刑事ドラマだけに、機械式時計の名品から安価なクォーツウォッチまで、実にバラエティー豊かなラインナップとなりました。

*出典元:https://www.theguardian.com/

また「時刻トリックやアリバイ工作で腕時計が映るシーン」も多く、本作のような本格推理ドラマは、腕時計好きにとって意外と見どころが多いジャンルであることが判ったのも大きな収穫でした。

今後も「腕時計が映りそうなシチュエーション」を模索して、一本でも多くの腕時計を映画やドラマから発掘し続けていきたいと思いますので、応援のほど宜しくお願い致します!

ではまた!

Actor's watch