映画やテレビなどで俳優が着用した時計にフォーカスする「Actor’s Watch」。
第72弾の今回は、「映画に登場したロレックス サブマリーナー」をお送りします。
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世界初の「回転ベゼルを搭載したダイバーズウォッチ」として1953年に誕生し、現代に至るまで、数ある高級スポーツウォッチの中でも常にトップクラスの人気を博している「スポーツロレックスの象徴」ともいえるサブマリーナー。今回は、そんなロレックス:サブマリーナーが登場する映画に注目してみました。
『007』シリーズに登場したサブマリーナー
『007 ゴールドフィンガー』のショーン・コネリー
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サブマリーナーが出てくる映画ときいて、真っ先に『007 ゴールドフィンガー』(1964)を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか?ショーン・コネリー演じるジェームズ・ボンドが本作で着用しているのはサブマリーナー(Ref.6538)。サブマリーナーとして初めてクロノメーター仕様となった第二世代モデルです。外見はリューズガードの無い、直径8mmの通称「デカリューズ」が最大の特徴。
ジェームズ・ボンドは白のタキシードにNATOストラップのサブマリーナーを合わせていますが、「タキシードにはドレスウォッチ」が当然だった1960年代においては、実に革新的な着けこなし。「完璧な男の究極の外しコーデ」と言ってよいでしょう。
☞#2 ジェームズ・ボンドのサブマリーナー【ショーン・コネリー編】を読む
『007/死ぬのは奴らだ』のロジャー・ムーア
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ロジャー・ムーアが演じた「3代目」ジェームズ・ボンドは『007/死ぬのは奴らだ』(1973)と『007/黄金銃を持つ男』(1974)の2作でサブマリーナー(Ref.5513)を着用。
『007/黄金銃を持つ男』に登場したサブマリーナーはごく普通の個体ですが、『007 死ぬのは奴らだ』に登場する個体は、強力な磁気を発して銃弾の軌道を曲げたり、ベゼルが高速回転してノコギリになる「魔改造サブマリーナー」。ロジャー・ムーア版007の「明るく楽しいスパイ活劇」に華を添えるスパイガジェットになっております。
☞#4 ジェームズ・ボンドの腕時計【ロジャー・ムーア編】を読む
『007 消されたライセンス』のティモシー・ダルトン
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現時点で「ジェームズ・ボンドが身に着けた最後のサブマリーナー」が登場するのは、ティモシー・ダルトン演じる「4代目」ジェームズ・ボンドの『007/消されたライセンス』(1989)。
ロジャー・ムーア時代とは打って変わってシリアスで重厚なアクション映画となった本作は、水中や海中でのアクションシーンも多く、ボンドの腕に着けられているサブマリーナー(Ref.5513)の堅牢性が今まで以上に強調されています。
☞#9 ジェームズ・ボンドの腕時計【ティモシー・ダルトン編】を読む
あの名優が着用したサブマリーナー
『タワーリング・インフェルノ』のスティーブ・マックイーン
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1960~70年代のハリウッドを代表する名優、スティーブ・マックイーンも映画の中でサブマリーナーを着用した俳優のひとり。138階建ての超高層ビルで発生した火災に挑む消防士の姿を描いたパニック映画の傑作『タワーリング・インフェルノ』(1974)。本作で消防隊のリーダーを演じた彼の腕には、サブマリーナー(Ref.5512)が着けられています。
『タワーリング・インフェルノ』は、当時のスター俳優であるスティーブ・マックイーンとポール・ニューマンのW主演作。エクスプローラーⅡ(Ref.1655)と、デイトナ(Ref.6263など)という、ヴィンテージロレックスの愛称にその名が使われる名優二人の共演作というのが面白いところです。
☞#3 スティーブ・マックィーンのモナコ&サブマリーナー を読む
『大統領の陰謀』のロバート・レッドフォード
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ニクソン大統領を「アメリカ大統領史上初」となる辞任に追い込んだ、1972年の「ウォーターゲート事件」。当時、事件を追い続けた二人の新聞記者の手記を映画化した『大統領の陰謀』(1973)では、実在の記者、ボブ・ウッドワードを演じたロバート・レッドフォードがサブマリーナー(Ref.1680)を着用しています。
この個体は「SUBMARINER」の表記が赤い、通称「赤サブ」と呼ばれる一本。ウッドワード記者本人が「赤サブ」を愛用していた為、劇中でウッドワード役を演じるロバート・レッドフォードの腕にも、同じく「赤サブ」が着用されることに。
☞#19 60年代後半「激動のアメリカ」とロレックス を読む
1990年代の映画に登場するサブマリーナー
『ユージュアル・サスペクツ』のガブリエル・バーン
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1990年代を代表するサスペンス映画の傑作『ユージュアル・サスペクツ』(1995)。回想シーンを効果的に使った叙述トリックに騙された方も多いのではないでしょうか。ちなみに私も見事に騙さたひとりです。(笑)
本作でサブマリーナー(Ref.16610)を着用しているのは、一癖も二癖もある犯罪者たちを率いて麻薬強奪の計画を立てる元刑事、キートン役を演じるガブリエル・バーン。知的ながら、ときに危険な香りを漂わせるワイルドなイケメンオヤジの雰囲気を、スーツとサブマリーナーのコーディネートが見事に演出しています。
『戦火の勇気』のデンゼル・ワシントン
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湾岸戦争の裏で巻き起こる軍の陰謀を描いた問題作『戦火の勇気』(1996)では、戦死した女性士官カレン・ウォールデン大尉(メグ・ライアン)の死の真相を調査するサーリング中佐役、デンゼル・ワシントンがサブマリーナー(Ref.16610)を着用しています。
軍への不信感を募らせ、苦悩しながらも職務を全うしようとする、実直で質実剛健な軍人らしい腕時計の選択と言えそうです。
『タイタニック』のビル・パクストン
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ジェームズ・キャメロン監督、レオナルド・ディカプリオ主演で大ヒットとなった『タイタニック』(1997)では、タイタニック号と共に海底に沈んだ宝石を探索するトレジャーハンター、ロック・ロベット役のビル・パクストンが金無垢のサブマリーナー(Ref.16808)を着用しています。
イエローゴールドのサブマリーナーは、沈没したタイタニックの研究を行なう「海洋学者」であり、同時に、史跡に眠る「宝飾品ハンター」でもあるロックの二面性を、一本の時計で表現しているようにも思えます。
2000年代以降の映画に登場するサブマリーナー
『24 -TWENTY FOUR-』のキーファー・サザーランド
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テロ対策機関「CTU」の捜査官、ジャック・バウアー(キーファー・サザーランド)のテロとの戦いを描く連続ドラマ『24 TWENTY-FOUR』。その記念すべき1stシーズンで、ジャック・バウアーが着用しているのはサブマリーナー(Ref.16610)。
しかし2ndシーズンでは、ジャック・バウアーの腕時計はサブマリーナーからG-SHOCK(Ref.DW6600)へと変更されてしまいました。1秒の遅れが命取りとなる過酷なテロとの戦いだけに、私も正確無比で頑丈なG-SHOCKが「正解」だと思います。
『ナショナル・トレジャー』のニコラス・ケイジ
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アカデミー賞映画からB級SFホラーまで何でもござれの怪優、ニコラス・ケイジ。彼が演じるトレジャーハンターがフリーメイソンの財宝を追って「アメリカの裏の歴史」の謎に迫っていくアドベンチャー大作映画『ナショナル・トレジャー』(2002)。
この映画で彼が身に着けているのは、サブマリーナー(Ref.16610)。地下神殿で水浸しになるなど、「サブマリーナーを着けてて良かった」というシーンもあります。ディズニー制作なので、お子様と一緒にどうぞ。
『ミッション インポッシブル/ゴースト・プロトコル』のジェレミー・レナー
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『アベンジャーズ』の「ホークアイ」役でもお馴染みのジェレミー・レナー。『ミッション インポッシブル』4作目となる本作にて、イーサン・ハント(トム・クルーズ)のチームで活躍する彼が身に着けているのは、サブマリーナー(Ref.116610LN)。
防水性を活かした”水”に関わるシーンは無いものの、ドバイにある超高層ビル「ブルジュ・ハリファ」での戦闘もある為、高級時計の中で堅牢性を意識するとサブマリーナーの選択になったのではないでしょうか。
『マネー・ショート 華麗なる大逆転』のスティーブ・カレル
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住宅購入者向けのローンが不良債権化して金融破綻を発生させた2007年末の「サブプライムローン危機」。住宅ローン債権バブルが大きく弾ける中、債権の空売りで巨額の利益を得た投資家たちの姿を描く経済サスペンス映画『マネー・ショート 華麗なる大逆転』(2015)。
この作品では、サブプライムの破綻を見越して投機を仕掛けた実在の投資家、スティーブ・アイズマンをモデルとした男、マーク・バウム役を演じたスティーブ・カレルがサブマリーナー(Ref.116610)を着用しています。実在のアイズマンがサブマリーナーを着けていたかは定かではありませんが、以前であればロレックス デイデイトが順当だった、映画に登場する投資家や資産家の腕元に、とうとうサブマリーナーが着けられる時代がやってまいりました。
『ウォー・ドッグス』のジョナ・ヒル
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『ハングオーバー!』シリーズのトッド・フィリップス監督が、武器商人の若者の成功と転落を実話をもとに描いたコメディドラマ『ウォー・ドッグス』。面白おかしく描かれた本作で、華麗な成り上がりを見せた武器商人役のジョナ・ヒルが着用しているのはサブマリーナー(Ref.16610)。
恰幅が良く、太めの腕周りに見事にはまっているところを見ると、このモデルが長く、万人受けする理由がお判りいただけるのではないでしょうか。
女優が着用したサブマリーナー
『欲望』のヴァネッサ・レッドグレイヴ
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ふと訪れた公園でキスをする男女を撮影したカメラマン。その写真を引き伸ばすと、銃を持った男と死体らしきものが写っていた。イタリア映画界の巨匠、ミケランジェロ・アントニオーニ監督がカンヌ映画祭で最高賞(パルム・ドール)を受賞した不条理感あふれるサスペンス・スリラー『欲望-BLOW UP-』(1967)。この映画では、カメラマンにフィルムを渡すよう迫る女を演じたヴァネッサ・レッドグレイヴが、ストラップに付け替えたサブマリーナー(Ref.5513)を着けています。
現代では女性がメンズウォッチを着けることもごく当たり前に行われることですが、1960年代に女性がメンズウォッチを着けることはほとんど無く、当時このスタイリングはファッション業界でも大きな話題となったそうです。
『ナイト&デイ』のキャメロン・ディアス
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『バニラスカイ』(2001)に続く、トム・クルーズとキャメロン・ディアスの共演作『ナイト&デイ』(2011)は、CIAの凄腕スパイと彼に恋した平凡な女性が世界的な陰謀に巻き込まれていくロマンティックアクション。
この映画でキャメロン・ディアスが着用しているのは、サブマリーナー(Ref.16610)。水着姿やドレス姿というフェミニンな装いでも常に着用しているため、いっそう存在感が際立って見えます。とはいえ違和感もなく、メンズウォッチが「女性が着けてもおかしくない腕時計」になったという時代の変化を感じさせますね。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
60~70年代には『007』シリーズや『タワーリング・インフェルノ』といったアクション映画ばかりに登場していたサブマリーナーですが、1990年代にはサスペンス映画、2000年以降になると、スーツ姿のビジネスマンを演じる俳優が着用することも多くなってきていることが、おわかりいただけたのではないかと思います。
堅牢性や防水性を活かした「プロフェッショナル」の腕時計だったサブマリーナーが、高いステイタスや高収入をイメージさせる「ラグジュアリー」なアイテムに変化してきた歴史が、スクリーンを通して伝わってきます。
今後もスマートウォッチやスマートフォンといったITツールの普及などにより、「腕時計」というモノがどのような存在に変化していくのか、それとも変わらないのか、時計屋としてその未来を見続けていきたい思います。
ではまた!